博物館や美術館といった場合、地域の社会教育・文化向上などを目的として設置されているが、同時に観光施設という観点でも重要である。特に近年は、人口が減少する中、観光施設という側面が強くなっていると思う。
そこで、これらの施設の都道府県別の開館数や入館者数を調べてみた。
なお、ここで博物館といっているが、法令上の博物館は美術館や動物園などを含んだ概念であり、以下では博物館と博物館類似施設の合計値を使用している(詳細は、「博物館」を参照のこと)。
開館数については1位の長野県が352館で最下位が高知県の38館、入館者数についても1位の東京都が35,505千人で最下位が鳥取県の1,067千人と、非常に都道府県で違いが大きいことが分かる。
そこで、開館数と1館当たりの入館者数について、偏差値をとりプロットしたものが右の図である。平均である50を境に、4つのパターンに各都道府県を分けることができる(分かりやすくパターンを抽出するため、偏差値を使用)。
以下のように、比較的、人口の多い都道府県が開館数・1館当たりの入館者数も高い傾向が見られる。
また、千葉県、大阪府、奈良県、和歌山県、高知県、長崎県、宮崎県、沖縄県などは、開館数が少なく、1館当たり入館者数が高い地域で、効率的な地域とも言えよう。逆に、北海道、栃木県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、岡山県などは開館数が多く、1館当たり入館者数が少ない地域となっており、開館数が過大となっているとも言える。
開館数 | |||
---|---|---|---|
大 | 小 | ||
1館当たり入館者数 | 大 | 埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、京都府、兵庫県、広島県、福岡県 | 千葉県、大阪府、奈良県、和歌山県、高知県、長崎県、宮崎県、沖縄県 |
小 | 北海道、栃木県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、岡山県 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、富山県、福井県、山梨県、三重県、滋賀県、鳥取県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、熊本県、大分県、鹿児島県 |
ただこれのみでは、実際、地域として最適な状態なのかは言うことはできない。例えば、沖縄県などは1館当たりの入館者数は全国1位だが、開館数は全国40位である。この意味で非常に効率的ともいえるが、逆に言うならば、開館数が過少であり、まだまだ供給という観点では開館数が少ないとも言えよう。
また、ここでは細かい数値は省略するが、1館当たりの入館者数について、歴史博物館などは少なく、動物園などが高い傾向がある。この点で、歴史博物館などが多い地域はどうしても1館当たりの入館者数は小さくなってしまう。
このように単純に以上を見て、どうこう言うことはできないが、全国的に、観光面を考えて博物館や美術館が建設されている中、このような側面も考えるべきではないかと思う。
どうしてもこのような施設を建設する際には、ミクロにその館のみのことを考えてしまう。しかし、博物館や美術館と言っても、需要と供給がある。どうしても文化施設となると、このような需要・供給という観点が小さくなっているように思う。
特に観光面を考えると、もう少しマクロ面も考えて、これらの施設について建設を考えてもいいと思う。
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