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地方創生で歪んでいく地方自治体の施策

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地方創生が進められていますが、これにより地方自治体の施策に歪みが生じているように感じています。

地方創生で翻弄された1年

 地方自治体にとって、昨年は、地方創生で翻弄された1年ではなかったかと思います。

 いきなり、地方創生という形で、先行型の交付金が国から来て、予算を使えと言われ、プレミアム商品券などをとりあえず予算を消費しました。
 そして次に、交付金措置をするということで、総合戦略を作れと言われ、本年度は、どこの自治体も、総合戦略を策定しました。
 まずは、先行型という交付金を餌に、昨年の秋までに総合戦略の策定を目指しました。そして次に、本年度までに策定をしなければならないということで、やっと最近、策定に漕ぎ着けているところも多いと思います。

 いずれにせよ、交付金を餌に、ドタバタした1年でなかったかと思います。

地方創生加速化交付金

 現在、地方自治体が狙っているのは、地方創生加速化交付金です。
 加速化交付金については、内閣府の資料では、次のようなものです。


加速化交付金

 そして、多くの自治体が、この交付金に対して、交付申請をすると思います。
 しかし、すべての自治体がこの交付金の恩恵にあずかれるわけではありません。

 「上乗せ交付金等での特徴的な事例も参考にしつつ、先駆性を高め、レベルアップの加速化を図る」という文言もあり、参考にするのが、内閣府が公表している事例です。

内閣府「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)先駆的事業分(タイプⅠ)の特徴的な取組事例及び不採択事業の要因分析について

 これを見ると、次のようなものが、交付金について、採択されやすいのではと思います。
 ポイントは、次の通りで、キーワードしては、「連携」です。

【先駆性の評価基準】
① 政策間連携
 関連する施策をパッケージ化し、利用者から見てワンストップ化を目指すものであること
② 地域間連携
 広域にわたる複数の地方公共団体が、適切に連携して同一事業を実施するものであること
③ 官民協働
 民間事業者やNPO等との官民協働により、事業の継続性、経済的な自立性を目指すものであること
④ 事業推進主体の形成
 有効な事業実施体制を伴うものであること
⑤ 政策5原則等
 ①~④のほか、地方が自主的かつ主体的に夢を持って前向きに取り組むものであること(将来性)、各地域の実態に合ったものであること(地域性)、ひとの移転、しごとの創出やまちづくりを直接的にするものであること(直接性)、新規性を有するものであることなど

 こうなると、地方自治体としては、無理に連携を行うなどして、事業を構成することになります。そして、地方自治体の事業は歪んでいくことになります。

歪む地方自治体の施策

 そもそも、連携すればいいというものではありません。また、実施体制が伴っていたり、新規性を有していれば、うまくいくわけでもありません。

 過去の地域おこしの事例などを考えても、連携は必要条件でなければ、十分条件でもありません。必要であれば、連携するし、そうでなければ、連携は起こらないというだけです。むしろ、新しくうまくいっているものは、最初は連携などがうまくいかず、個々で頑張り、後々、その成果を見て、参加者が増えているケースが多いように思います。

 逆に、連携や実施体制などを強調すれば、そのようなことができるところは少なく、地域外に連携先を求めなければならず、折角の予算が、他の地域に漏れることになります。特に、現在は実績等は乏しく、実施体制としては問題ありますが、このような機会を経て、ノウハウなどを身に着け、新たな地域の企業となりうるような企業のインキュベーションの機会も阻害してしまいます。

 上記の評価基準には、地域間連携も挙がっていますが、このようなことをやる自体、地域間競争を煽っているともいえ、アクセルとブレーキを同時にかけています。

 これではどうしようもないと思います。

原則を考える

 こうして、地方自治体の施策は歪んでいくことになります。

 ただ、そもそもを考えれば、地方創生加速化交付金の予算は、1,000億円です。
 この金額は、新国立競技場を1つ建設することもできない金額です。ある意味、新国立競技場を建設することで、かなりのお金が、東京都と新宿区にその建設費が落ちることになります。

 他方、今回の交付金で、都道府県レベルで考えれば、数十億円のお金が地方に行くに過ぎません。

 これでは、東京一極集中の是正は、できるわけがないと思います。

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