映画やアニメによる地域振興・観光対策
全国各地で、映画やアニメを使った地域振興や観光対策が行われている。
例えば、聖地巡礼やロケ地観光など、映画やアニメを題材に、観光客を呼び込もうとしている。
また、映画やアニメ、そしてその作者などに着目し、記念館や博物館などが建てられていることもある。例えば、サザエさんとその作者に着目した「長谷川町子美術館」などがいい例だろう。
ただふと思うのが、それらの映画やアニメの制作が終わったり、作者が亡くなった後、それらの記念館の集客はどうなるのだろうか?
通常で考えれば、新しいコンテンツが作られないので、どんどんとその作品も忘れられ、客数は減少していくと思われる。
そこで、それが実際にどうなのか、どのような経過を辿るのか、ちょっと調べてみた。
手塚治虫記念館
手塚治虫記念館は、漫画の神様・手塚治虫氏やその作品に関する記念館である。
手塚治虫氏自身は、平成元年に亡くなったが、彼が子供の頃、暮らしていた宝塚市が、その偉業をたたえるため、平成6年に記念館を建設した。
次のニュースによると、入場者数は、初年度は54万人だったが、次年度は約半分の28万人となり、その後、減少し続け、平成21年度には10万人を割り込んだという。そして、現状は10万人程度といった具合だ。
2014年11月7日 産経新聞「手塚治虫を知らない若者たち…「エヴァンゲリオン」は“崖っぷち”の記念館を救えるか」
よくよく考えると、今の若い人たちは、手塚治虫やその作品を知らなかったり、アニメを見たりしたことがない人も、多くいるだろう。
その点で、この減少は、当然ともいえる。
寅さん記念館
東京都葛飾区は、「寅さん記念館」というものがるある。
映画「男はつらいよ」で、主人公の寅さんが葛飾柴又の出身ということで、映画「男はつらいよ」が終了した1996年の翌年に、建設された。
映画が終わって20年近く。入場者数はどうなっているのだろうか。
毎年、どれだけの入場者数がいるのかは、公表されていないが、○万人達成ということで、節目節目で、記念イベントを行っている。
これを、表にしたのが、下のものである。
イベント | 達成年月日 | かかった日数 |
---|---|---|
開館 | 1997年11月16日 | 0日 |
30万人達成 | 1998年5月9日 | 174日 |
100万人達成 | 2000年2月19日 | 651日 |
150万人達成 | 2002年2月9日 | 721日 |
200万人達成 | 2004年3月13日 | 763日 |
250万人達成 | 2006年10月21日 | 952日 |
300万人達成 | 2009年1月17日 | 819日 |
350万人達成 | 2011年9月17日 | 973日 |
400万人達成 | 2014年11月8日 | 1148日 |
30万人達成イベントは別として、それ以外は、50万人刻みで、イベントが行われている。
そして、その達成にかかった日数は、イベントごとに長くなっていることが分かる。すなわち、年々、入場数が減少していることが読み取れる。
ただ、最初だけ、30万人達成イベントとなっているので、比較がしにくい面がある。
そこで、それぞれのイベント達成までの1日当たりの平均入場者数を計算したのが、下の図である。
寅さん記念館の1日当たり平均入場者数
例えば、一番左の棒グラフは、開館から30万人達成までの間の1日当たりの平均入場者数が、1724人であることを示している。
図から明らかなように、250万人達成から300万人達成の間には、若干、持ち直すが、年々、減少していることが読み取れる。
初年度から比べると、昨年はおおよそ4分の1まで落ち込んでいる。
2012年には、記念館をリニューアルし、記念館の向かいに、「山田洋次ミュージアム」もオープンさせたにも関わらずである。
また、この記念館では、「寅さん」とは無関係なイベントも行われており、それらの人の数も、入場者数に入っているとすると、「寅さん」目当てという人は、もっと少なくなるだろう。
まとめ
手塚治虫記念館と寅さん記念館について、見てみたわけだが、次のようなことが言えるだろう。
1つは、やはりコンテンツ制作が終わったものは、年々、入場者数は減少してしまうということである。
もう1つは、入場者数は、記念館などができた初年度が最も多く、2・3年目には半減し、10年以上たつと、4分の1、5分の1まで落ち込んでしまうということだ。
当然、このような状況であるので、大河ドラマなどでは、ドラマ期間中だけ、記念館を開館するといったことが行われてもいる。
いずれにせよ、今後も、映画やアニメなどに関する記念館などは作られるだろうが、作品が制作・提供されているうち、早いうちに、記念館などを建設するのがいいといえよう。
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