地域経済などを分析する際に重要な指標である特化係数について、わかりやすく解説しています。
概要
特化係数とは、地域のある産業が、どれだけ特化しているかを見る係数です。
例えば、i県のサービス業を考えるとします。i県におけるサービス業の従事者は全産業のうち70%とします。他方、全国におけるサービス業の従事者は60%だった場合はどうでしょうか。
i県のほうが、サービス業の従事者の割合が高いため、全国に比べ、i県はサービス業に特徴があると考えられます。
このように、ある産業に対し、i県の比率と全国の比率を比べて、高いのか低いのかを見るのが、特化係数です。
定義
式としては、次のように定義できます。
特化係数 = i県のA産業の比率 ÷ 全国のA産業の比率
1であれば全国と同様、1以上であれば、i県のA産業は特化していると考えられます。
言い方を変えれば、i県においては全国に比べ、A産業の割合が大きいので、A産業はi県では特徴的な産業だと言えます。
計算例
全国とi県について、A産業とB産業があり、次のようなGDPとなっているとします。
A産業 | B産業 | 計 | |
---|---|---|---|
i県 | 10兆円 | 10兆円 | 20兆円 |
全国 | 150兆円 | 350兆円 | 500兆円 |
このとき、比率を計算すると、i県においてはA産業は50%(=10兆円÷20兆円)、B産業は50%(=10兆円÷20兆円)の比率となり、全国ではA産業は30%(=150兆円÷500兆円)、B産業は70%の比率(=350兆円÷500兆円)となります。
これを表で表すと、次のような形になります。
A産業 | B産業 | 計 | |
---|---|---|---|
i県 | 50% | 50% | 100% |
全国 | 30% | 70% | 100% |
このとき、A産業とB産業の特化係数は、次のように計算されます。
A産業:50%÷30%=1.67
B産業:50%÷70%=0.71
この結果、A産業は1以上なので、i県ではA産業が全国に比べ特化していることが分かります。
留意点
特化係数は、比率に基づいて計算されるので、ある産業の比率が高ければ、他の産業の比率は低くなるので、その産業の特化係数は低くなります。
また、特化係数は、(あまり分解されることはありませんが)2つの意味を合成した指標でもあります。
A県のi産業の生産量を、全国のi産業生産量をとすると、次のように定義できます。
これを式変形すると、次のようになります。
ここで、は、i産業におけるA県の比率、は経済全体に占めるA県の比率の逆数です。
i産業においてA県の生産が大きくなれば(が大きくなれば)、特化係数は上昇するが、経済全体のA県の比率が高いほど(が小さいほど)、特化係数は小さくなることを意味しています。
言い換えれば、ある産業でA県のシェアは変わらなくても、A県全体の経済が大きくなれば、特化係数は小さくなります。
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