人口と所得の関係
一般的に、人口が多い地域ほど、賃金や所得が高いと言われている。
要因としては、人口が集積することで、新たな付加価値の高いサービスを提供できたり、より多くの人が集まっているので設けやすいという面があるからである。
東京などを考えれば、直観的に正しく、定説でもある。
しかし、県民経済計算を用いて、1人当たりの県民所得と人口の関係を見てみると、面白いことが分かる。
人口以外の要因
まず、県民経済計算の1人当たり県民所得と総人口のデータ(2012年)を用いて、相関係数を求めると、0.64である。
正の相関があり、人口が多い地域ほど、1人当たり県民所得が高いことが分かる。
しかしここで気になるのは、個々の都道府県である。
経済は人口のみで決まるのではなく、その地域の地理や産業構造など、多くの影響を受ける。そうなると、人口以外の要因で、多くの所得を得ているところとそうではないところが出てくるはずである。
そこで、1人当たり県民所得(被説明変数)と総人口(説明変数)を単純に回帰分析して、人口要因に基づく1人当たり県民所得(推計値)を算出した。この推計値と実際の数値の違い(残差)が、人口要因以外の要素といえよう。
数式的には、次のようになる。
残差 = 実際の数値 - 推計値
残差がプラスであれば、人口要因以外で、1人当たり県民所得が大きくなっている都道府県である。
都道府県別の残差
以上のような考えで、残差を推計したのが、次の表である。
北海道 | -510.5 | 東京都 | 730.4 | 滋賀県 | 500.9 | 香川県 | 286.5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
青森県 | -187.1 | 神奈川県 | -385.2 | 京都府 | 223.9 | 愛媛県 | -144.6 |
岩手県 | -57.8 | 新潟県 | 7.8 | 大阪府 | -354.4 | 高知県 | -302.8 |
宮城県 | -13.2 | 富山県 | 492.3 | 兵庫県 | -357.1 | 福岡県 | -154.3 |
秋田県 | -132.9 | 石川県 | 257.1 | 奈良県 | -220.0 | 佐賀県 | -144.0 |
山形県 | -100.8 | 福井県 | 242.8 | 和歌山県 | 162.1 | 長崎県 | -214.3 |
福島県 | -59.1 | 山梨県 | 281.3 | 鳥取県 | -290.0 | 熊本県 | -209.2 |
茨城県 | 382.8 | 長野県 | -50.7 | 島根県 | -187.6 | 大分県 | -105.1 |
栃木県 | 340.6 | 岐阜県 | 12.9 | 岡山県 | 43.0 | 宮崎県 | -308.1 |
群馬県 | 233.1 | 静岡県 | 368.5 | 広島県 | 258.6 | 鹿児島県 | -252.7 |
埼玉県 | -338.2 | 愛知県 | 273.3 | 山口県 | 319.0 | 沖縄県 | -579.4 |
千葉県 | -207.2 | 三重県 | 278.6 | 徳島県 | 170.8 |
この表を見ると、面白いが、人口の多い大阪府や神奈川県などでもマイナスとなっている点である。
また、地政学的に、地域性がくっきりと出て、面白い。
北海道・東北 : すべての道県でマイナスとなっている。
関東 : 東京都はプラスだが、その周辺の県はマイナスである。
ただ、北関東の県はプラスとなっている。
中部 : ほぼすべてがプラスとなっている。
ただ、新潟県・長野県(信越)と岐阜県は0前後となっている。
近畿 : 滋賀県・京都府・和歌山県はプラスだが、それ以外はマイナスである。
中国 : 山陽はプラスだが、山陰はマイナスである。
四国 : 香川県・徳島県はプラスだが、愛媛県・高知県はマイナスである。
九州・沖縄 : すべての県でマイナスとなっている。
まとめ
人口が減少する中にあって、GDPそのものではなく、1人当たりのGDPや所得をいかに高めるかが、今後、重要になっていくだろう。
この点で、1人当たり県民所得は人口に相関しており、人口が多い地域ほど、1人当たり県民所得は高い。ただ同時に、人口以外の要素もあり、地域経済においては、いかに人口以外の要素で、1人当たり県民所得を高めていくかが重要である。
コメント