訪日外国人観光客増加の誤解
今さら言うまでもないが、訪日外国人観光客が増加している。
政府は年間1000万人のインバウンドを目標に掲げていたが、昨年はそれを突破。更に、2014年の上半期は昨年以上の伸びとなっている。
これについて、いくつかの要因が挙げられるだろう。
- 観光ビザ規制の緩和
- 円安効果
- 政府などによる観光PR
- 日本人気 など
これらについては、全く間違っているとは思えないが、外国人観光客というものの特性を根本的に考えるならば、それは誤解である。
外国人観光客数の基本にあるのは、地理的要素とその外国の所得水準にある。
地理的要素とは、どこの国でも海外観光客の中心はその近隣国である。そして、その近隣国の所得水準の高さが、外国人観光客数に大きな影響を与えている。
飛行機などが発達したとはいえ、遠い国に旅行に行くのはたいへんだ。移動時間だけでもある程度必要となると、短期の観光はできないことも意味している。また当然、旅行をするにはお金がかかる。貧しければ、旅行などはできないし、海外旅行となると、一層その要素は強くなるからだ。
例えば、フランスなどは世界一観光客が多い国であるが、その観光客のメインは、イギリスやフランスである。アメリカはカナダやメキシコ、中国は日本・韓国・ロシアなどが外国人観光客の中心になっている。いずれも近隣国からの観光客が多いわけで、地理的要素は欠かせない。またこの近隣国を見ると、比較的、所得がある国ともいえよう。勿論、フランスなどのように、先進国が多いヨーロッパの中で、なぜフランスが選ばれるのかといえば、フランスに魅力があるからともいえようが、近隣諸国の所得の高さがある程度の前提になっていることも間違いない。
そして、訪日観光客の増加についても考えると、この文脈は当てはまる。
以前、「やっぱりアジア人頼み? 外国人観光客数」でも書いたが、訪日外国人のメインは、台湾・韓国・中国などである。いずれも近隣国であり、それらの国の所得水準の高まりが、訪日観光客の増加につながっているといえよう。
地に足の着いた観光対策を!
どこの地域でも、外国人観光客の増加を図ろうと、必死である。特に東京オリンピック開催決定などの影響もあり、多くの地域で、誘客が行われている。
決してそれは間違っているわけではないが、本筋を外してはいけないと思う。
地域では、欧米・欧州などの誘客を図ったり、中東の人たちを呼び込もうとハラル対応などを行ったりもしている。ただ、上記で述べたように、外国人観光客のメインは、地理的要素とその所得水準にある。このように考えると、台湾・中国・韓国などの東アジアの国々の観光客は今後も増減はあるとはいえ、一定のボリュームがあるだろうし、今後、増加するのは所得水準が上がっている東南アジアの国々からの観光客である。
地域によって、いろいろな対策はあるだろうが、メイン・ボリュームゾーンを考えるならば、東アジア・東南アジアを外しては、観光対策は考えられないのである。
また、地域ごとにしっかりとした観光対策を考える必要がある。
国ではビジットジャパンということで、訪日外国人を増やそうとしているが、はっきり言って、抽象的であてにならない。なぜならば、一口に外国人といっても、国によって、その嗜好や求めるものが異なるからだ。韓国人とタイ人は異なるし、同じ中国でも、大金持ちとそこそこの小金持ちでは、観光スタイルも異なる。しかし国では、○○人対策など、個々の国をターゲットにした誘客はできない。
あくまでも、具体的な施策・イベント・誘客などを行うのは、それぞれの地域がメインである。そして地域としては、どんな国の人であれ、多く来てほしいというのが本音だろうが、予算などの限界もあるため、ある程度のターゲットを考えていく必要がある。
この点で、地域こそ、しっかりとした観光対策を考える必要があると思う。
上記の話は、抽象的な議論であるが、どうも観光対策といった場合、個々の細かな話になったりして、上記のような根本が抜け落ちているような気もしている。
上記のような根本的な話を押さえ、地に足をつけながら、個別・具体的な観光対策を図っていく必要があると思う。
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