概要
国ではクールジャパン戦略が進められているが、地方自治体でもコンテンツ産業について、振興が行われている。中でも、いくつかの自治体で行われているのがマンガの振興策である。
そこで、改めて自治体のマンガ振興策を調べてみた。
振興策
様々な自治体でマンガの振興施策が行われているが、比較的、積極的に行っていると思われる岩手県・新潟市・鳥取県・高知県を取り上げる。
(この他、京都市や北九州市では、まんがミュージアムなどがあり、積極的にまんが振興を行っている。特に、京都市では、漫画家のインキュベーション施設である京都版トキワ荘事業なども実施している。ただ、より地方の取組みとして、この4つの自治体を取り上げる)
ただ特に岩手県に特徴的なのは、全国初となる「コミックいわて」というコミック本を発行していることだろう(これを真似たのか鳥取県でも本年12月より発売開始)。更に、文化芸術振興指針など県のプランを紹介したマンガなども作成しているところが特徴的である。
また、他の自治体が担当部署として文化振興を担当する部局なのに対して、岩手県では「政策地域部」という特別なプロジェクトを実施する部署が担当している。
新潟市では、昨年3月に「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」というプランを打ち出し、マンガの振興施策を行っている。他の自治体と同様に「にいがたマンガ大賞」というコンテストを行ったり、「がたふぇす」というアニメ・漫画に関するイベントを実施している(ただし、マンガ大賞については1990年代後半から実施しており、歴史は古い)。
また、マンガ・アニメ関連の店舗を運営する事業について、「新潟市マンガ・アニメ出店事業」といった補助金まで出している。
更に、「新潟市マンガ・アニメ情報館」「新潟市マンガの家」といった博物館まで作り、展示やイベントなどを行っている。
鳥取県では、「国際マンガコンテスト」といったコンテストをやったり、マンガ教室開催などに対して補助する「「まんが王国とっとり」国家戦略プロジェクト推進補助金」といった制度を実施している。
ただ、鳥取県の大きな特徴は様々なイベントを開催していることだろう。数カ月にわたり「国際まんが博」「まんが博・乙」といった博覧会を開催し、様々なイベントを行っている(なお、米子市では「とっとりアニカルまつり」といったアニメ・イベントも行われている)。
高知県は、他と比べれば、規模は小さいが、いくつかの施策を行っている。例えば、子どもへの「まんが教室」の開催や「まんが甲子園」といったコンテストなどを行っている(なお、昨年までマンガ以外も含めた「高知コンテンツコンテスト」を実施)。ただ、この「まんが甲子園」は今年で第22回目を迎え、かなり古くからマンガの振興を図っている。
また、鳥取県と「まんが王国友好通商条約締結式」と締結し、鳥取県と共同で、秋葉原でのイベントなどを実施している。
以上の各県市の取組みをまとめると、次のように整理できるだろう。
岩手県 | 新潟市 | 鳥取県 | 高知県 | |
---|---|---|---|---|
担当部署 | 政策地域部政策推進室 | 文化観光・スポーツ部文化政策課 | 文化観光局まんが王国官房 | 文化生活部まんが・コンテンツ課 |
コンテスト | 「いわてマンガ大賞」 | 「にいがたマンガ大賞」 | 「国際マンガコンテスト」 | 「まんが甲子園」 |
イベント | 「漫画家が岩手を応援するツアー」 | 「がたふぇす」 など | 「まんが博・乙」「高知×鳥取 まんが王国会議」(高知県と共同事業) など | 「まんが教室」「高知×鳥取 まんが王国会議」(鳥取県と共同事業) |
補助金 | 「新潟市マンガ・アニメ出店事業」 | 「「まんが王国とっとり」国家戦略プロジェクト推進補助金」 | ||
施設 | 「新潟市マンガ・アニメ情報館」「新潟市マンガの家」 | (青山剛昌ふるさと館) | (横山隆一記念まんが館)(タマリン館)(香美市立やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアム) | |
出版 | 「コミックいわて」 | 「ストーリー漫画とっとり」「国際マンガコンテスト作品集」 |
印象
以上のように、様々な施策を行っているが、うまくいっていないところが多いのではないかと思っている。
どうも見ていて、その目的が分からないところが多い。マンガの振興策を考えたとき、目的としては、文化教育面、産業面、観光面など、多岐に渡る。しかし、どの点を進めていきたいか分かりにくいし、もしかしたら、それぞれの自治体でも曖昧になっているのかもしれない。
ただ、マンガを通じて地域をPRし、観光客の増加などを狙っているところが多いようにも思える。ただ、マンガという事業の特性上、あたりはずれが多いが、観光客が増加するためには、まずはマンガがヒットしなければ始まらない。2・3年、マンガの振興を図ったところで、当然ながら、結果は出ないだろう。
私個人はあまりマンガを振興しても仕方ないと思っているが、目的を明確にして、地道に行っていくことが重要なのだろう。
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