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行政評価は難しい

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 多くの自治体では、自己の事業がどれだけ効果があったのかなどを点検するため、行政評価を行っている。
 内部だけで行ったものを公表したり、ときには外部の委員などが評価を行うこともある。事業仕分けなども、行政評価の一種である。

 しかし、多くで行政評価が行われているが、なかなかその効果が見えていない。一時期、バランススコアカードという手法も流行ったが、大きな効果を得ているところは少ないだろう。
 理由としては、自己評価なので評価が甘くなる、評価と予算が結びついていない、形式化しているといった問題がある。
 ただ、最も大きな理由としては、行政評価自体が難しいという面にあると思う。

 1つは、評価の項目として、必要性や効率性などというものが用いられ、あまり効果というものを見ないことがあるからだ。効率性などはある種、効果を見ているともいえるが、明示的ではない。

 2つは、効果についての考え方がしっかりと決められていない場合がある。通常、効果といった場合、アウトプットとアウトカムがある。アウトプットとはどれだけ行ったかを見るもので、アウトカムはどれだけ効果があったかを見るものだ。例えば、図書館の貸出業務で考えると、アウトプットはどれだけ本を貸し出したかということであり、アウトカムはどれだけ住民の知識が向上したかということになるだろう。そこで、効果をアウトプットで見るのか、アウトカムで見るのかで、効果そのものが考え方が変わってきてしまう。

 3つは、アウトカムについてである。効果ということを考えると、アウトカムで考えるのが望ましい。上記の図書館の業務で考えれば、本を借りる人が多くても、実際に住民の知的レベルが向上していなければ意味がない。また、本を借りなくて図書館で本を読んでいる場合もあるため、アウトプットの貸出数だけを見ていても仕方がない部分もある。
 そこでアウトカムで考えるべきなのだが、その評価測定が難しい。図書館の例でいえば、住民の知識レベルを評価する術がないのである。
 また、統計指標などをアウトカムで使う場合もあるが、その因果関係が不明確な場合も多い。例えば、産業施策などに対しては、アウトカムでGDPなどを目標とする場合があるが、政策の結果なのか、単なる景気によるものなのか、判断はつきにくい。

 4つは、行政の業務においては、評価が多面的になりやすいため、1つの基準では評価しきれない面がある。例えば、上記の図書館の例で、本の貸出数を目標としたとしよう。貸出数が多いということは、施設がしっかりと利用されており、住民の知識向上に寄与しているといえよう。しかし、産業的な観点から言えば、本を買う人が減ることにもつながるので、決して望ましいことではない。極端なことをいえば、産業的な観点では、図書館などは廃止し、地域の本屋さんで本を買ってもらったほうがいいのである。

 5つは、上記のアウトカムの問題とも関連するのだが、長期的な効果については判断しにくいということだ。決して短期的には効果がなく不必要だが、長期的には行う必要があるものもある。例えば、技術振興などは、短期的にはすぐに効果は発現しないし、長期的にはどうなるか分からない。しかし、効果が分からないからといって、止めてしまうのは問題だろう。

 以上のように、行政評価というのは非常に難しいと思う。

 よく行政評価はお手盛りだから甘いなどと言われたりもするが、アウトプットとアウトカムの錯誤など行政評価自体について様々な見方があったり、行政評価というもの自体が難しいものだということを考える必要がある。

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