選挙での勝利
先日の衆議院選挙で、与党が勝利した。
ただ解散に当たって、2017年4月までの消費税増税の延期が言われたわけだが、あくまでも「空手形」に過ぎない。
なぜなら、また解散をして民意を問えば、おしまいだからである。今回は、わざわざ解散する必要がなかったが、今後、延期を言うことは十分な大義名分となる。そして、いきなり延期をいうわけにいかず、国会での手続きを考えれば、半年以上前に、解散が必要だ。
このとき、前年度の2016年7月には参議院議員の任期も切れる。そうなると、衆参同日選挙というシナリオも見えてくるだろう。特に、衆議院議員としては任期は2年を満たず短いともいえるが、同日選挙ならば、選挙費用も軽減できるという点で、説明もつきやすい。
この点で、2017年4月までの消費税増税の延期という話は、あまり意味のない公約である。
ただ、安倍政権は経済回復を目指すであろうし、経済回復とこの延期を巡り、正直、ある種の破綻や経済危機が気になりつつある。
アベノミクスの構成
アベノミクスは、一般に3本の矢で構成されるとされる。1つは金融政策、2つは財政政策、3つは規制緩和である。
ただ知られているように、3つ目の矢である規制緩和はほとんど進んでいない。
そして、今後進められたとしても、その効果は、上記の2016年には間に合わない。
となると、1つ・2つの矢である金融政策や財政政策に頼らざるを得なくなる。そして、これまで以上の金融緩和や財政支出拡大が行われることになる。
これらの政策は、短期的にはいいのだが、長期的には経済構造改革(第3の矢)と一緒に進めることで、相乗効果を発揮できるのだが、現状はそうなっていない。
そうすると、短期的には経済的にプラスであるが、将来的には負の遺産を多く残す。金融緩和を続ければ、過剰流動性ということで、インフレを招く可能性があり、財政支出の拡大は当然ながら、将来の借金を残す。
貨幣数量説
後者について説明不要だが、前者の金融緩和について言えば、経済学には簡単な数式がある。
PY=MV
いわゆる、貨幣数量説というもので、Pは物価、Yは実質所得、Mは貨幣量、Vは貨幣の流通速度と言われているものだ。
デフレ経済下であっても、所得Yが一定であれば、貨幣量Mを増やせば、物価Pは大きくなるので、インフレ経済となる。現在の第1の矢は、この方程式を念頭に置いていることは間違いない。
ただ問題は、貨幣の流通速度Vである。
現在、日銀の金融緩和で貨幣量Mが大きく増加しているが、ハイパーインフレになっていないのは、貨幣の流通速度Mが低下しているからだ。そして、貨幣の流通速度Vは、政策・制度的な要因があるとともに、民間企業や金融機関の行動と結びついており、予想しがたい。
ただ政策的には貨幣の流通速度Vをコントロールしていないので、民間企業や金融機関の行動でいきなり、Vの値が大きくなり、所得Yが一定であると、物価Pが大きく跳ね上がる可能性が出てくる。
本来的には、金融制度改革(第3の矢)も含めて、貨幣の流通速度Vと貨幣量Vについて、二人三脚で対応しなければならないが、そうなっていない。
そうすると、将来的には、上記の話を含めて言えば、日本経済は財政破綻か大きなインフレを招く結果となるだろう。
まとめ
私自身は、アベノミクスに否定的だが、すべてを否定しているわけではない。
ただ、今回の選挙結果を考え、アベノミクスが推進され、1本目・2本目の矢頼みでは、非常に危険だと思う。そして、これは1・2年の間は問題ないが、中長期的にはマイナスだ。
このとき想起するのが、戦前の近衛文麿だ。皇室に近く血筋もいいということで、戦前、近衛文麿という政治家は人気があった。しかし、当時の課題を解決できずに(もしくは悪化させる結果になり)退陣し、日本は戦争に突入した。
さすがに戦争ということはないだろうが、安倍首相が、現在の近衛文麿にならないことを願うのみである。
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