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会計年度独立の原則の例外

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 地方自治法において、会計年度独立の原則というものがあります。ただ、この原則を貫くと行政運営上、支障を来すことになるので、例外的な措置が設けられています。
 この会計年度独立の原則の例外について、解説しています。

概要

 地方公共団体の予算について、会計年度独立の原則が適用されており、各年度ごとの支出(歳出)はその年の収入(歳入)で賄わなければならないという形になっています。

「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。」(地方自治法208条2項)

 (なお、会計年度独立の原則などの他の原則については、「予算に関する原則」)

 しかし、この原則を厳格に運用すると、実務上、支障をきたす可能性があります。
 例えば、ある公共工事を行っているとき、その年で、工事が終わりきらない可能性が出てきたとします。この原則に従えば、いったん工事をストップさせる必要があるが、それでも工事の進捗に支障が出てきます。

 このように、この原則のままでは問題が生じる可能性があるため、地方自治法上、次のようなものが会計年度独立の原則の例外として、認められています。

 なお、注意しなければならないのは、国庫補助や国の交付金が入っている場合、地方公共団体だけの意思決定では、このような例外は適用できません。国の予算においても会計年度独立の原則が適用されているため、国の予算としても、例外的な処理しなければならない部分が生じるので、実務的には財務省の合意が必要となります。

継続費

 継続費とは、工事など複数年度要する事業において、計画的に事業を実施するため、経費の総額や年割額について、あらかじめ議決を受けておく方法です(ただし、形式的には各年度において、歳出額の予算計上が必要)。

 なお、各年度において年度内に支出が終わらなかったものについては、継続年度の終わりまで繰り越しが認められています(「継続費の逓次繰越し」)。

普通地方公共団体の経費をもつて支弁する事件でその履行に数年度を要するものについては、予算の定めるところにより、その経費の総額及び年割額を定め、数年度にわたつて支出することができる。」(地方自治法212条第1項)

繰越明許費

 繰越明許費とは、その年度内に支出が終わらない場合に、翌年度に繰り越して経費を使用できるというものです。 
 継続費が計画的に複数年度にわたり支出を行うものに対して、繰越明許費は年度内に支出する予定だったが、何らかの理由により繰り越されるものです。原則的には、1回だけしか認められていないが、本当に例外的に事故繰越しという形で2回まで繰越しが可能です。

 会計年度独立の原則の例外で、制度としては便利だが、実務的には、繰越理由が必要、(専決処分を含め)議会議決が必要、そして額が固定化するなど、実務的には面倒な面もあります。

「歳出予算の経費のうちその性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについては、予算の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用することができる。」(地方自治法213条第1項)

事故繰越し

 事故繰越しとは、何か異常な事態が生じた場合に、次年度に繰越しを認めるというものです。

 通常は次年度に予算を繰越す必要があった場合には、繰越明許費などが使われますが、議会の議決が必要となる。ただ、例えば、災害などが発生した場合、そのような余裕がないことがあります。そこで、事故繰越しという制度が設けられています。

 制度としては、存在はするが、本当に異常事態なので、あまり利用されることはありません。

「繰越明許費の金額を除くほか、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。ただし、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をし、避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかつたもの(当該支出負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基づきこれに関連して支出を要する経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。」(地方自治法214条3項)

その他

 実務的には、実質的には複数年度の事業であっても、単年度ごとに発注したり、契約等を結び直したりし、事業が行われることもあります。
 毎年、予算を計上し、年度当初に支出負担行為を行えば、実質的に、複数年度の事業を行うことができる。

 このような方法が採られる理由としては、事務処理上、慣例化している場合もありますが、単年度ごとに処理することで、受託者や契約内容などの変更の余地が生まれるからです。

参考

松本英昭『要説地方自治法―新地方自治制度の全容

コメント

  1. 野田 勝康 より:

    私の議会で、繰越明許費について議論となっている。安易な繰越明許は避けなければならない。確かに、災害や国の経済対策予算が2月頃に可決し、地方に降りて来た場合、入札不調等、繰越理由が明らかなものは仕方ないと言える。しかし、3月定例会で繰越され、その時は「限度額」だけが示され、6月議会では「報告」とされるが、3月の予算委員会で繰越されたが、6月では、完成時期に大きな違いが生じる時(例えば、当初は6月完成➡翌年3月末に完成等)は、何らなの正当な理由付が必要ではないか。また、繰越された完成時期迄に、中間払いが行われた時などは、当初の限度額と6月「報告」では、繰越額に違いがある。説明資料には、中間払により、3月繰越額と6月報告で違いがある場合があるが、もう少し、詳しい、6月報告書が必要ではないか。

    結論、安易な繰越は、執行部サイドは楽であるだろうが、「単年度主義」「会計年度独立の原則」に基づき、予算とその執行は、計画的に行われなければならない。
    安易な繰越は止め、継続費で対応する等、執行に対する計画をしっかり立てる必要を感じる。

    予算委員会で、どの様な改善案を執行部に提言するか?議会として早急な結論を出したいと思っている。