地方自治法において、会計年度独立の原則というものがあります。ただ、この原則を貫くと行政運営上、支障を来すことになるので、例外的な措置が設けられています。
この会計年度独立の原則の例外について、解説しています。
概要
地方公共団体の予算について、会計年度独立の原則が適用されており、各年度ごとの支出(歳出)はその年の収入(歳入)で賄わなければならないという形になっています。
(なお、会計年度独立の原則などの他の原則については、「予算に関する原則」)
しかし、この原則を厳格に運用すると、実務上、支障をきたす可能性があります。
例えば、ある公共工事を行っているとき、その年で、工事が終わりきらない可能性が出てきたとします。この原則に従えば、いったん工事をストップさせる必要があるが、それでも工事の進捗に支障が出てきます。
このように、この原則のままでは問題が生じる可能性があるため、地方自治法上、次のようなものが会計年度独立の原則の例外として、認められています。
なお、注意しなければならないのは、国庫補助や国の交付金が入っている場合、地方公共団体だけの意思決定では、このような例外は適用できません。国の予算においても会計年度独立の原則が適用されているため、国の予算としても、例外的な処理しなければならない部分が生じるので、実務的には財務省の合意が必要となります。
継続費
継続費とは、工事など複数年度要する事業において、計画的に事業を実施するため、経費の総額や年割額について、あらかじめ議決を受けておく方法です(ただし、形式的には各年度において、歳出額の予算計上が必要)。
なお、各年度において年度内に支出が終わらなかったものについては、継続年度の終わりまで繰り越しが認められています(「継続費の逓次繰越し」)。
繰越明許費
繰越明許費とは、その年度内に支出が終わらない場合に、翌年度に繰り越して経費を使用できるというものです。
継続費が計画的に複数年度にわたり支出を行うものに対して、繰越明許費は年度内に支出する予定だったが、何らかの理由により繰り越されるものです。原則的には、1回だけしか認められていないが、本当に例外的に事故繰越しという形で2回まで繰越しが可能です。
会計年度独立の原則の例外で、制度としては便利だが、実務的には、繰越理由が必要、(専決処分を含め)議会議決が必要、そして額が固定化するなど、実務的には面倒な面もあります。
事故繰越し
事故繰越しとは、何か異常な事態が生じた場合に、次年度に繰越しを認めるというものです。
通常は次年度に予算を繰越す必要があった場合には、繰越明許費などが使われますが、議会の議決が必要となる。ただ、例えば、災害などが発生した場合、そのような余裕がないことがあります。そこで、事故繰越しという制度が設けられています。
制度としては、存在はするが、本当に異常事態なので、あまり利用されることはありません。
その他
実務的には、実質的には複数年度の事業であっても、単年度ごとに発注したり、契約等を結び直したりし、事業が行われることもあります。
毎年、予算を計上し、年度当初に支出負担行為を行えば、実質的に、複数年度の事業を行うことができる。
このような方法が採られる理由としては、事務処理上、慣例化している場合もありますが、単年度ごとに処理することで、受託者や契約内容などの変更の余地が生まれるからです。
参考
松本英昭『要説地方自治法―新地方自治制度の全容』
コメント
私の議会で、繰越明許費について議論となっている。安易な繰越明許は避けなければならない。確かに、災害や国の経済対策予算が2月頃に可決し、地方に降りて来た場合、入札不調等、繰越理由が明らかなものは仕方ないと言える。しかし、3月定例会で繰越され、その時は「限度額」だけが示され、6月議会では「報告」とされるが、3月の予算委員会で繰越されたが、6月では、完成時期に大きな違いが生じる時(例えば、当初は6月完成➡翌年3月末に完成等)は、何らなの正当な理由付が必要ではないか。また、繰越された完成時期迄に、中間払いが行われた時などは、当初の限度額と6月「報告」では、繰越額に違いがある。説明資料には、中間払により、3月繰越額と6月報告で違いがある場合があるが、もう少し、詳しい、6月報告書が必要ではないか。
結論、安易な繰越は、執行部サイドは楽であるだろうが、「単年度主義」「会計年度独立の原則」に基づき、予算とその執行は、計画的に行われなければならない。
安易な繰越は止め、継続費で対応する等、執行に対する計画をしっかり立てる必要を感じる。
予算委員会で、どの様な改善案を執行部に提言するか?議会として早急な結論を出したいと思っている。