都道府県別のスポーツ観覧料
統計局の家計調査では、様々な品目について、都道府県(厳密には県庁所在市)ごとの支出額が分かる。有名なところでは、陥落したが宇都宮市は餃子消費量が日本一だというのは、このデータを元にしている。
そしてこの調査の中に、「スポーツ観覧料」というものがある。1世帯当たり、1年間にどれだけ野球・サッカーなどのスポーツ観覧に支払ったかというものである。
平成25年の上位5位は、次のとおりである。
1位 … 大分県 1,450円
2位 … 埼玉県 1,226円
3位 … 宮城県 1,153円
4位 … 広島県 1,111円
5位 … 鹿児島県 1,062円
5位の鹿児島県を除けば、いずれもプロ野球球団のホームグラウンドがあったり、Jリーグチームがあるところが、ランキングしている。
直観的には、このようなプロチームがあれば、地元のファンが生まれ、スポーツの観覧料支出が増えるのは、当然といえよう。ただこれが本当なのか、簡単に統計学的に調べてみた。
プロ野球は×、Jリーグは〇
調べ方といえば、0・1のダミー変数を用いて、回帰分析を行った。
具体的には、次のような方程式において、a、b、cを推計する。
支出額 = a ×(プロ野球球団:あり=1、なし=0)+ b × (Jリーグチーム:あり=1、なし=0) + c
この推計結果は、次のとおりである(決定係数は0.41)。
係数 | t値 | |
---|---|---|
プロ野球球団 | 72.7 | 0.70 |
Jリーグ | 418.1 | 4.33 |
定数 | 330.1 | 7.17 |
これは、プロ野球球団があれば72.7円、Jリーグがあれば418.1円、スポーツ観覧料が増えることを意味する。このことから、スポーツ観覧料ということでは、Jリーグのほうが効果が大きい。
また、t値とは、絶対値で値が大きいほどよく、値が小さいと係数が実際は0である可能性が生じる。そして統計学的には、ざっくり言えば2以上程度あればよく、逆に2よりも小されければ、その係数の値は意味がないとされる。
表より、Jリーグでは4.33で2よりも大きく意味がある値となっているが、プロ野球では0.70しかないので、プロ野球の有無はスポーツ観覧料とは関係がないという結果になっている(なお、統計学的に厳密に言えば、Jリーグは1%、5%でも有意)。
このことから、スポーツ観覧料の支出額に関して、Jリーグチームがあることはプラスに働くが、プロ野球球団のホームグラウンドがあることは、その都道府県にとって関係がないといえる。
ただJリーグがあればいいというわけではない
ただJリーグといっても、J1とJ2がある。J2の場合には、観客数が少なく、経営的にも厳しいところも多いので、J1とJ2を同列に扱うことは難しい面もある。
そこで、上記の方程式において、JリーグをJ1とJ2に分割して、計算を行ってみた(決定係数は0.42)。
係数 | t値 | |
---|---|---|
プロ野球球団 | 107.9 | 0.98 |
J1 | 390.9 | 3.90 |
J2 | -80.6 | -1.00 |
定数 | 366.0 | 6.27 |
プロ野球球団とJ1を見た場合には、上記の結果と同様に、係数はJ1のほうが大きく、プロ野球ではt値が小さいので、意味のない数値となっている。
ここで注目すべきは、J2である。J2においては、係数はマイナスとなっており、t値も絶対値では1なので、係数は0の可能性が生じる。
J2においては、ホームチームがその都道府県にあろうがなかろうがスポーツ観覧には影響がない。仮に、影響があったとしても(t値が大きくても)、係数はマイナスであり、負の効果となってしまう。
まとめ
以上から、スポーツといえば、野球・サッカーだけではないが、プロ野球球団は、あまりその地域のスポーツ観覧料支出額への影響は見られず、Jリーグのホームチームがあることが重要となることが分かる。
しかも、Jリーグチームであっても、J2では駄目で、J1であると、スポーツ観覧料支出額へ影響をもたらすことができることが見て取れる。
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