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本社機能の地方移転促進、地方が問われている!

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本社機能の地方移転促進

 政府では、3大都圏にある本社の有する企業が、それ以外の地域に本社機能を移転すれば、税制優遇するという案を検討している。

2014年12月20日 毎日新聞「法人税優遇:本社機能の地方移転促進 YKKが適用1号へ」

 まだどうなるか分からないので、正式案が出てからと思ったが、いくつかのニュースを散見したので、記事を書くことにした。

 本社機能の移転といったとき、その要件が重要な点の1つであり、その点は不明だが、法人税の減税が検討されているようだ。


なくなってしまった地方分散政策

 かつては、地方への分散政策があった。

 例えば、工場制限法では工場を東京に新設してはいけないなどのルールがあったり、工場再配置促進法では地方分散を促進するため、税制上の優遇が定められていた。

 しかし2000年代から、このような政策は廃止され、現在に至っている。

 2000年代には地方対策が弱くなり、規制という手段も政策として取りづらくなった。また、工場立地にあたっても、都会と地方という構図から、日本と海外という構図に変わる中で、致し方ない面もあったと思う。

 このような地方分散政策がいいか悪いか、効果があるか否かは是非があると思うが、地方の活性化という点では、良い試みだと思う。


ポイント

 大きな点としては、地方分散ということになるが、若干細かく考えると、いくつかポイントがある。

 1つは、減税ということだ。
 減税となれば、黒字の企業でしかメリットを受けることができない。逆にいえば、赤字企業などはこの制度のメリットを受けることができないので、この制度を利用しようという企業は、基本的に財務的には優良企業ということになる。

 どこの自治体でも企業誘致を進めているが、一つの問題は、誘致したが倒産してしまったなどという話だ。
 自治体のチェック体制という点で問題ともいえようが、減税という形で、優良企業に絞り込めば、このようなリスクは少なくなる。


 2つは、多くの自治体では、企業誘致を実施しており、その取り組みを促進させることができるだろう。
 企業誘致に係る補助金に加え、減税措置もあるので、金銭的なメリットが大きくなり、この点で、一層、自治体で企業誘致を促進しようという機運も高まるだろう。
 ただ、(政府では考えていないだろうが)細かく言えば、補助金は利益として課税されるので、自治体の企業誘致に関する補助金は、国に吸い上げられることになる。地方への移転促進を図っているので、このような点も、考えてほしいものだ。


 3つは、どこでも、現在は東京などに本社があるが、地方をルーツ・由来としている企業も多い。
 そのような企業を有する地域としては、本社機能が自分の地域に来てほしい・戻ってきてほしいと考えているものである。

 特に、本社機能が移転してしまった地域では、議会圧力を含め、何とか本社機能を自分の地域に戻すような対策を取るべきだという声がある。

 このような点で、上記と関連するが、企業誘致に一層、拍車がかかると思われる。


本当に問われるのは自治体

 上記で書いたように、(細かな内容は分からないが)基本的にはいい方向だと思う。

 ただむしろ、この制度・波に乗れるかどうかという点で、むしろ自治体が問われているのではと思う。

 単純に考えれば、国による地方分散策であり、企業誘致などの一環ともいえよう。
 しかし、本社機能の移転となると、これまでの企業誘致とは大きく異なる面も出てくる。

 例えば、企業誘致・工場誘致では、働くのは基本的には地元の人である。しかし、本社機能の移転では、人が地方に来るということである。

 そうなると、企業誘致を行おうとする際には、従来のメリットとは大きく異なる。
 従来の企業誘致であれば、インフラや立地条件の優位性などがメリットの中心となったが、本社機能の移転のように人が来るとなると、暮らしやすさや子育て支援など、これまでとは異なった面が重要となる。

 特に、行政組織を考えれば、縦割りになっており、商工、厚生、建設などの政策は分岐している。
 これまでならば、ある程度、それで対応できたのだろうが、本社機能の移転では、そうはいかない。

 縦割りはある程度、仕方がないと思っているが、この本社機能の移転については、縦割り打破、商工以外の施策の充実など、総合的な要素が重要となってくると思う。

 この総合力を地方がいかに発揮できるかが、大きなポイントであり、 この政策の是非はともかく、地方が問われている面も大きいと思う。

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