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東京と地方の経済における相関を考える

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概要

 最近よくアベノミクスの効果は、東京などだけで地方に及んでいないなどといった話を聞く。また、経済構造が変わり、都会が良くなれば、次第にその効果が地方に波及していくというトリクルダウンの効果がなくなったなどといった意見もある。
 これらについては是非があるだろうが、このような話を踏まえ、東京と地方の経済における相関を考えてみたいと思う。


相関係数

 そこで、10年ごとに、東京都と他の都道府県の名目GDPの成長率について、相関係数をとってみた。

 当然、相関係数ではあくまでも相関であり、東京から他の道府県への影響といった因果関係は分からないし、単に数値的に相関しているだけで、実質的な経済は相関していない可能性がある。
 また、ある年の影響がその年に他の道府県に現れるわけではなく、その後に現れる可能性もあるが、この分析では分からないなどといった話もある。

 ただその点で、回帰分析などを行ったほうがいいともいえるが、複雑になり恣意性が加わることにもなる。

 そこで、単純に相関係数を計算したのが下の図である。10年ごとに東京と他の都道府県の名目GDPについて、相関係数をとり平均したものの推移となっている。


東京と他の都道府県との相関係数の平均

東京と他の都道府県との相関係数の平均

 これを見ると、およそ1970年代は東京と他の都道府県の相関が非常に強くなったが、1980年代・1990年代には相関は弱くなる(無相関に近くなる)。そして、2000年代には再び、相関が強くなっていることが分かる。


トリクルダウンの効果

 このことから推定できるのは、トリクルダウンの効果がなくなってきているというのは、注意が必要ということだ。

 1980・90年代のほうが東京と他の都道府県のGDPの関係は薄く、むしろ2000年代のほうが高いともいえ、トリクルダウンの効果は戻ってきているともいえる。
 ただ、1970年代に比べると、東京と他の都道府県の相関は小さく、その意味では、トリクルダウンの効果はかつてよりも小さいといえる。

 ここから思うのは、トリクルダウン効果というものはあるのだろうが、1970年代の特別な一時期のものであり、そこに過剰な幻想を抱いてはいけないということだろう。


地方分散の効果

 また、上記はあくまでも数字上の相関に過ぎず、実際に経済が相関しているとは限らない。例えば、全く経済的につながっていなくても、同じような数字の動きをすれば、相関係数は高くなる。

 この点で、1970年代の相関係数が高いということは注目に値する。
 1970年代といえば、「列島改造論」など地方分散が叫ばれた時代である。1960年代には工場制限法なども施行され、工場などの地方移転も進んだ時期でもあった。

 つまり、東京と他の都道府県のつながりが深くなったというよりは、東京が経済成長する中、国による地方分散政策で他の道府県でも経済成長が高まり、数字上、相関係数が高くなった可能性がある。


まとめ

 以上のように考えると、アベノミクスの地方への波及、トリクルダウンなどといったことは、そもそも幻想ともいえるのかもしれない。

 地方再生にとって必要なのは、都会から地方という流れではなく、地方に対し直接、対策を行わなければならないということだろう。

 この点で、現在の地方創生は、疑義や不満はあり評価はできないが、その方向性としては正しいとも言える。

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