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時間の無駄? 地方産業競争力協議会

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概要

 今週より、産業競争力会議の地域版である「地方産業競争力協議会」がスタートしたようだ。


 11月18日の「四国地方産業競争力協議会」を皮切りに、全国各地で開催が行われている。

外部リンク経済産業省「地方産業競争力協議会


 地域の声を聞くと言えば、もっともらしいが、次のような理由から、はっきり言って時間の無駄ではないかと思う。


単なる要望機関?

 まず気になるのは、各地域の単なる要望を聞く場になるのではないかということである。知事会、長会、町村会など、国と地方で話し合う場は既にある。そこで行われているのは、多くの場合、地方から国への要望だ。今回のことについても、各地域で産業施策を行っているが、規制や財源は国が握っているため、国と地方の話合いといった場合、要望になりやすい。例えば、中国地方産業競争力協議会で採択された内容を見ると、国への要望のオンパレードである。

外部リンク山口県「第1回中国地方産業競争力協議会 緊急アピールについて」


 別にこのような要望を私は否定するつもりはない。しかし改めて、このような場を設ける必要があるのか、疑問である。
 なぜなら、所詮は要望に過ぎない。地方産業競争力協議会で決定されたからと言って、その実現が担保されているわけではない。

 例えば、中国地方産業競争力協議会での採択内容を見ると、国による中小企業等の補助金をやめて、都道府県の事業とし、財源は交付金措置とせよといったものもある。この協議会は、経済産業省を中心に行われているが、経済産業省としては、このような措置は受け入れられないだろう。

 要望は聞くが、実効が担保されていない協議会。これでは、単なる地方のガス抜きの協議会となってもおかしくない。


メンバーは適切なのか?

 次に気になるのは、メンバーである。委員としては、それぞれの地域の知事や地域の経営者などである。言い換えると、内閣の一員や国会議員は全く入っていない。地方の声を吸い上げるというのであれば、委員に国会議員などが入っていなければおかしい。各地域のことを決めるのに、国会議員などが入っているのは国による関与とも考えられるが、このような会議はプロセスも重要だ。
 最終的には、各地域の協議会が決めたことを内閣の誰かに渡すというセレモニーが行われるのかもしれない。ただそれでは、各地域の協議会で決まった数ページのパッチワーク文章が、内閣に行くだけである。

 勿論、全く国の人がいないわけではない。中国地方産業競争力協議会の例を見ると、オブザーバーとして、霞が関から審議官が来ていたり、国の出先機関の各地方局長が参加している。その意味で、プロセスについて、国も関与していると言えるのかもしれない。しかし、選挙に選ばれていない国の官僚が、地方の知事などの意見を聞くというのは、民主主義の原理から言って、気持ちのいいものではない。

 そもそも各地方局長はその地域について、知っておかなければならない立場の人たちである。このような地域の会議であるから、呼ばなければならないということで、オブザーバーとして呼んでいる部分もあるのだろう。また、事務局は地方局が行っているので、当然、その長は参加しなければということもあるのだろう。しかし、(やっていないことはないと思うが)このような協議会の前に、霞が関に情報を伝えておくべき立場の人たちなのである。それを改めて、協議会に参加させるというのは、違和感を感じてしまう。


地域設定がおかしい?

 各地域をブロックで分けて、協議会が作られているが、非常に微妙な地域もある。例えば、関東地方産業競争力協議会である。
 関東と言えば、首都圏をイメージするが、この協議会には例えば新潟県なども入っている。新潟などはブロック分けが難しい地域だが、はっきり関東とは言い難い。協議会として意見をまとめることを考えると、新潟県の意見は他の関東の都県とは大きく異なり、浮いた意見になったり、少数意見になりがちになるだろう。これでは地方の声を聞くと言いながら、実際はそのようなことが行われないことになる。

 また、興味深いのは福井県である。委員の予定を見ると、福井県知事は、北陸産業競争力協議会と近畿ブロック地方産業競争力協議会の両方に委員として入っている。別に福井県を悪者にするつもりもないし、ブロック分けが難しいということもあるのだろうが、正直なところ、違和感を感じざるを得ない。

 更に、各地域で開催するということで設けられたのだろうが、北海道産業競争力協議会は北海道だけである。ならば、全く取りまとめなどはいらず、そのまま要望を国に挙げればいいだろう。


短い時間で何を話すのか?

 最後に気になるのは、時間である。

 第1回目のそれぞれの地域の協議会を見てみると、3時間近く時間をとっているところもあれば、近畿ブロック地方産業競争力協議会や北陸産業競争力協議会では1時間しか、時間をとっていないものもある。1時間では、委員の挨拶などもあることから、協議会に値するような話など、ほとんどできないだろう。

 なぜこうなったのか分からないが、この2つの協議会については、それぞれの地域の知事が集まって話すような場が設けられており、別にこのような協議会がなくてもいいのかもしれない。


はっきりいって無駄である

 このような協議会を設置しなくても、国と地方の話し合う場はいくらでもある。逆に、このような場がなければ、国は地方の声を聞くことができないという方が問題だ。
 各協議会でまとめた意見をそのまま国が採用してくれるというのであれば別であるが、そうはいかないだろう。

 どこの自治体でも忙しいし、自治体によっては12月議会中のところもあるだろう。
 改めて無駄な労力がかかるようなことは、やめたほうがいい。

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