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面白い。放牧による耕作放棄地再生

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放牧による耕作放棄地の再生

 徳島県では、モデル事業として、県内3か所で、耕作放棄地で放牧を行うという事業を始めるようだ。

2014年9月11日 日本経済新聞徳島県、放牧牛活用し耕作放棄地を再生

 耕作放棄地には雑草が覆い茂り、通常は農地として使用できない状態にある。そこに、放牧牛を放ち、その雑草などを食べてもらい、農地として再生するというものだ。具体的には、畜産農家に放牧用の柵などの費用を助成したりするという。

 かつて放牧をやっている人から、牛は雑草などの草木を食べるため、耕作放棄対策に有用ではという話を聞いたことがある。

 また調べてみると、(独)家畜改良センターでは、実証試験を行い、「耕作放棄地放牧のすすめ」というマニュアルまで公表している。
 このマニュアルは耕作放棄地に牛を放ち、牧場にしようというものだが、右下の写真のように、荒れた耕作放棄地が綺麗な牧場になっている。


耕作放棄地放牧のすすめ

(独)家畜改良センター
「耕作放棄地放牧のすすめ」

耕作放棄地放牧のすすめ

(独)家畜改良センターHPより

 この点で、耕作放棄地を農地に変えるという徳島県の実証試験はうまく行くと思われる。


本当のポイント

 日本全国いたるところに耕作放棄地があるので、もっとこのようなことをやったらいいと思うのだが、そこには課題がある。そして今回の徳島県の事業は、この課題に配慮したものになっているようだ。

 1つは、同じ農業という大きな括りでは同じだが、農作物を作っている人と酪農を行っている人ではつながりに乏しい。また、つながりがあっても、農作物を作っている人からすると耕作放棄地に牛を放つという発想は出にくいし、酪農をやっている人からすると、「あなたの耕作放棄地に牛を放ちたい」とは言いにくいだろう。

 そこで、今回の徳島県では、酪農農家が有している自らの農地も事業の対象と加えている点で、モデル事業として実施できる酪農農家がいないというリスクを軽減している。

 2つは、耕作放棄地を農地に変えた後は、飼料作物を育てるという。背景としては、円安等による飼料の高騰にあるようだが、耕作放棄地対策の出口も設けている点がポイントだ。

 耕作放棄地対策が言われているがなかなか進まないのは、農作物を作る人がいないからというのが一番の理由であるが、同時に農家にとって、やはり耕作放棄地になるような土地は、農作物を作りにくいから、放棄地になるのである。

 場所や土壌、気候が農作物を作るのに、大変だから耕作放棄地化するのであり、農業をやめた人の土地だけが耕作放棄地になるのではなく、農業を続けていても、生産において優先度が低い土地が耕作放棄地になる。

 そのため、単に放牧などを行い、耕作放棄地を農地に再生したところで、農作物を作る人がいなければ、すぐに耕作放棄地に戻ってしまう。

 そして、今回の徳島県では、飼料作物を作るというゴールも決めているので、耕作放棄地に戻るということは少ないだろう。


ポツポツとやったらいい

 徳島県では、3か所でモデル事業を行い、来年度には県内全下にも広げていく予定だという。

 ただ、酪農家が放牧したいと思うような耕作放棄地は限られるだろうから、このような事業を行えるところは限られる。また、最終的には飼料作物づくりコストと輸入飼料の費用の比較という問題もある。

 その点で、大きな展開は難しいと思うが、ポツポツとやったらいいと思うし、他の地域でも面白い取り組みではないかと思う。

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