概要
減反政策の廃止が言われる中、農家の緩和措置として、様々な制度の創設が設けられるようだ。
減反政策自体が米を作らなければお金を貰えるといういびつなものであったが、この新たな制度案を見ると、一層、農業がいびつな方向に向かっているような気がする。
新しく創設される制度は、次のようなものである。
- 飼料用米への転作補助
- 農地維持支払い
- 資源向上支払い
- 農家への収入保険
資源向上支払いについてはよく分からず、農家への収入保険については、「何か変だぞ、「農業保険」」で書いたので省略すると、「飼料用米への転作補助」と「農地維持支払い」は、非常にいびつな制度である。
飼料用米への転作補助
この制度は、この言葉の通り、飼料用米を作ったら補助金がもらえるというものである。これは以前から農水省で進めていた施策で、その補助を拡充するというものだ。
そして水田を19ha、畑を15haもつ平均的な農業集落がモデルにしたもので、農水省の試算によると、農家の所得は次のようになるそうだ。
見直し前 見直し後
主食米 420.0万円 ⇒ 305.5万円
飼料米 69.0万円 ⇒ 247.5万円
こうなってくると、かなり飼料米を作ろうという農家も多く出てくるだろう。
飼料については、小麦などの輸入に頼っている現状を考えると、飼料用米自体は否定するつもりはないし、むしろ産業的に考えると、重要な分野だと思う。
しかし、飼料米産業に未来があるかといえば、そうではないだろう。農水省が数年前から言っているが、現実的には多くは進んでいない現状を考えると、明らかだ。未来への投資という観点ならば納得がいくが、それには、大規模化など違う施策も打たなければならないが、そういう要素も見られない。
これにより、飼料米市場というのは拡大するだろう。しかし、農家への補助金により創出されたマーケットなんて、かなり変な市場である。
農地維持支払い
これは、農地を維持した場合に、水田では10aあたり3000円(北海道は2300円)、畑は2000円(1000円)のお金が貰えるというものである。
耕作放棄地などを考えると、このような制度は重要だ。しかし、この維持される農地の概念がポイントだろう。
細かな制度は現在分からないが、単に農地を維持するというだけならば、耕うんビジネスというものも生まれるかもしれない。
例えば、農地維持の重要なポイントである耕うんを考えると、1日で1・2haは耕せるだろう。水田でいえば、上記の金額を当てはめると、1日6万円から12万円貰える計算になる。勿論、他にも費用が発生するし、耕うんをして他に何もしないという場合は少なく、需要は限られるだろう。とはいえ、いい金額なので、耕うんを行い農地維持ビジネスということをやろうという人が出てきてもおかしくない。農地を持っている人からすると、何もせずに鞘を抜くだけで儲かるのだから、十分にインセンティブが働く。
そうなると農作物は作らないが、農地だけが存在するようなことも多く出てくるだろう。
まとめると…
正直言って、国としては何をしたいのかよく分からない。
強い農業を目指すためといっているが、むしろ、いびつなビジネスを生み出すだけのような気がしている。そして、このようなことになったのは、政治と農業の関係であり、それを鑑みた行政(農水省)の立場だろう。
つまり、政治・行政・民間のいびつな関係が、今回のようないびつな施策となったような気がしている。
そして改めて気づいたのだが、よく農業について農水省は失敗してきたとか、農水省は二流官庁と言われたりしているが、そうではないのではという気がしている。むしろ政治の失敗が、農政や農水省をダメにしていったのだろう。
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