秋田県で、外部の人による包括外部監査が行われ、その結果が報告された。
指摘事項としては、観光連盟に関して56.2%もの業務で、観光連盟から他の事業者に再委託が行われており、今後は再委託ではなく、直接、県から各事業者に発注を行うべきだというものである。
2014年03月28日 秋田魁日報
「県業務の5割以上再委託、県観光連盟 包括外部監査」
再委託というと、右から左へ仕事を振っているだけであり、利益の中抜きを行っているようにも思え、決してよいことではない。国の外郭団体で天下り先確保のためにこのようなことが行われていたり、大手企業と下請企業の間でも行われていたりして、問題視されている点でもある。
しかし、この指摘は誤っている。
つまり、観光連盟という仕組みは、右上のような絵で表すことができるだろう。
様々な機関が絡んでおり、その利害調整を行い、各事業を管理しているのが、観光連盟なのである。
しかしこれが、上記のように、県が直接、発注することになったらどうなるだろうか。
右下の絵のように、県と観光連盟で別々のPR活動が行われることになる。勿論、連携して行えばいいという話もあるが、機関が異なれば、その思惑や考えが異なってしまう。同じ地域の観光PRを行うのに、齟齬や不一致が発生することもあるだろう。
すなわち、一見、県が直接委託をすれば、効率的なように見えるが、実際の業務を考えると、非効率になったり、事業の効果を減らしてしまうのだ。
これと似た仕組みとして、SPV(特別目的事業体)などがある。SPVというとなじみは薄いが、映画の制作委員会を考えればいい。映画製作には様々な機関が絡むため、資金や事業運営について、一元管理するような機関が必要となる。そこで、制作委員会というものが作られるのである。
勿論、この観光連盟が、職員の天下り先で高額の給料などを得ているのならば、それはそれで問題だが、そうなればその点を指摘すればいい。
以上の秋田県の例を見ると分かるように、外部監査の指摘は必ずしも正しいわけではない。
東京の会計士が監査にあたったそうだが、わざわざ東京から秋田まで監査をしに来たのだから、何らかの成果(指摘)を出す必要があったのだろうとも思う。
しかしこのような、一見もっともらしいが、間違っている指摘はかえって有害である。
外部監査は、内向きになりがちな行政機関に対し、外部からチェックを行うというもので、必要だと思う。
ただ、実務や仕組みなどを知らないがゆえに、とんちんかんな指摘が行われたり、かえって行政運営に支障を来すような指摘も多い。外部のチェックだからすべて正しいわけではなく、外部チェックも間違うことがあるのである。
外部監査は必ずしも正しいわけではないので、注意が必要である。
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