概要
渋谷区で、条例を改正し、情報公開に対して制限を加えるという動きがあるようだ。
具体的には、公開請求の却下やコピー代の値上げなどを行うという。
これに対し、時代に逆行しているなどといった批判があるらしい。しかし、私は必ずしもそうとは思わないし、単純な話はすべきではないと思う。
なぜ制限したのか?
ここで問題は、なぜ制限に至ったのかということである。
区役所としても、時代に逆行していることは承知しているし、批判が出るだろうことは予測しているだろう。
しかし、それでも行わざるを得ない理由としては、次のようなものがあるということだ。
- 1件で5000枚を超えるようなコピーが必要な請求が多発している
- このような請求を行っているのは、限られた人である
- これらに伴い、職員の残業や休日出勤が生じている など
ただ、ここで理解すべきは、そもそも情報公開は、職員にとって、かなり面倒な作業ということである。面倒というと、職員の怠慢さをイメージするが、経済性でいえば、かなりコストのかかる作業なのである。
渋谷区ではどうなのか分からないが、通常、次のような情報公開に関して、次のような作業を伴う。
- 請求された資料(簿冊)を探す(少し古いものだと、書庫に移すため、書庫の中から探し出す)
- 資料(簿冊)は、通常、ファイルで閉じられており、それを一枚一枚見て、請求箇所を探す
- 請求箇所が見つかったら、コピーをとる
- そのコピーを読みながら、個別の個人情報・企業情報などに抵触しないかどうかを見ながら、黒塗りを行う
- 請求者に渡すため、黒塗りのもののコピーを行う
- 一職員では権限がないため、決裁をとる
このような作業を伴うため、1つ請求が来ただけで、作業だけで30分~1時間はかかってしまう。
特に、請求者は何らかの政治的な目的を持っていることも多いため、どこを黒塗りするかに気を使う。真っ黒では更に批判が増えるだけであり、公開したことにより、個別の個人情報・企業情報などが出るのも問題となる。そこで、細心の注意が必要となる。
どこの自治体でも職員削減が進み、余裕のない行政運営を行っている。当然、情報公開担当官などを置いているわけではなく、それぞれの業務担当がこれを行い、通常業務に加え、このような業務が増えるわけだから、当然、残業代などという形で、行政コストは増えることになる。
そして、上記のように、非定型的な作業でもあるので、業務としては高コストな作業なのである。
これらの点から、単純に「情報公開に反する」といったことはいうべきではないと思う。少なくとも、上記の渋谷区のような事例では、数十万・数百万円のコストがかかっていることを考えなければならない。
どうしたいいのか?
そもそも私は、情報公開について、お金をとるべきではないと思っている。現状、10円のコピー代を徴収しているが、住民の当然の権利であり、民主主義の原理に関わることだから、無料にしてもいいと思う。
しかし、上記のようなフリーライダー的な人・組織がある以上、対策が必要だ。
そこで、渋谷区のような場合に、検討すべきなのは、次のようなことだろう。
- ネットなどで情報公開を進め、情報公開によらずとも、情報が得られる手段を提供する
- 資料管理など、作業の見直しを行う
- 情報公開について、2段階設定などの形で、コスト設計を行う など
特に、最後のものについては、追加の説明が必要だろう。
簡単に言えば、枚数規定などを行い、一定枚数ならば、無料や少額とするが、ある程度の請求ならば、高額な費用を徴収すればいいと思う。
通常の請求ならば、そう多くはないのでこのようにしたり、無料などにすれば、むしろ民主的である。
また、政治的な意図などがあったりしても、コストがかかったり、小分けで請求を行うだろう。ただ、小分けしてもその限界があるだろうし、その小分けが大人数ならば、それはそれとして行政課題でもある。
このような話は渋谷区だけではないと思う。
情報公開がスタートして、20・30年。今一度、情報公開の在り方を見直してもいいかもしれない。
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