アベノミクスの第2の矢は、大規模な財政出動であり、平成24年度補正と平成25年度予算で、10兆円超の公共事業が執行されている。
そもそも2000年代の公共事業の縮小で建設会社は減少しており、更に東日本大震災で建設需要が発生している中、建設業労働者の賃金や資材価格の上昇があった。ただ、このアベノミクスの影響で、更に賃金や資材価格などが上昇している。来年の消費税アップを見込んで、住宅購入の駆け込み需要なども発生していることも挙げられるだろう。
また、建設労働者の賃金上昇、雇用対策などの面から、公共事業の工事設計労務単価の引き上げも図られている。
このような背景のもと、全国各地で、自治体が提示する予定価格に対して、入札者がいなかったり、価格が合わなかったりして、公共事業の不調が起きている。
外部リンク中國新聞 2013/06/06「防府市工事で全JV入札辞退」
外部リンク信濃毎日新聞 2013/06/15「新市民会館の建設工事、長野市は随意契約できず」
外部リンク信濃毎日新聞 2013/06/21「入札不調の岡谷市民病院の工事費 市、再見積もり11億円増」
不調自体は致し方ないが、今後、次のような問題が生じるだろう。
まず、上記の新聞記事にもあるが、財政負担が大きくなるという点である。これまでの価格では応札する業者がいない以上、予定価格を上げざるを得ない。事業費が大きくなり、より財政負担も重くなる。
特に、学校・病院など、地方が行う公共事業は、地方にとっては重要な事業であるため、数年かけて計画を検討している場合も多い。それが、このような現状となると、計画の変更や財政運営の見直しも必要となる。
次に、アベノミクスの財政出動は永久には続かない。現在の公共事業の水準は、いつかは落ち込む。また、現在の公共事業は、将来の公共事業の先食い的な要素もある。そのため、アベノミクスの財政出動が終わった後には、公共事業は大きく落ち込み、建設業は大きなリセッションを迎えるだろう。
つまり、現在の時点では高い公共施設を買わされ、財政はより厳しくなり、将来の時点では建設業の大きな不況を招くことになるということである。
地方にとっては、大きなマイナス要素である。一時的に、地方が行う公共事業をストップさせるということも考えられるが、地方が行う公共事業の多くは国の補助金などにより賄われているため、簡単にストップできない。仮にストップした場合、将来、国の補助金などがなくなってしまうと、計画自体が頓挫してしまうかもしれない。
結局は、上記のようなマイナス要素を甘受しなければならない状況がある。
アベノミクスの第2の矢である財政出動は、ある程度、必要である。
しかし、公共事業などに過度に依存すると、結局は、地方の衰退を強めてしまうと思う。
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