クラスター分析について
県民経済計算の経済活動別GDPを用いて、クラスター分析を行ってみた(なお、2009年の名目値について比率をとり、ウォード法にて算出。沖縄県はN/Aがあるため分析外としている)。
クラスター分析とは、いくつかの性質について、それらの間の類似性に基づき、似たものを集めて、クラスターをつくるという分析方法である。
各クラスターについて
まず、一番上の大きな分岐点の左側の宮崎県から島根県を見てみる。このクラスターは、政府サービスなどの割合が高い都道府県となっており、公的依存度が高い都道府県といえよう。特に、その下の分岐により、宮崎県から熊本県と鳥取県から島根県で分かれているが、後者の鳥取県から島根県ではより政府サービスなどの割合が高く、より公的依存度が高いクラスターである。ただ反面、宮崎県から島根県までのこのクラスターは、比較的農林水産業の比率も高い傾向がある。
次に、中間の長野県から静岡県は製造業の比率が高い都道府県であり、福島県から徳島県までは、電力・ガス・水道業の割合が強いクラスターとなっている。特に、原発の多い福島県と福井県で最少のクラスターが構成されていることが興味深い。
東京都・大阪府・福岡県のクラスターは、卸小売や不動産業などサービス業が強いクラスターとなっている。
最後に、右側の都道府県は、東京都・大阪府まではサービス業が強くはないがそれなりにサービス業の比率が高く、政府サービスの割合もそう高くはないクラスターとなっている。基本的には、埼玉県や京都府など東京都や大阪府の隣県などが多くなっている。また、宮城県や広島県・岡山県など、東北地方や中国地方における人口の大きな都道府県が入っている。
以上をまとめると、次のような産業構造に分類できると言えよう。
タイプ | 概要 | 都道府県 |
---|---|---|
農林水産業型 | 農林水産業の割合が高く、公的依存度も比較的高い都道府県。 | 宮崎県、鹿児島県、大分県、奈良県、岩手県、新潟県、山梨県、山形県、熊本県 |
公的依存型 | 公的依存度が高い都道府県。 | 鳥取県、秋田県、長崎県、北海道、高知県、青森県、島根県 |
製造業型 | 製造業の割合が高い都道府県。 | 長野県、三重県、滋賀県、群馬県、栃木県、静岡県 |
エネルギー型 | 電気・ガス・水道などエネルギー関連の産業の割合が高い都道府県。 | 福島県、福井県、山口県、徳島県 |
サービス業型 | 卸売業や不動産業などサービス業の割合が高い都道府県。大都市型の産業構造ともいえる。 | 東京都、大阪府、福岡県 |
その他 | 比較的サービス業の割合が高く、公的依存割合も比較的小さい都道府県。 更に、地方の都道府県が集まったクラスターや大都市近隣県が集まったクラスター、城下町を含んだような都道府県のクラスターなどにも分岐している。 |
岡山県、広島県、香川県、和歌山県、茨城県、富山県、岐阜県、千葉県、神奈川県、埼玉県、兵庫県、京都府、愛媛県、宮城県、石川県 |
各地域について
この図をクラスターごとに見るのではなく、東北地方などの地域ごとに見ていくと、興味深い点も見えてくる。
まず、東北地方の都道府県を見ると、例外は福島県と宮城県のみで、ほとんどが政府サービスや農林水産業の割合が高いクラスターに属している。
関東地方では、東京都がサービス業の強いクラスターに属し、その隣県の神奈川県・埼玉県・千葉県で一つのクラスターを構成している。また、栃木県や群馬県も製造業が強いクラスターに属し、比較的類似性が高い。逆に、山梨県と茨城県は、それぞれ異なるクラスターにおり、関東の中でも特殊な産業構造になっていると言えよう。
中部地方は、大きく分けると日本海側の北陸と太平洋側の東海で大きく異なるようだ。日本海側の新潟県・富山県・石川県・福井県は、同じ日本海側といっても、バラバラのクラスターに属しており、産業構造の類似性は乏しい。反面、長野県・三重県・愛知県・静岡県など、(長野県を入れるかは別として)比較的東海側に属する都道府県は、いずれも製造業の割合が高いクラスターに属している。若干、岐阜県が違うクラスターに属している程度であるが、愛知県の影響から、大都市の隣県的な要素が産業構造に組み込まれ、特殊な位置にいったのだろう。
近畿地方は、大阪府がサービス業の強いクラスターに属し、その隣県の京都府・兵庫県で、比較的近いクラスターに属している。また、和歌山県も比較的類似性は高い。反面、特殊なのが、滋賀県と奈良県である。特に、奈良県では農林水産業は強くないが、政府サービスの割合が高いため、左側の公的依存度の高いクラスターに属している。
中国地方は、山陰地方と山陽地方、そして山口県と、地理的条件でくっきりと分かれる結果となった。逆に、四国地方は同じ四国とはいえ、全く異なるクラスターに属しており、産業構造は全く異なっているいえよう。
最後に、九州地方は、福岡県がサービス産業の割合が高いクラスターに属するが、それ以外は政府サービスの割合が高いクラスターに属している。この点で産業構造については、福岡県とそれ以外の都道府県という構図が見える。
コメント