都道府県別の預貸率
地域経済にとって、いかに資金が地域に回っているかという視点は重要である。また実際、地域によって、その金融状況・金融市場は異なっている。そこで今回、都道府県別の預貸率を調べてみた。
預貸率とは、預金が貸出にどれだけ回っているかという指標である。貸出÷預金で定義されるため、預貸率が高いほど預金が貸出に回っており、預貸率が低いほど預金は貸出には使われておらず、国債購入など他のことに使われていることを示す。
まず、2011年の都道府県別の預貸率を見たのが、下の図である。
参考各都道府県の分析については「都道府県別分析」
全国平均は68.9%で、グラフから分かるように東京都がトップで約100%となっている。逆に、奈良県や和歌山県では約40%と非常に低い数値となっている。
勿論、資金の流出入を把握したものではないので、貸出金のすべてがその都道府県から調達したものかは不明であるが、東京都では預金として集められた資金が東京都内で貸し出され、奈良県や和歌山県では預金の6割がそれらの地域の貸出には使われず、国債など違うことに使われている。言い方を変えると、奈良県や和歌山県では、地域で集めた資金が地域内に還元されていない状況になっている
預金・貸出の変化率
次に、各都道府県が、過去10年間(2002年から2011年)に預金と貸出がどれだけ変化したかを示したのが、下図である。横軸は預金の変化率、縦軸は貸出の変化率となっている。
このグラフから、すべての都道府県で預金が増加しており、貸出は増えている都道府県もあれば、減っている都道府県もあることが分かる。例えば、沖縄県では約40%も預金が増加し、貸出は約18%増加している。逆に大阪府では、約13%預金が増加したが、約23%も貸出が減少してしまっている。
預貸率の変化
そこで、各都道府県の過去10年間(2002年から2011年)の預貸率の変化を見たのが、下図である。
静岡県、愛媛県、宮崎県、鹿児島県の4県しか預貸率は増加しておらず、ほとんどの都道府県で預貸率は低下し、地域内で集められた預金が地域内に回らなくなっていることが分かる。特に、東京都や大阪府では約30%も預貸率が低下してしまっている。かつて、東京都や大阪府の預貸率は100%を超えており、他の地域から集められた資金が、東京都や大阪府に流れるという構造があった。これは首都圏・関西圏の一極集中を防ぐという点でいいことだが、他の地域でも多くが預貸率を低下させている状況を考えると、決していい状況ではない。
預貸率を上げるという「金融の地産地消」も重要なことである。
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