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見えてきた植物工場の今後


拡大する植物工場

 京都の会社が、1日に3万個のレタスを生産する植物工場を建設する。

15.8.17 朝日新聞「1日にレタス3万個製造、完全自動化の工場建設へ 京都」


 1日に3万個ということは、年間で約1100万個。
 レタスの国内の出荷量は平成25年で547,100トン。1玉あたり0.5kgとすると、年間11億個。
 つまり、この工場だけで、日本でのレタス生産の1%を占めることになる。

 私は植物工場は未来の農業であると考えているが、どうも見えない部分があった。しかし、この工場だけで1%、それ以外の工場も含めれば、数%になるだろう。ここまでのボリュームとなると、植物工場の今後が見えてくる。


菌床しいたけの歴史

 しいたけは、原木しいたけと菌床しいたけに大別される。そして、菌床しいたけは、植物工場とはいわないが、工場生産されているしいたけである。
 そのため、この菌床しいたけの歴史を見れば、今後の植物工場の動向も見えてくる。

 菌床しいたけは、大きく分けて、次の3つの段階があった。

①研究期:昭和40年代
 原木の不足などにより、研究開発が行われるが失敗

②導入期:昭和50年代
 栽培技術が確立し、企業等が菌床しいたけ栽培に参入

③発展期:平成時代
 企業等が菌床しいたけ栽培に参入し、徐々に原木しいたけから菌床しいたけに移行する。
 平成元年には生しいたけの生産量について、菌床しいたけは4%程度であったが、下記のグラフのように、生産量に対する菌床しいたけの割合は年々、増加。2000年には、原木しいたけの生産量を上回り、現在では約9割に菌床しいたけとなっている。


しいたけの生産量


植物工場のレタスに当てはめると

 これを、植物工場のレタスに当てはめると、まさしく発展期に入ったと言えよう。

 菌床しいたけの場合、原木に比べて安価という事情があり、植物工場のレタスの場合はそれほど価格競争力はないという面もある。
 このことから、発展期において、菌床しいたけが原木しいたけの生産量を上回るには10年ぐらいの年月がかかっており、それよりも時間がかかると思われるが、15年~20年といった将来には、植物工場のレタスが露地栽培のレタスを超える日が来ると思われる。

 若干、話は違うが、まいたけも企業により工場生産されている。そもそもまいたけ自体は、ほとんど生産されていなかった、1980年代前半に技術が確立し、企業が参入。その後20年ぐらいで、現在の生産量に至っている。

 このことを考えても、20年ぐらいで、大きな節目を迎える。そして、これはレタスについても言えるのではと思う。


今後の農業政策

 国策である自給率アップ、地域経済の重要産業ということから、どこでも新規就農対策など、農業政策を実施している。
 しかし、上記のようなレタスの例を考えたとき、農業政策も転換が必要だ。

①新規就農対策
 植物工場の現在のメインの野菜は、葉物である。栽培期間(回転期間)が短く、多く収穫できるためだ。そして、この分野の植物工場が増えてくるとなると、新規就農においては、このような作物の栽培は避けるべきである。
 今後は厳しい状況ができるだろうし、20・30年後には路地の葉物は衰退分野になるだろう。30代で新規に就農した場合、50・60代にはやっていけない状況が生まれる。

②差別化対策
 勿論、葉物などを作っている生産者もおり、葉物で就農したいという人もいるだろう。原木しいたけは上記のように衰退傾向にあるが、同時に、ブランド化を図っている生産者もいる。
 そのためには、ある種の技術開発なども必要であろうし、品種改良などを考えれば、今のうちから、対策が必要となる。

③新たな産地化
 植物工場自体は、レタス・葉物だけではなく、他の野菜・果物などにも広がるだろうし、実際に研究開発が行われている。
 そして、他の野菜・果物において、植物工場が成功すれば、その地域が新たな産地となる可能性がある。この点から、産学官で研究などを進め、新たな産地化を目指すことも考えられよう。


まとめ

 農業に関しては、これまで「戦術」的に施策が行われていたように思うが、この植物工場の動向を考えると、今、大きな「戦略」的な変更が求められていると思う。

 国による農業改革、地方による農業対策など、既存の論理・議論などを話しているうちに、植物工場が一般化し、そのような議論が吹っ飛ぶ可能性が出てきた。

 真剣に植物工場というものに対して、対策を打てるかどうかが、地域における農業というものを左右する時代になったと思う。







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