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経済波及効果が大きい産業はどれか?


概要

 先月、日本全体の産業連関表の速報値(平成23年)が公表された。

 産業連関表は、産業間の取引状況を表したり、経済波及効果などを算定する際に使用される統計である。

 基本的には、5年ごとに策定され、久しぶりの最新値であるので、この統計を用いて、それぞれの産業の経済波及効果を調べてみた。


経済波及効果

 以下は、産業部門数として108部門の産業連関表を用いて、ある産業に1の需要が発生したときに、どれだけの経済波及効果(生産誘発額)があるかを計算したものである。

 なお下表において、「直接」は直接効果、「1次」は1次波及効果、「2次」は2次波及効果、「計」はこれらの合計(総合効果)であり、順位・偏差値はこの「計」に対する数値である。

部門 直接 1次 2次 順位 偏差値
1 耕種農業 0.74 0.58 0.16 1.48 96位 40.34
2 畜産 0.99 1.39 0.28 2.66 13位 60.44
3 農業サービス 1.00 0.65 0.47 2.12 46位 51.25
4 林業 0.86 0.47 0.26 1.59 93位 42.32
5 漁業 0.86 0.70 0.28 1.84 83位 46.52
6 金属鉱物 0.01 0.01 0.00 0.02 107位 15.64
7 石炭・原油・天然ガス 0.01 0.01 0.00 0.02 108位 15.61
8 非金属鉱物 0.79 0.98 0.30 2.06 54位 50.29
9 食料品 0.86 1.07 0.31 2.24 39位 53.28
10 飲料 0.93 0.82 0.25 1.99 66位 49.11
11 飼料・有機質肥料(別掲を除く。) 0.89 1.19 0.25 2.33 30位 54.84
12 たばこ 0.57 0.13 0.05 0.75 104位 27.97
13 繊維工業製品 0.72 0.78 0.35 1.85 80位 46.68
14 衣服・その他の繊維既製品 0.37 0.37 0.20 0.94 102位 31.20
15 木材・木製品 0.66 0.62 0.26 1.54 94位 41.45
16 家具・装備品 0.78 0.90 0.40 2.08 50位 50.55
17 パルプ・・板・加工紙 0.91 1.27 0.31 2.50 18位 57.70
18 紙加工品 0.97 1.21 0.43 2.61 15位 59.52
19 印刷・製版・製本 0.99 0.95 0.46 2.41 26位 56.12
20 化学肥料 0.78 0.75 0.19 1.71 87位 44.33
21 無機化学工業製品 0.77 0.86 0.24 1.87 79位 46.98
22 石油化学基礎製品 0.99 1.13 0.08 2.21 42位 52.72
23 有機化学工業製品(石油化学基礎製品を除く。) 0.70 1.09 0.17 1.96 69位 48.55
24 合成樹脂 0.77 1.20 0.19 2.16 45位 51.90
25 化学繊維 0.79 1.02 0.24 2.05 56位 50.11
26 医薬品 0.79 0.86 0.28 1.94 74位 48.13
27 化学最終製品(医薬品を除く。) 0.83 1.10 0.30 2.22 40位 52.95
28 石油製品 0.81 0.09 0.02 0.93 103位 31.01
29 石炭製品 0.98 0.38 0.09 1.45 97位 39.86
30 プラスチック製品 0.92 1.25 0.40 2.58 16位 59.01
31 ゴム製品 0.79 0.84 0.32 1.94 73位 48.21
32 なめし革・毛皮・同製品 0.29 0.26 0.14 0.69 105位 26.97
33 ガラスガラス製品 0.86 0.80 0.33 1.98 67位 48.91
34 セメントセメント製品 0.99 0.99 0.39 2.37 28位 55.50
35 陶磁器 0.88 0.75 0.40 2.03 58位 49.72
36 その他の窯業・土石製品 0.85 0.77 0.33 1.94 72位 48.23
37 銑鉄・粗鋼 0.96 1.18 0.14 2.28 35位 53.92
38 鋼材 0.96 1.85 0.21 3.02 5位 66.60
39 鋳鍛造品 0.99 1.20 0.30 2.49 20位 57.56
40 その他の鉄鋼製品 0.94 1.80 0.28 3.02 6位 66.54
41 非鉄金属製錬・精製 0.42 0.18 0.05 0.65 106位 26.38
42 非鉄金属加工製品 0.85 0.68 0.22 1.75 86位 45.01
43 建設・建築用金属製品 0.94 1.48 0.45 2.87 7位 63.97
44 その他の金属製品 0.92 1.09 0.43 2.44 23位 56.67
45 はん用機械 0.87 1.07 0.38 2.32 32位 54.66
46 生産用機械 0.87 1.05 0.40 2.32 31位 54.71
47 業務用機械 0.78 0.91 0.35 2.03 57位 49.77
48 電子デバイス 0.53 0.64 0.23 1.40 98位 39.04
49 その他の電子部品 0.86 1.09 0.45 2.39 27位 55.81
50 産業用電気機器 0.83 1.03 0.38 2.25 37位 53.42
51 民生用電気機器 0.78 0.98 0.32 2.07 52位 50.41
52 電子応用装置・電気計測器 0.60 0.66 0.28 1.54 95位 41.43
53 その他の電気機械 0.78 0.92 0.30 2.00 64位 49.17
54 通信機械・同関連機器 0.62 0.77 0.28 1.67 90位 43.60
55 電子計算機・同附属装置 0.39 0.44 0.16 0.98 100位 31.96
56 乗用車 0.88 1.82 0.40 3.11 4位 68.04
57 その他の自動車 0.96 2.07 0.45 3.47 1位 74.21
58 自動車部品・同附属品 0.96 1.72 0.47 3.15 3位 68.83
59 船舶・同修理 0.95 1.44 0.38 2.77 8位 62.36
60 その他の輸送機械・同修理 0.77 0.94 0.34 2.06 55位 50.23
61 その他の製造工業製品 0.63 0.69 0.30 1.62 91位 42.81
62 再生資源回収・加工処理 1.00 0.86 0.48 2.34 29位 55.00
63 建築 1.00 0.97 0.52 2.50 19位 57.69
64 建設補修 1.00 1.07 0.54 2.61 14位 59.63
65 公共事業 1.00 0.95 0.52 2.46 22位 57.09
66 その他の土木建設 1.00 0.94 0.58 2.52 17位 58.00
67 電力 1.00 0.83 0.25 2.09 49位 50.68
68 ガス・熱供給 1.00 0.50 0.21 1.71 88位 44.23
69 水道 1.00 0.92 0.33 2.25 36位 53.55
70 廃棄物処理 1.00 0.47 0.54 2.01 61位 49.42
71 商業 0.99 0.54 0.48 2.01 60位 49.44
72 金融・保険 0.97 0.56 0.42 1.95 71位 48.37
73 不動産仲介及び賃貸 1.00 0.54 0.29 1.82 84位 46.22
74 住宅賃貸料 1.00 0.44 0.25 1.69 89位 44.05
75 住宅賃貸料(帰属家賃) 1.00 0.24 0.06 1.31 99位 37.46
76 鉄道輸送 0.99 0.52 0.33 1.84 82位 46.60
77 道路輸送(自家輸送を除く。) 0.99 0.38 0.58 1.96 70位 48.52
78 自家輸送 1.00 1.48 0.26 2.74 11位 61.81
79 水運 0.47 0.37 0.11 0.95 101位 31.32
80 航空輸送 0.66 0.75 0.20 1.61 92位 42.56
81 貨物利用運送 1.00 0.55 0.42 1.97 68位 48.78
82 倉庫 1.00 0.65 0.37 2.02 59位 49.64
83 運輸附帯サービス 0.95 0.59 0.39 1.93 75位 48.00
84 郵便・信書便 0.99 0.29 0.73 2.00 63位 49.26
85 通信 1.00 0.81 0.28 2.09 48位 50.70
86 放送 1.00 1.06 0.42 2.48 21位 57.31
87 情報サービス 0.97 0.63 0.50 2.10 47位 51.00
88 インターネット附随サービス 1.00 1.26 0.49 2.75 10位 61.93
89 映像・音声・文字情報制作 0.98 1.02 0.44 2.44 24位 56.62
90 公務 1.00 0.52 0.47 1.99 65位 49.13
91 教育 1.00 0.29 0.72 2.01 62位 49.38
92 研究 1.00 0.65 0.60 2.24 38位 53.39
93 医療 1.00 0.74 0.56 2.31 33位 54.41
94 保健衛生 1.00 0.54 0.66 2.21 43位 52.71
95 社会保険・社会福祉 1.00 0.54 0.67 2.22 41位 52.89
96 介護 1.00 0.43 0.64 2.07 53位 50.37
97 その他の非営利団体サービス 0.99 0.66 0.63 2.28 34位 53.96
98 物品賃貸サービス 1.00 0.60 0.25 1.85 81位 46.60
99 広告 0.96 1.36 0.44 2.76 9位 62.16
100 自動車整備・機械修理 1.00 1.23 0.45 2.69 12位 60.86
101 その他の対事業所サービス 0.97 0.41 0.54 1.92 77位 47.82
102 宿泊業 0.89 0.78 0.39 2.07 51位 50.42
103 飲食サービス 0.98 0.96 0.47 2.42 25位 56.28
104 洗濯・理容・美容・浴場業 1.00 0.53 0.39 1.92 76位 47.87
105 娯楽サービス 0.98 0.52 0.32 1.82 85位 46.21
106 その他の対個人サービス 1.00 0.50 0.38 1.87 78位 47.05
107 事務用品 1.00 1.82 0.40 3.22 2位 69.98
108 分類不明 0.99 0.95 0.26 2.20 44位 52.61

平成17年の統計であるが、各都道府県の経済波及効果については「都道府県別分析」の経済効果を参照のこと。


経済波及効果が大きい産業

 経済波及効果について最も大きいのが、生産誘発額が3.47で「その他の自動車」である。2位は「事務用品」、3位が「自動車部品・同附属品」、4位が「乗用車」、5位が「鋼材」と続いている。

 「自動車整備・機械修理」なども108部門中12位となっており、自動車関連産業が総じて、経済波及効果が大きいと言える。

 この他、製造業では「パルプ・紙・板紙・加工紙」が108部門中18位、「紙加工品」が15位と、紙関係が比較的上位となっている。サービス業では、「広告」が9位、サイト運営などの「インターネット付随サービス」が10位と上位である。

 経済対策などで行われる公共事業なども、生産誘発額が2.46で108部門中22位と、比較的上位となっている(ちなみに、建築は19位、建設補修は14位と上位である)。


成長産業の経済波及効果

 よくこれからの成長産業は何かといったときに、農業、エネルギー、医療・介護、観光などが言われている。
 これについては賛否はあるだろうが、それぞれの産業について見てみる。

 農業について言えば、「耕種農業」は生産誘発額が1.48で、108部門中96位と下位となっている。むしろ、畜産は生産誘発額が2.66で108部門中13位。このように経済波及効果を考えたら、農業を振興するよりも、畜産業を振興したほうが、裾野が広い効果が得られることが分かる。

 エネルギーについては、電力は生産誘発額が2.09で108部門中49位、ガス・熱供給に至っては、生産誘発額が1.71で

 医療・介護については、医療が生産誘発額が2.31で108部門中33位、介護が生産誘発額が2.07で108部門中53位。いずれも平均以上であるが、上位とは言えない状態である。

 観光については、産業部門が、運輸関係、宿泊業、小売業、飲食業など、複数にわたる。
 それぞれを考えてみると、まず運輸関係では鉄道輸送が108部門中82位、水運が101位、航空輸送が92位である(なお、運輸関係では自家輸送が11位と高いが、仮設的な産業分類なので無視したほうがよい)。宿泊業は108部門中51位、小売業(商業)は60位、飲食業(飲食サービス)は25位となっている。

 これらを考えると、1産業だけに需要が発生することはないとはいえ、飲食業が若干高いことを除けば、総じて波及効果としては大きいとは言えないだろう。言い換えれば、上記のような4つの産業に大きく影響はあるが、それ以外の産業への波及は小さいともいえる。
(計算のトリックで、運輸関係、宿泊業、小売業、飲食業でそれぞれ1の需要が発生すれば、経済効果は4つの部門の合計で生産誘発額は8程度となるが、運輸0.3、宿泊0.4、小売業0.2、飲食業0.1といったように按分して考えれば、そう大きくはない)


まとめ

 以上から、いわゆる成長産業と目されるような産業は、総じて経済波及効果は大きくない。

 逆に上記の述べたように、上位の産業を考えれば、自動車関連産業の経済波及効果が高い。

 産業政策自体は、産業間の取引構造など変えるといった部分もあるため、一概に言えない面もあるが、現在のアベノミクスにおいて、経済構造改革といった側面は弱い。

 このことを考えれば、現在の日本経済にとって、経済波及効果の大きさといった点では、やはり自動車関連産業が重要といえよう。








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