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古くて新しい地方創生人材支援制度


地方創生人材支援制度

 安倍政権は、地方創生を進めるに当たり、地方創生人材支援制度というものを設けている。

 これは、単純に言えば、国家公務員などを地方自治体に出向・派遣するというものである。
 そして、人材が不足する自治体に対して、施策の規格・立案、事業の実施などをサポートする。

首相官邸「地方創生人材支援制度

 すでに受け入れを希望する地方自治体の募集が行われ、いくつもの自治体が派遣を希望している。


古くからある制度

 しかし、このような国家公務員の地方自治体への派遣・出向は、目新しい制度ではない。

 総務省の資料によると、平成24年度には約1700人もの国家公務員が地方自治体に出向している。
 内訳でいえば、都道府県へは約1200人、市町村へは約500人となっている。

 そして、地方自治体に出向し、副知事・副市長村長、部長、課長として、業務を実施している。


新しい面

 とはいえ、目新しい面もある。

 1つは、従来から行われているが、しっかりと制度化したということである。何となく出向などが行われ、慣例化している面が強かったが、募集から実際の派遣まで、しっかりとした手続きが定められている。

 2つは、今回の派遣については、国家公務員だけではなく、大学や民間のシンクタンクの研究者なども対象としている。

 3つは、従来から地方自治体への出向は行われてきたが、都道府県や、比較的大きな地方自治体などへの出向がメインであったが、必ずしも、その規模は関係ないという点である。


この制度の良い点

 私はこの制度自体は、決して悪いものではないと思う。

 これまで、国家公務員などを受け入れたいと思っても、小さな自治体では、非常に難しかった。
 小さな自治体で国家公務員を受け入れるとなると、副市長村長など一定のポストを用意しなければならないという意識があった。また、うちのような小さな自治体に来てくれるのかといった点もある。

 しかし、今回の制度により、その部分がクリアになった。

 その結果、いくつもの自治体で派遣してほしいという手が挙がっているのだろう。
 言い方を変えれば、都道府県などでは希望がないのは、今さら派遣してもらう必要がないためであり、希望する自治体が小さな自治体が多いのは、これまで派遣・出向してほしいと思っていても、その規模の小ささゆえ、難しい面があったためであろう。


問題点

 ただ、そもそも、国家公務員が地方に出向し、地方自治体の要職に就くというのは、問題でもある。

 当然ながら、プロパーの職員がある程度の地位の役職に就く機会が減り、人事的な面で問題がある。
 また、国家公務員が地方自治体に出向する自体、現在の地方分権という流れの中、逆行するような面もあるだろう。

 特に、なぜ自治体が国家公務員の受け入れを希望するかといえば、国とのパイプづくりである。
 明示的ではないが、少なくとも暗黙的には、その国家公務員を通じて、国の予算を自分の自治体に引っ張ってきてもらうために、国家公務員を受け入れているのである。

 言い方を変えれば、中央集権的で、予算や権限を国が握っているため、このような受入れが成立しているのである。

 また、人材のミスマッチもあるだろう。
 地方創生人材支援制度において、地方自治体が希望する人材を見ると、複数の分野にわたっていることも多い。

 しかし、省庁の縦割りがある中で、そのような複数の業務に精通している人は、多くはないだろう。

 今回の制度で派遣される国家公務員は、公務員経験が5年以上15年未満の人材である。国の役職でいえば、課長補佐クラスであり、総合的な業務を行っている人も多くはない。
 また、優秀な人も多いだろうが、業務の内容としては、実務よりも、政策・企画立案などを多く行っていることを考えると、ミスマッチも多くでてくると思う。


まとめ

 上記で述べたように、私は、この制度自体は、悪い制度ではないと思っている。
 なぜなら、小さな自治体は、人材が不足している。能力云々は別として、2000年代以降、行革などで人員削減を行ってきたため、人員数自体として、余裕がある自治体はほとんどないだろう。
 その点で、総合的な政策立案能力、専門的な業務知識を有するような人材を、小さな自治体に派遣するということはいいと思う。

 しかし、上記のようにミスマッチが生じるだろうし、単なる「金づる」という点で国家公務員を受け入れるのは、問題があると思う。

 つまり、本来的には良い制度ではあると思うが、地方分権が行われていない中では、ある種の歪みをもった形にならざるを得ないとも思うのである。







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