自治体では、少子化対策などから、子育て支援を実施している企業を認定しているところがある。
そして、「岐阜県子育て支援企業登録制度」に登録されると、次のようなメリットが受けられるというものだ。
- 県HPなどでのPR
- 低利融資(利子補給)
- 建設工事おける入札参加資格の加点
- 仕事と家庭の両立支援アドバイザーの派遣 など
このような取り組み自体は、珍しいものでは決してない。HP等によるPRや低利融資は、どこの自治体でも一般的によく行われている。
例えば、栃木県では「とちぎ働きやすい企業」という制度を設け、県としてPRを行っている。
ただ思うに、これらのものは、少子化対策や福祉対策として行われていることが多く、雇用の視点が欠けている。
確かに、現状の制度でも、このような認定を受けている企業で、働きたいと思う人はいると思う。
しかし、働く人の立場からすると、自治体のHPなどだけに掲載するのではなく、職安などと連携して、PRを行うべきだろう。
また、子育て支援なども重要だが、ブラック企業などが話題となるような現状を考えると、そのような面での認定も重要だろう。
賃金などは仕方がないとして、(サービス残業は勿論として)残業の有無や有給休暇の消化率、離職率、解雇状況、従業員教育など、違う形で評価した制度を整えることが考えられる。
認定基準にしても、本当に働く人の立場から、考えられているのかも疑問であり、しっかりと見直す必要がある。
下は、上記の岐阜県の「岐阜県子育て支援エクセレント企業」の登録要件である。子育て支援している中でも、優良な企業を認定する制度であるため、ハードルが高い部分もあるが、どうも感覚的にずれているような気がする。
例えば、働く人の立場からすれば、育児休暇が取りやすいか、実際にとられているいるかが重要だが、それは選択要件に入っており、逆に必須要件には、「一般事業主行動計画」などが入っている。
働く人にとっては、計画や規則などの前に、実際にどうなのかのほうが重要なはずだ。
【必須要件】以下の全ての要件を満たすこと。
①常時雇用する従業員数が100人以下の企業であること
②一般事業主行動計画を策定していること
③改正育児・介護休業法に基づき、育児休業制度・子の看護休暇制度等を就業規則等に整備していること
【選択要件】 カテゴリー1及びカテゴリー2の項目で、合計6点以上の点数を得ることができること(各カテゴリーで要最低2点以上)
■カテゴリー1 育児休業が取りやすいなど従業員の育児を応援する取組
①子育て家庭が働きやすい環境づくりなど家庭、地域を応援する取組の内容
②他社の模範となるオリジナルな取組を実施していること *オリジナルの認定は県又は県委嘱の社会保険労務士が判断
③育児休業を取得し、取得前と同待遇で復帰した女性従業員が複数いること又は、女性従業員が複数年度でいること
女性従業員の育児休業取得率が90%以上であること
④男性従業員で3日以上育児休業を取得した者がいること、又は同年度内に取得予定の者がいること
育児による退職者の再雇用制度があり、雇用の実績があること
⑤事業所内保育所または同様の施設を有していること
⑥法律を超える従業員の育児を支援する制度を有し、同制度の利用者がいること
⑦他社の模範となるオリジナルな取組を実施していること *オリジナルの認定は県又は県委嘱の社会保険労務士が判断
■カテゴリー2 子育て家庭が働きやすい環境づくりなど家庭、地域を応援する取組
①従業員の育児を応援する取組の内容
②従業員1人あたりの年次有給休暇の取得率が50%以上であること
③早く家庭に帰る日(8のつく日)を実施していること又は週1回以上、ノー残業デーを実施していること
④子ども参観日を年に1回以上実施していること
⑤父親の育児参加(お父さん頑張って講座、企業内家庭教育研修の受講等)又は孫育てを支援する取組を実施していること
企業にとってメリットとしてCSRなどもあるが、この分野で考えるならば、採用という面でメリットを与えるべきである。自治体が認定することで、人を採用しやすい、良い人材が集まりやすいというメリットを付与すべきであろう。
現状は企業・従業員両方にとってメリットが少なく、もっとこなれた制度設計が必要だと思う。
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