スポンサーリンク

経済効果に注意せよ!

スポンサーリンク

最近、言われることが多い経済効果

 最近、よく経済効果という言葉が聞かれる。
 あることを実施したときに、その事象に対してどれだけお金が落ちたかということを観測するという点で、観光からゆるキャラまで、様々なことで使われている。

 一般に、施策評価や事業評価などにおいて、必要性や有効性などの概念でその評価がなされることも多いが、指標ツールの手法として、次の3つの視点で、評価が行われることがある。

  • インプット(input):どれだけ資源・リソースを投入したか
  • アウトプット(output):どれだけ実施したか
  • アウトカム(outcome):どれだけ効果があったか

 そして現在、税金の使われ方も問題とされる中、アウトカムが問われることも多く、経済効果を問われることが多くなっているのだろう。

 しかし、この経済効果というものは曲者であり、誤りを招きやすく、注意が必要だ。


経済効果の注意点

 経済効果といった場合、この概念や計算手法などは、それぞれの自治体・団体などで異なるため、単純にその数値を信じてはいけない。
 この意味で、経済効果というものについてもリテラシーが必要なのだが、注意点としては、次のようなものがあると思う。

①計算手法
 計算手法は発表する自治体・団体などで異なり、その手法で大きく数値が異なるため、注意が必要だ。
 このとき、手法としては、大きく分けて2つの手法が使われている。

 1つは、直接効果のみの場合である。
 これは、人数×使ったお金という部分だけを抽出して、計算したものだ。例えば、観光を考えれば、5000人の観光客が来て、1人あたり1万円を使えば、経済効果は5000万円というわけだ。

 計算手法としては、シンプルであり、比較的信頼の置きやすい手法である。
 ただ、波及効果が考慮されていないという点で、過少的な効果である。例えば、ある観光客がお土産店で1万円を使ったとき、そのお土産店の店主がその地域で6000円使ったとすれば、その分の経済効果が生まれるが、この手法ではこのような面は考慮されていない。

 もう1つは、上記のような点を考慮し、波及効果も織り込んで、計算する手法である。一般的には、専門的になるが産業連関表などが使われている。産業連関表とは、産業ごとの取引関係を示した統計データで、この表を使えば、波及効果も計算できる。上記の例でいえば、お土産店の店主がその地域で使った6000円分の経済効果も織り込むことができる。

 ただこれにも注意が必要だ。テクニカルには、生産関数が特殊(線形性)、波及効果がどれだけ連鎖するのかといった点もあるが、何よりも計算が複雑になるので、恣意性が入りやすい。

 具体的には、観光の例でいえば、観光客1人当たりで、宿泊業に10000円、お土産店(小売業)に3000円、飲食店に2000円使ったなどとして、計算が行われる。そうすると、いろいろな数値が使われることにもなり、扱われるデータも増えるため、データ操作が容易になる。

 分かりやすい例としては、東京オリンピックの経済効果について、数億から数百億まで、機関によって数値が異なったが、このようなデータの取り扱いや範囲で異なったためである。この点は、上記の直接効果だけの場合でも生じるが、計算が複雑になるため、数値の操作がしやすくなる。


②規模感
 一見すると、すごいような金額だが、経済効果としては、どうなのかという場合もある。

 例えば、経済効果10億円というとすごいような気がするが、会社でいえば、従業員数が数十名の中小企業もその程度の売上は誇っている(更に卸売業などではもっと従業員数は少なくなる)。
 言い換えれば、一生懸命頑張って、経済効果10億円をもたらすよりも、企業誘致で中小企業を1・2社、引っ張ってきた方が、効果としては大きい場合もある。
 
 また、特に中小企業の場合には、売上はふり幅が大きい部分もあるので、ちょっとしたコンサルで、売上が変わったり、費用が変化して、数百万円から数千万円の利益(経済効果)を出すことも可能だ。
 ならば、数名の組織を作り、事業を頑張るよりも、このようなことを積み重ねたほうがいいこともあるだろう。


③広がり
 上記の波及効果とも関連するが、いくら経済効果があっても、一部の人にしかその利益が落ちなければ、地域としては問題があるとも言えるだろう。

 ある施策を行った結果、ある飲食店が儲かったとしよう。しかし、その食材をその地域以外のところからしか、仕入れていなければ、その儲けはその店主(従業員)にしか、還元はされない。

 別の目的を以て、狙ってこのような効果を得ることも可能だが、ある面では、やはり施策としては失敗ともいえる。


(④税収)
 最後に、おまけとして、注意すべき点は税収だろう。
 厳密には、税収というよりは、税収という形で行政としてリクープ出来るような形がポイントだ。

 行政といえども、お金が必要であり、施策などを行った結果、税収アップが期待できることが望ましいし、その方が事業の継続は可能となる。

 例えば、町村において、ある施策を実施した結果、売上が1億円というよりも、1億円の施設を作ったほうがいいという場合があるだろう。理由としては、町村においては、(厳密に計算はしていないが)法人住民税よりも固定資産税のほうが税収が大きかったりすることもあるからだ。

 そして、このように税収が期待でき、財源が捻出できれば、事業としてはやりやすい。この意味で、このような視点は忘れてはならない。


結論

 以上のように、経済効果というものについては、注意が必要だ。
 経済効果を算出すること自体は否定はしないが、それを見る側として、リテラシーが要求される。

 数値に踊らされることがなく、しっかりとその数値を読み解く能力や判断する力が必要だと思う。

コメント