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インキュベーション施設は必要なのか?

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 中国電力が、起業家支援施設を閉鎖するそうだ。
 独身寮を改装して、起業家支援施設として、オフィスを提供してきたが、赤字が続いており、本業とは関係の少ないこの施設は閉鎖されるという。

外部リンク2013/10/04 日本経済新聞中国電、起業家支援施設を閉鎖


 このように起業家支援の施設がなくなってしまうことは悲しいことである。ただ、電力会社がこのようなことを行うのは、本業とは無関係であり、本業の収益が悪化する中では、致し方ないことだと思う。

 一般に、起業家支援施設はインキュベーション施設とも言われている。インキュベーションとは孵化という意味で、卵が孵るように、起業家を生み出す施設である。具体的には、低家賃のオフィスを提供している場合も多いが、その効果としては、施設によっては信用が賦与されたり、起業家間の交流が図られるというものである。また、インキュベーションマネージャーが、事業計画策定など、様々なサポートを行う場合もある。
 2000年代に全国各地で作られ、公的な施設は勿論、民間でも企業化支援を謳ったものも多い。

 しかし思うに、インキュベーション施設は、今の時代、本当に必要なのか、必要だとしてもその役割は変わるべきではないかと思う。

 1つは、インキュベーション施設は、国は勿論、自治体・民間などでも作られた結果、過剰となっている場合がある。民間オフィスの賃料が下落してきた中、賃料ということではあまり差別化ができなくなり、入居率がよくない施設があることも事実である。

 2つは、上記のようにインキュベーション施設は、低家賃以外の付加的な効果も言われているが、実際はそのような効果がほとんどないことも多い。低家賃を目的とした入居者にとって、起業家間の交流やインキュベーションマネージャーのサポートなどは不要である。また、これらが大きな企業の成長につながったという話は、少ないことも事実である。

 そもそもインキュベーション施設の役割として期待されたのが、オープンなネットワークの形成であろう。分かりやすく言えば、通常、起業しても、ネットワーク作りは容易ではない。しかし、インキュベーション施設のような場を提供することで、起業者間でネットワークが作られたり、起業者をサポートする人とのつながりを生み出すことにあったのだろうと思う。

 しかし、上記のように低賃料目的の起業家がいては、このような効果は期待できないし、オフィス賃貸という点で、現在、サービスも多様化し、低価格のものも出てきている中で、従来型のオフィスを貸し出すといったインキュベーション施設は、重要性が少なくなっているのかもしれない。特に、クラウドサービスも発達しており、どこでも仕事ができる時代でもある。この点で、インキュベーション施設の役割も変わっていいのかもしれない。

 そこで中には、従来型のオフィスの貸出も行っているが、フリースペースのみを提供している施設もある。オープンスペースの中で、席なども決まっておらず、パソコン1台もってくれば、仕事ができるような施設である。
 勿論、このようなところでは、会社を設立しても登記ができなかったり、特に現在、銀行は非常に新規口座開設について厳しくなっているので、法人口座を開けない可能性もある。

 しかし、インキュベーション施設がもてはやされて、10年近く。
 特に、公的なインキュベーション施設においては、従来型の箱モノのオフィス貸出を続けているところが多い。
 この点で、もう一度、インキュベーション施設の在り方について、見直したほうがいいのかもしれない。

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