岐阜県で、指定金融機関の交代について、議案が提出されているそうだ。
具体的には、現在、十六銀行が指定金融機関となっているが、大垣共立銀行に変更せよという議案が提出されているということである。
2000年・2005年にも提出され、今回は3回目だそうだが、正直、このニュースを見るまでは、岐阜県でこのようなことが起こっていることは知らなかった。ただ、率直な感想として、このようなこともありうるのだなという印象で、全国的にも非常に珍しいだろう。
そもそも指定金融機関とは、行政のお金を支出したり、受け入れたりする金融機関である。これらの金融機関以外でも取り扱いはなされているが、あくまでも代理であり、メインは指定金融機関が行う。また地方債の引受けや一時借入金などでも重要な役割を果たし、小さな話では、職員の給与の中心は指定金融機関で取り扱われる。簡単に言えば、自治体にとってのメインバンクが指定金融機関ともいえよう。
そして、通常ほとんど変わることはない。正直、指定金融機関が代わったという話を聞いたことがないし、それが問題になったことも、岐阜県を除けば、ほとんどないだろう。
にもかかわらず、今回のようなことが起こるのは、非常に驚きである。特に近年は、指定金融機関になったとしても「うまみ」は少なくなっていると言われ、金融機関としてはメリットは薄れているというのが実態である。
(政治家と金融機関の癒着ということをいうつもりはないが)大垣協立銀行が指定金融機関になりたいと思わなければ、このような問題が生じないことを考えると、この問題は非常に異例といわざるをえない。
このとき、大垣共立銀行にとってのメリットは何かといったら、公金を取り扱うことによる資金ボリュームのアップであり、代理から指定への変更によるコスト削減、そして何より地域の金融機関としての信用力アップということになるのかもしれない。
そして実際を考えると、次の表のように、両金融機関は伯仲しており、十分に大垣共立銀行が指定金融機関になる資格があるとも言えよう。
店舗数 | 預金(億円) | 貸出金(億円) | |
---|---|---|---|
大垣共立銀行 | 147 | 38,146 | 30,763 |
十六銀行 | 147 | 42,811 | 33,040 |
ここで問題なのは、岐阜県以外の都道府県である。
他の多くの都道府県では、金融市場が序列化・硬直化しており、逆に岐阜県のような競争性を発揮できない状態にあるともいえる。
金融市場は非常に規制が強い業界であり、金融庁の役割は重要である。しかし金融庁は、バーゼル・消費者保護・円滑化法などといったキーワードの元、その場限りの金融行政しか行えなかった。ここには、様々な観点から金融市場をどうしていくのか、マーケットメイクをどうするのかといった視点が欠けていたのだろうと思う。そして、国内の民間・市場にどうしっかり資金を供給していくのかといった視点がなく、その結果の一つが、「失われた20年」だったと思っている。
岐阜県のような話は非常に珍しいが、むしろ常態化すべき話でもある。地域の金融市場がどうあるべきなのか、どうすべきなのか、金融庁がしっかりと考えるべきだと思う。そして、その能力がないならば、各地域は地元ののために、金融庁の功罪をしっかりと把握し、対策を練るべきだと思う。
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