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地方分権は盛り上がらない…。だけど、地方分権で地方はよくなる。

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地方分権が盛り上がらない

 何年も前から地方分権が言われているが、はっきり言って地方分権は盛り上がらない。

 理由は単純で、地方分権による国民の利益が見えないことである。地方分権をしても、暮らしや社会がよくならなければ意味がない。先般の民主党政権のように、政権交代を果たしたにもかかわらず、暮らしや社会が悪くなったのでは意味がない。勿論、地方分権を進める側においては、ビジョンを示すことが重要である。しかし、まじめに考えれば、地方分権を進めれば、よくなる場合もあれば、悪くなる場合もあるというのが正直な感想だろう。

 また、そもそも人間は、保守的なものである。何かを行う際には、絶えずリスクがあるが、それは合理的ではない。行動経済学の世界で、プロスペクト理論の価値関数というものがある。簡単に言えば、人間は利益を得ることについては価値を過小評価し、損失を受けることについては過大評価するというものである。すなわち、ある種の非合理性によって、地方分権の効果は過小評価され、地方分権を進めようという気にはなれない。

 しかしそれでも、私は地方分権で地方は良くなると考えている。


だけど、地方分権で地方はよくなる

 まず、地方分権をした場合、良くなる地方と悪くなる地方が出てくるのは間違いない。統計学・マーケティング的に考えると、全く良くなる地方はないという状態はありえない。統計学的には必ず異常値は存在し、マーケティングにおいてはその異常値の概念のもとにボリュームを増やしたりして、リクープを図る(ネットでいえば、コンバージョン率を上げることは重要だが、通常のコンバージョン率を想定し、ボリュームを増やすことで、収益が成り立つ構造を作ることである)。そして、異常値として1%と見積もっても、自治体の数は約1800なので、少なくとも20弱の地方分権により、良くなる自治体が生まれる。

 そうすると、他の自治体では、どうして自分のところが良くないのかという問題が生じる。その結果、うまくいっている自治体などを模倣して、底上げがなされる。そして、うまくいっている自治体をベースに、地方分権が進んでいくことになる。

 ただし上記のような楽観的シナリオを実現的なものにするには、幾つかの必要条件がある。

①首都圏・関西圏といった豊かな自治体以外の成功事例
 首都圏・関西圏といった豊かな自治体で成功しても、それ以外の自治体は、「都会だから」という特別な意識を持つので、模倣が生じない。その意味で、首都圏・関西圏といった豊かな自治体以外で、良くなる地方を生み出すような、地方分権の制度設計をする必要がある。例えば、交付税の配分ウエイトを変えるなど、工夫が必要だ。

②自治体間の比較の仕組み
 地方自治体は、あまり他の自治体について、比較を行っていない。比較を行っていても、上記のように「比較先は特別だから」という意識が合ったり、自分のところは正しいということを証明するために比較を行う。そこで、しっかりと比較を行う仕組みを導入し、環境などによる特別要因ではなく、原因は行政サービス・行政運営などによるものだと挙証する仕組みが必要である。

 そしてこれらの仕組みができれば、一時的には悪くなる自治体があっても、地域の住民・議会の圧力のもと、地方分権により地方は良くなっていくはずである。


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