市町村によって、国民健康保険は異なります。
このことについて、書きたいと思います。
国民健康保険は税金
病気になったときなどに使う健康保険。
ただ、健康保険といっても、様々なものがあります。
- 組合健保 … 主に大企業などの従業員が加入しているもの
- 協会けんぽ … 主に中小企業の従業員が加入しているもの
- 船員保険 … 船員が加入しているもの
- 共済組合 … 公務員が加入しているもの
- 国民健康保険 … 自営業者や無職者などが加入しているもの
このうち国民健康保険の保険者は市町村で、市町村により保険業務が行われています。そして国民健康保険で支払うお金は、一般的に保険料と言われていますが、多くの場合、地方税法に規定された税金です。
一 都市計画税
二 水利地益税
三 共同施設税
四 宅地開発税
五 国民健康保険税」(地方税法5条6項)
市町村によって異なる国民健康保険
地方税といった場合、他の税金では標準税率などが定められており、自治体によって大きな差がありません。
しかし、国民健康保険は市町村によって大きく異なります。
理由はまず、市町村ごとにどのくらい療養費などがかかるかを計算します。その上で、ざっくりいうと、歩合率を掛けたり交付金などを差し引いた額がその市町村の保険料総額となります。そのため病人や高齢者など病院に行く人が多い地域と少ない地域では、療養費総額が異なります。
その上で、市町村の保険料総額について、どのような形でお金を徴収するかを選択できます。
具体的には、下のような3つのパターンが標準割合となっています。
所得割総額、資産割総額、均等割総額、平等割総額 | 所得割総額 40%、資産割総額 10%、均等割総額 35%、平等割総額 15% |
---|---|
所得割総額、均等割総額、平等割総額 | 所得割総額 50%、均等割総額 35%、平等割総額 15% |
所得割総額、均等割総額 | 所得割総額 50%、均等割総額 50% |
ここで所得割・資産割とはその名の通り、所得や資産の額に応じて徴収するものです。
均等割とは加入者の人数によって、平等割は世帯に対して課されるものです。
前者の所得割や資産割はその人の支払能力を重視し、均等割・平等割はある種平等に、悪く言えば人頭税で低所得者には負担の重いものです。そして、このパターンが変わると、保険料も変わってきます。
このような仕組みであるため、住むところが変わると国民健康保険も変わってきます。
地域でどのくらい違うのか?
そうなると気になるが、地域でどのくらい国民健康保険料が異なっているかです。
市町村ベースで調べられたものはありませんが、都道府県単位に指数でまとめたものがあります。
厚生労働省「平成22年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」
これは、都道府県ごとに、応能割指数 応益割指数というものを用いて、どのくらい地域間で違いがあるかを分析しています。
応能割指数とは、上記の所得割・資産割で出された指数で、この指数が高いほど、高所得者・中所得者から保険料を多く徴収していることを表しています。
逆に、応益割指数は上記の均等割・平等割にウエイトを多くおいており、低所得者からも広く保険料を徴収しようとしていることを示しています。そして、全国を1として、都道府県ごとの違いを調べています。
下表は、それぞれの指数について、上位5位・下位5位を掲載したものです。
いずれの指数も、首都圏など大きな都市では低い傾向がありますがが、応益割指数では沖縄が2位になるなど、それぞれの地域によって大きく異なっているが分かります。また、応益割指数よりも応能割指数のほうが都道府県の違いが大きいです。
応能割指数 | ||||
---|---|---|---|---|
高い順 | 低い順 | |||
応益割指数 | ||||
---|---|---|---|---|
高い順 | 低い順 | |||
これを見て思うのが、これが地方分権が進んだ場合の一つのケースなのだろうと思います。
勿論、この国民健康保険にしても、まだまだ規制があり地方分権が進んでいるとは言い難いですが、このように違いが出てきます。そして上記で述べたように、健康を推進して療養費などがかからないようになれば、国民健康保険料は下がります。つまり、自治体の努力が住民への負担軽減につながることにもなります。
住民の状況に応じた料金プランの提示、自治体の努力による料金引き下げ。これは住民にとって分かりやすく、地方自治という観点で重要です。
コメント