概要
事業を行う上で、どのくらいの在庫をもつかは非常に重要だ。
例えば、小売業で、売るものがないという状況は避けなければならないが、在庫が多いということは、それだけの商品を仕入れておく必要があり、より資金が必要になる。
そのため、商品を仕入れたら、できるだけ早く売れるという状況が望ましい。
このような在庫の状況を財務的に判断するのが、棚卸資産回転期間という経営指標である。
棚卸資産回転期間は、月で換算すると、次のような式になる。
棚卸資産回転期間 = 在庫 ÷ 売上 × 12 (ヶ月)
この式を用いることで、その企業が何ヶ月分の在庫をもっているかを計算できる。(資金繰りといったとき収支ずれも重要となるが)財務的に言えば、この期間は短い方がよいし、長いとそれだけ資金がかかっていることを意味している。
都道府県別の回転期間
通常、棚卸資産回転期間に違いが出るのは、業種による違いである。
例えば、食品などは賞味期限などがあるため、回転期間は短くなるが、文房具などはそのようなものがないので、回転期間は長くなる。
そして、あまり地域性というものは少ないと思っていたが、改めて、都道府県別のデータを調べてみると、面白いことが分かる。
下表は、平成24年経済センサスを用いて計算した都道府県別の小売業の回転期間(日数で換算)である(順位は日数が短いほど上位としている)。
回転期間 | 順位 | |
---|---|---|
全国 | 31.0日 | |
北海道 | 30.2日 | 10位 |
青森県 | 35.5日 | 36位 |
岩手県 | 32.2日 | 22位 |
宮城県 | 27.8日 | 3位 |
秋田県 | 32.6日 | 24位 |
山形県 | 31.8日 | 20位 |
福島県 | 30.6日 | 12位 |
茨城県 | 31.5日 | 19位 |
栃木県 | 34.4日 | 34位 |
群馬県 | 34.2日 | 32位 |
埼玉県 | 28.8日 | 6位 |
千葉県 | 27.7日 | 2位 |
東京都 | 28.0日 | 4位 |
神奈川県 | 30.3日 | 11位 |
新潟県 | 33.1日 | 27位 |
回転期間 | 順位 | |
---|---|---|
富山県 | 37.8日 | 43位 |
石川県 | 32.7日 | 25位 |
福井県 | 36.4日 | 39位 |
山梨県 | 33.3日 | 29位 |
長野県 | 33.9日 | 31位 |
岐阜県 | 35.9日 | 37位 |
静岡県 | 30.9日 | 15位 |
愛知県 | 29.8日 | 7位 |
三重県 | 33.8日 | 30位 |
滋賀県 | 30.7日 | 13位 |
京都府 | 32.5日 | 23位 |
大阪府 | 27.2日 | 1位 |
兵庫県 | 30.9日 | 17位 |
奈良県 | 30.2日 | 9位 |
和歌山県 | 36.9日 | 41位 |
鳥取県 | 37.2日 | 42位 |
回転期間 | 順位 | |
---|---|---|
島根県 | 32.0日 | 21位 |
岡山県 | 34.3日 | 33位 |
広島県 | 31.0日 | 18位 |
山口県 | 33.1日 | 26位 |
徳島県 | 41.1日 | 46位 |
香川県 | 39.4日 | 45位 |
愛媛県 | 35.2日 | 35位 |
高知県 | 36.0日 | 38位 |
福岡県 | 30.1日 | 8位 |
佐賀県 | 36.5日 | 40位 |
長崎県 | 28.0日 | 5位 |
熊本県 | 33.2日 | 28位 |
大分県 | 30.9日 | 16位 |
宮崎県 | 30.9日 | 14位 |
鹿児島県 | 39.2日 | 44位 |
沖縄県 | 46.5日 | 47位 |
最も短いのが大阪府で27.2日、2番目が千葉県の27.7日、3番目が宮城県の27.8日と続いている。逆に回転期間が最も長いのは、沖縄県の46.5日で、トップの大阪府に比べると1.5倍以上の期間となっている。
ただ全般的に言えることは、首都圏や人口の多い都道府県で、回転期間は短く、上位にランキングしている。反面、人口の少ない県では、回転期間が長くなっている傾向が見られる。
地方のほうが資金がかかる?
人口が少ない県で、商品を販売しても、なかなか売れず、売れるための期間が長くなるので、回転期間という指標の長さにつながっている。逆に首都圏や人口の多い都道府県では、比較的早く商品が売れるため、回転期間も短くなっているのだろう。
ただ、上記で述べたように、回転期間が長いということは、それだけ長く在庫をもっていることを意味しており、資金も多く必要になる。
その点で、人口の少ない地方のほうが、小売業において、資金が必要だということを意味している。
私自身、回転期間において、地域性というものをあまり考えなかったが、このことを考えると、小売業において、どうも地方のほうが回転期間は長く、より多くの資金が必要といえるのかもしれない。
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