昨日、「百貨店の撤退と不毛な創業支援」で、現在の政府の創業支援について、問題点を述べた。
ただ、大きな方向性は間違っていると思うが、手法としては正しいと思っている。
現在の創業支援の中心は、創業する人に対して補助金を出すという「創業補助金」がメインメニューである。
中小企業支援の国の補助金としては、これまでのものに比べて200万円と小さな金額であるが、創業時のお金が必要なときにお金がもらえ、採用件数も多いので、人気である(ただ、このような事情もあり、逆に数倍と倍率は高くなっている)。
創業支援自体はこれまでもあったし、施策としては決して珍しいものではない。例えば、今はなくなってしまったが10年・20年前に「中小企業創造活動促進法」という法律で、ベンチャー支援も行われていた。これは、バブル経済崩壊後の新たな企業・産業を創出するため、新たな技術を支援しよう、ベンチャー起業の育成が重要であるといった認識から行われたものである。
今回の創業支援は、中小企業創造活動促進法のように特別な技術等がなくても支援が受けられ、金額も小さいが採択件数が大きいというものとなっている。
現在の中小企業支援の「ものづくり補助金」と同様に、はっきり言えば、政府は中小企業支援のためにバラマキを行っているのである。
ただ「バラマキ」というと悪いイメージを持つかもしれないが、現在においては誤りだ。
高度成長期などは、これからの成長産業などは読みやすく、そこに重点的に支援を行えばよかった。しかし現在は、どのような企業・産業が成長するか分からない。特に現在は、技術だけではなく、そのサービスや仕組みなど、様々な要素が差別化のポイントとなり、それが企業・産業の成長と結びついている。例えば、ユニクロなどを見れば、特別な技術等を利用した製品を販売しているわけではない。海外で生産を行い、安い衣料を提供するという仕組みで成長したのである。
現在は、何が企業・産業の成長に結びつくかは、読みにくい時代である。
そして、何がうまく行くか分からないときは、分散投資が最適な戦術である。一つの企業・産業に対して、一点買いするよりも、ポートフォリオ的に分散したほうが、リスクを減らすことができる。
現在の政府が行っている創業支援は、バラマキ的な要素があるとともに、ある種の分散投資を行っているのである。
このように、「バラマキ」という言葉のイメージで言えば、悪い感じもするが、どうなるか分からない状況では、分散投資(=バラマキ)が正しい。
勿論、分散投資といっても何でもかんでも投資するわけではない、ポートフォリオ理論の眼目は負の相関・無相関にあるなどといった点も考えられる。
しかし、選択の要素が強くなると、「成長分野は何だ」という話になり、結局は役所の思考の枠内にある企業・産業しか支援は行われない。また実務的には、いちいちポートフォリオなどを考えて、役所は仕事を行っている暇はない。
このように考えると、バラマキと言われようが、とりあえず何でもかんでも支援することが必要である。そしてバラマキを行えば、そのイシューについては、盛り上がりをみせることができる。今回の創業については、創業補助金などの形でばら撒くことで、「創業」自体が盛り上がるのである。
現在の日本は、社会的にも経済的にも、成熟している。
このような時代にあっては、何かを選択したり、1点買いなどを行うのではなく、とりあえず唾をつけることが必要だ。
この意味で、薄く広くといった「バラマキ」こそ、現在の中小企業支援において、必要なことである。
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