概要
先月、「特許法等の一部を改正する法律」が閣議決定され、現在、参議院で通過、今後衆議院での審議が予定されている。
その中、ちょっと気になっているのが、商標法の改正だ。
そしてこの改正のポイントは、「保護対象の拡充」と「地域団体商標の登録主体の拡充」の2つである。
保護対象の拡充
これは、商標法の保護対象として、色彩や音が追加されるというものだ。
色彩や音というとイメージが付きにくいが、経産省のホームページの例示を見ると、色彩についてはトンボの「MONO消しゴム」、音については久光製薬の「ヒ・サ・ミ・ツ!」というCMなどに使われているものが挙げられている。
他国で保護対象となっているということから、保護対象を拡大するということである。
確かに、上記のようなものは、その企業のトレードマークになっている部分もあり、保護するに値すると思うし、今回の措置は妥当だともいえる。
ただ逆に考えれば、ちょっとしたことでも、商標登録せず、他の人が商標登録をしてしまえば、自らが使えなくなることも意味する。また、トンボの「MONO消しゴム」のようなものも保護対象となると、故意でなくても、ちょっとしたことで商標を侵害してしまうことになりかねない。
実際の細かな運用は不明であるが、フラットファイルからテレビの色など、身の周りにあるものはどうなるのか、お笑い芸人のギャグなどはどうなるのかなど、ちょっと気になってしまう。
地域団体商標の登録主体の拡充
これは従来、地域団体商標の登録について、事業協同組合などに限定されていたものを、商工会やNPOなども登録できるようにしようというものである。
ご当地グルメなどは、商工会やNPOなどが主体となって開発・PRされたりしている。しかし現状はこのような団体のものは保護がされない点を考えると、保護を認めていくことも理解ができる。
ただ、加入に関して気になる点がある。
従来から認められてきた事業協同組合などにしても、今回認められるNPOにしても、原則としてその会に加入することを拒むことはできない。
第14条
「組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は、正当な理由がないのに、その加入を拒み、又はその加入につき現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない。」
特定非営利活動促進法第2条第2項第1号イ
「社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。」
しかし実際は、事業協同組合などのほうが、加入・除名などの制限を加えやすい。
例えば、次はいずれも徳島県が公表している定款の見本で、加入に関する部分を抜粋したものである。
「第9条 組合員たる資格を有する者は、本組合の承諾を得て、本組合に加入することができる。
2 本組合は、加入の申込みがあったときは、理事会においてその諾否を決する。」
特定非営利活動法人
「第7条 会員の入会については,特に条件を定めない。
2 会員として入会しようとするものは,理事長が別に定める入会申込書により,理事長に申し込むものとし,理事長は,正当な理由がない限り,入会を認めなければならない。
3 理事長は,前項のものの入会を認めないときは,速やかに,理由を付した書面をもって本人にその旨を通知しなければならない。」
事業協同組合の場合には、加入に当たっては理事会の承認が必要だが、NPOの場合には原則として認める必要がある。
このような背景には、事業協同組合などでは判例等で「正当な理由」が示されているのに対して、NPOでは「不当な条件」が示されておらず、加入制限をしてはいけないという点で、厳しい運用がなされているためなのだろう。
いずれにせよ今回の改正で、NPOなどが商標を取得した場合、加入制限が難しいことを考えると、実際に商標権が守られるのか、取得したNPOで問題は生じないのか、気になってしまう。
最後に
最終的には運用にかかっている部分もあり、今後次第だと思う。
そして常識に反するような運用はなされないと思うので、大きな影響はないとも思う。
ただ、ちょっと気になる法律改正である。
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