スポンサーリンク

無意味な通年議会?

スポンサーリンク

通年議会廃止

 長崎県で、通年議会が廃止された。
 通年議会とは、この言葉の通り、年中、議会を開いているというものである。しかし、「県議の地域活動が制限され、県職員の負担が増えた」ということで、廃止に至ったようだ。


通年議会のメリット・デメリット

 一般的に、通年議会に関して、次のようなメリット・デメリットが言われている。

【メリット】
 メリットとしては、幾つかあるだろうが、簡単にまとめると、次の2つになるだろう。
 1つは、迅速な議会対応ができるというものである。勿論、災害などの緊急時の対応のため、臨会なども予定されているが、より迅速化が期待できる。
 もう1つは、専決処分を少なくできるという点だろう。専決処分とは、緊急時などにおいて、首長が議会の議決を経ずに、議決事項を決定できるというものである。

引用地方自治法 第179条
第179条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第百六十二条の規定による副知事又は副町村長の選任の同意については、この限りでない。
2 議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
3 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
4 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。

引用地方自治法 第180条
第180条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。
2 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。


【デメリット】
 逆に、デメリットとしては、行政等の事務負担が増えるという点にある。
 議会が行われれば、議員の先生はもとより、行政的には事務が増える。よく国では「国会待機」という言葉があるが、議会があれば、対応するため、質問に対する対応はもとより、いざ質問が出たときのために待機も発生する。これは、国会だけではなく、地方議会でも同様だ。議会対応のため、職員は待機をしたり、質問が出たら、その対応が迫られる。


通年議会の幻想

 以上のように、メリット・デメリットがあるが、現実的には、あまり関係ない。
 なぜなら、通年議会といっても、議会運営においては、大きく変わらないからだ。

 通常、年4回の議会の会期があり、その他、委員会がある。そして、通年議会といえども、基本的にこのようなパターンで動いているため、通年議会とは名ばかりで、行政運営上、そう大きな影響はない。「通年議会」という言葉から、一見すると、ずっと議論をしているような印象だがそうではない。

 また、上記のように、災害時などの緊急時対応なども通年議会のメリットとして挙げられるが、大規模な災害が発生した場合、行政機関としてはその対応に追われ、議会どころではない。むしろ、議会が開催されると、その対応も図らなければならないため、行政運営に支障を来すことになる。議会に諮らなければならないことがあっても、その準備のため、それなりの時間もかかる。

 例えば国でいえば、実際、東日本大震災が起こったとき、衆議院は会期中であったが、議事が行われたのは、被災の3月11日からおおよそ1週間たった3月17日。法案も、2案に過ぎず、大きな対応ができたとはいえない。

 専決事項についても、首長による濫用を防ぐ必要があるが、条例などで定めておけばいい話である。むしろ、このような話を考えるのが、議会の「専決」的な話だと思う。

 以上のように、通年議会と言われるが、はっきり言って、無意味である。
 通年議会という言葉に踊らさせ、通年議会という言葉から民主的なイメージを持つかもしれないが、これこそある種のデマゴーグである。


通年議会は必要?

 とはいえ、私は全く通年議会を否定しているのではない。むしろ、一般的な議会の在り方と通年議会の中間を考える必要があると思っている。

 通年議会の胆は、そのスピード・時間である。
 時間を掛けなければならないものは、じっくり審議すればよいが、時間をあまりかけずに早く決める必要がある事項については、対応が必要だ。

 その点で、上記のように災害対応などははっきり言えば、誤りである。
 しかし例えば、契約関係などは、もっとスムーズに行ったほうがいいこともある。ある一定金額以上は、議会の議決が必要となる。そうすると、折角入札などを実施しても、年4回の議会の関係で、最悪3カ月のスパンが必要だ。

 例えば、4月に入札を実施しても、金額が大きいと、6月議会までは決定ができなくなる。また、用地の取得なども絡めば、金額が大きければ、それだけで議決事項である。そうなると、まずは6月議会で用地を取得し、9月・12月議会で実際の建設に関する議決が必要となる。
 更にいえば、金額が大きいと、設計時間も長くかかるし、地方自治法上、入札期間も長くとらなければならない。更に更に、国からの補助金などの場合には、交付決定で予算としての調停も必要だ。

 こうなってくると、大きなものを建てるには、この手続きだけで、何カ月も必要という話になってしまう。勿論、大きな支出なので、慎重な議論や審議は必要だが、重要なのは、それ以前の施策的な話であり、手続き的な話ではない。

 以上のように、通年議会なり、何らかの形でスムーズに行ったほうがいい議決事項もある。
 当然、議決事項の範囲・考え方を変えるということも可能だが、法令事項なので、自治体としてはいかんともし難い。

 この点で、通年議会は無意味だとは思うのだが、迅速化すべき点もあると思うのである。

コメント