格差は是正されている
政府の役割の一つに、富や所得の再配分機能というのがある。税や補助などを通じて、豊かな者から貧しい者へ富や所得を移転し、格差を是正するという役割で、分かりやすいものとして生活保護などが挙げられる。これを大都市と地方という図式でいうと、地方交付税などで再配分が行われている。例えば、他の道府県は地方交付税をもらっているが、東京都はもらっていない。その結果、国税などは東京都の人も払っており、地方交付税という仕組みで、東京都から他の道府県に所得が移転されている。
しかし、国から地方自治体に行くお金は、地方交付税のみではない。交付金・国庫補助など、様々な形で国から地方自治体に支出が行われている。そこでそれらの支出を総括し、地域間格差の是正が図られているかを分析する。
なお、データとしては総務省の自治体ごとのH22年度決算を用いて、国から支出されている地方特例交付金・地方交付税・交通安全対策特別交付金・国庫支出金・国有提供施設等所在市町村助成交付金について、これらの交付される前の状態(財政調整前)と交付された後の実際の歳入(財政調整後)を比較している(H23年度では東日本大震災があったため、東北地方に予算が多く配分されているなどの点もあり、通常時のH22年度決算を用いた)。また、都道府県・市・町村とこれらを都道府県ベースに合計したものについて、比較している。
分析結果としては、下図のとおりである。これはローレンツ曲線といわれるもので、不平等さ(格差)を表すものである。右上がりの緩やかな曲線になっているが、直線の45度線に近いほど格差が少なく、逆に弧が大きいほど格差が大きいことを示している。
図から分かるように、いずれも財政調整前よりも財政調整後のほうが弧が緩やかになっており、格差は小さくなっている。このことから、やはり国の地方への支出により、地域間格差は是正されていることが分かる。
とはいえ…、本当に是正といえるのか?
ローレンツ曲線やジニ係数という指標で見ると、格差は是正されているが、額で見ると違った姿が見えてくる。
下の表は、都道府県・市・町村、そしてこれらを都道府県ベースで合計したものについて、国からどれだけお金が行ったかを都道府県別にランキングしたものである。
町村では逆になっているが、都道府県・市・合計などを見ると、首都圏や関西圏の都道府県が上位にランキングしており、逆に地方の都道府県は下位にランキングしている。勿論、都道府県ごとに自治体の数が異なることによる影響もある(分かりやすいのは町村のランキングで、首都圏などでは町村が少なく、地方では町村が多いため、首都圏はランキングが下位に、地方では上位に来る)。
しかし、このランキング・数値を見ると、豊かなところはより豊かに、貧しいところは貧しいままという状況が浮かび上がってくる。
勿論、人口が違う、面積が違うなど、いろいろな意見は出るだろう。このデータはあくまでも一般財源だけを対象としているが、国からは地方の特別会計にもお金が流れているため、実際は数値が異なるという意見もあるだろう。また、地方の予算・決算には出ない部分で、国の直轄事業があり、その配分・箇所付けで異なってくる面もある。
しかし、最低の香川県と比べると、トップの北海道では約8倍、日本で最も豊かな東京都に4倍のお金が国から流れているという現実は忘れてはならない。
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