マクロ経済学などで出てくるTFPについて、わかりやすく解説しています。
概要
TFP(total factor productivity)とは、全要素生産性と訳されるもので、経済における技術水準を表す指標です。
生産するに当たっては、労働と資本が投入されるが、それのみでは生産力が決まるわけではありません。
当然ながら、それ以外の技術・知識・ノウハウなどによっても、影響されます。その技術力などを表す指標として用いられるのが、TFPです。
つまり、経済成長率を考えるにあたって、労働や資本の増加率以外で、技術進歩率がどれだけあったかを示しています。
成長会計
それでは、どのように技術進歩率を図るのでしょうか。
技術進歩と言っても、革新的なイノベーションから小さなノウハウ的なものまで、様々あり、技術進歩自体を測定することは非常に困難です。
そこで、このTFPを測定される手法として用いられるのが、成長会計というものです。
これは、次の式から計算できます。
TFPの増加率 = GDPの増加率 – a × 資本の増加率 – b × 労働力の増加率
GDP・資本・労働力の増加率は、各種の統計から、データを得ることができます。また、aやbの係数は、回帰分析やある種の仮定を置くことで統計データから計算することができます。
そして、GDPの増加率から、資本や労働力の増加を差し引くことで、その余りとして、技術水準であるTFPを計算することができます(余りを計算するということで、これを考え出した経済学者の名前をとり、「ソロー残差」などとも言われます)。
言い換えると、GDPの成長率から、データから得られる資本・労働力の増加などを除けば、技術進歩率が算出されるというわけです。
数値例
例えば、GDPの成長率が2%、資本の増加率は3%、労働力の増加率は-1%とする。そして仮設的に、aは0.4、bは0.6とします。
そうすると、
TFPの増加率 = 2% – 0.4×3% -0.6×(-1%) = 1.4%
となります。
この経済においては、資本は3%増加したが、労働力は1%減少してしまいました。しかし、1.4%の技術向上などがあり、GDPとしては2%の成長ができたことを表しています。
批判
上記のように、あくまでもTFPは、GDPの増加率から資本・労働力の増加率などを除いたものであり、実は技術進歩率を直接、計っているものではありません。
技術進歩と解釈していますが、実はその中身は何なのかは、全く不明なのです。当然ながら、技術進歩以外の部分も含まれるわけで、景気・不景気、災害などのショックも含まれています。
また、技術進歩と言っても、その中身として、どのような技術進歩があったかなどは、この指標からだけでは分かりません。
そこで、技術進歩を違うアプローチで計測しようとしたり、TFPを更に分解して計算しようとしたりする研究もあります。
(例)RIETI「生産性を計測するということ -技術を正しく評価するために-」
成長会計(数学的導出)
成長会計について、数学的に導出する場合を説明します。
まず、生産量を、資本を、労働力をとして、コブ=ダグラス型の生産関数を考えます。
ここで、は定数です。
上記の式を対数変換すると、次のようになります。
これを時間微分すると、この式は増加率の式になります(なお、のドットは増加分)。
これを式変形すると、次式が得られ、がTFPとなります。
コメント