伝統工芸といえば、漆器や焼き物などを思い起こすことが多いと思います。そして何となく、昔からある手作業で作られた工芸品を伝統工芸と呼んでいるような気がします。
この伝統工芸について、説明します。
内容
一般的には「伝統工芸」と呼んでいますが、正式名称は「伝統的工芸品」と言い、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(略称:伝産法)といわれる法律で規定されています。
【伝産法】
第二条 経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聴いて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
2 前項の規定による伝統的工芸品の指定は、当該伝統的工芸品の製造に係る伝統的な技術又は技法及び伝統的に使用されてきた原材料並びに当該伝統的工芸品の製造される地域を定めて、行うものとする。
第二条 経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聴いて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
2 前項の規定による伝統的工芸品の指定は、当該伝統的工芸品の製造に係る伝統的な技術又は技法及び伝統的に使用されてきた原材料並びに当該伝統的工芸品の製造される地域を定めて、行うものとする。
つまり、正式には上記のような要件を満たした国が指定したものが伝統工芸品です。
そして上記の方にもあるように、随時、産業構造審議会の商務流通情報分科会「伝統的工芸品指定小委員会」で指定が行われています。
指定
産業構造審議会の商務流通情報分科会「伝統的工芸品指定小委員会」における近年の指定は、次の通りです。
(なお、日付は委員会日)
・2019年9月18日:行田足袋、江戸押絵、浪華本染め
・2018年8月16日:奈良墨、三線、高岡銅器
・2017年9月19日:奧会津昭和からむし織、東京無地染、越中福岡の菅笠
指定一覧
現在、国から指定されている伝統的工芸品は、次の通りです。
織物 |
二風谷アツトウシ(北海道)、奥会津昭和からむし織(福島県)、置賜紬(山形県) 羽越しな布(山形県、新潟県)、結城紬(茨城県、栃木県)、伊勢崎絣(群馬県) 桐生織(群馬県)、秩父銘仙(埼玉県)、村山大島紬(東京都)、本場黄八丈(東京都) 多摩織(東京都)、塩沢紬(新潟県)、小千谷縮(新潟県)、小千谷紬(新潟県) 本塩沢(新潟県)、十日町絣(新潟県)、十日町明石ちぢみ(新潟県)、牛首紬(石川県) 信州紬(長野県)、近江上布(滋賀県)、西陣織(京都府)、弓浜絣(鳥取県) 阿波正藍しじら織(徳島県)、博多織(福岡県)、久留米絣(福岡県)、本場大島紬(鹿児島県) 南風原花織(沖縄県)、久米島紬(沖縄県)、宮古上布(沖縄県)、読谷山花織(沖縄県) 読谷山ミンサー(沖縄県)、琉球絣(沖縄県)、首里織(沖縄県)、与那国織(沖縄県) 喜如嘉の芭蕉布(沖縄県)、八重山ミンサー(沖縄県)、八重山上布(沖縄県) 知花花織(沖縄県) |
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染色品 |
東京無地染(東京都、神奈川県)、東京染小紋(東京都)、東京手描友禅(東京都) 加賀友禅(石川県)、名古屋友禅(愛知県)、名古屋黒紋付染(愛知県) 有松・鳴海絞(愛知県)、京鹿の子絞(京都府)、京友禅(京都府)、京小紋(京都府) 京黒紋付染(京都府)、琉球びんがた(沖縄県) |
その他繊維製品 | 加賀繍(石川県)、伊賀くみひも(三重県)、京繍(京都府)、京くみひも(京都府) |
陶磁器 |
大堀相馬焼(福島県)、会津本郷焼(福島県)、笠間焼(茨城県)、益子焼(栃木県) 九谷焼(石川県)、越前焼(福井県)、美濃焼(岐阜県)、三州鬼瓦工芸品(愛知県) 常滑焼(愛知県)、赤津焼(愛知県)、瀬戸染付焼(愛知県)、四日市萬古焼(三重県) 伊賀焼(三重県)、信楽焼(滋賀県)、京焼・清水焼(京都府)、丹波立杭焼(兵庫県) 出石焼(兵庫県)、石見焼(島根県)、備前焼(岡山県)、萩焼(山口県)、大谷焼(徳島県) 砥部焼(愛媛県)、小石原焼(福岡県)、上野焼(福岡県)、伊万里・有田焼(佐賀県) 唐津焼(佐賀県)、三川内焼(長崎県)、波佐見焼(長崎県)、小代焼(熊本県) 天草陶磁器(熊本県)、薩摩焼(鹿児島県)、壺屋焼(沖縄県) |
木工品・竹工品 |
二風谷イタ(北海道)、岩谷堂簞笥(岩手県)、仙台箪笥(宮城県)、樺細工(秋田県) 大館曲げわっぱ(秋田県)、秋田杉桶樽(秋田県)、奥会津編み組細工(福島県) 春日部桐簞笥(埼玉県)、江戸和竿(東京都)、江戸指物(東京都)、箱根寄木細工(神奈川県) 加茂桐簞笥(新潟県)、井波彫刻(富山県)、越前箪笥(福井県)、松本家具(長野県) 南木曽ろくろ細工(長野県)、一位一刀彫(岐阜県)、駿河竹千筋細工(静岡県) 名古屋桐簞笥(愛知県)、京指物(京都府)、大阪欄間(大阪府)、大阪唐木指物(大阪府) 大阪泉州桐簞笥(大阪府)、大阪金剛簾(大阪府)、豊岡杞柳細工(兵庫県) 高山茶筌(奈良県)、紀州簞笥(和歌山県)、紀州へら竿(和歌山県)、勝山竹細工(岡山県) 宮島細工(広島県)、別府竹細工(大分県)、都城大弓(宮崎県) |
金工品 |
南部鉄器(岩手県)、山形鋳物(山形県)、千葉工匠具(千葉県) 東京アンチモニー工芸品(東京都)、東京銀器(東京都)、越後与板打刃物(新潟県) 越後三条打刃物(新潟県)、燕鎚起銅器(新潟県)、高岡銅器(富山県)、越前打刃物(福井県) 信州打刃物(長野県)、堺打刃物(大阪府)、大阪浪華錫器(大阪府) 播州三木打刃物(兵庫県)、土佐打刃物(高知県)、肥後象がん(熊本県) |
仏壇・仏具 |
山形仏壇(山形県)、新潟・白根仏壇(新潟県)、長岡仏壇(新潟県)、三条仏壇(新潟県) 金沢仏壇(石川県)、七尾仏壇(石川県)、飯山仏壇(長野県)、尾張仏具(愛知県) 名古屋仏壇(愛知県)、三河仏壇(愛知県)、彦根仏壇(滋賀県)、京仏壇(京都府) 京仏具(京都府)、大阪仏壇(大阪府)、広島仏壇(広島県)、八女福島仏壇(福岡県) 川辺仏壇(鹿児島県) |
和紙 |
越中和紙(富山県)、越前和紙(福井県)、内山紙(長野県)、美濃和紙(岐阜県) 因州和紙(鳥取県)、石州和紙(島根県)、阿波和紙(徳島県)、大洲和紙(愛媛県) 土佐和紙(高知県) |
文具 |
雄勝硯(宮城県)、豊橋筆(愛知県)、鈴鹿墨(三重県)、播州そろばん(兵庫県) 奈良墨(奈良県)、雲州そろばん(島根県)、熊野筆(広島県)、川尻筆(広島県) 赤間硯(山口県) |
石工品 |
真壁石燈籠(茨城県)、岡崎石工品(愛知県)、京石工芸品(京都府) 出雲石燈ろう(鳥取県、島根県) |
貴石細工 | 若狭めのう細工(福井県)、甲州水晶貴石細工(山梨県) |
人形・こけし |
宮城伝統こけし(宮城県)、江戸木目込人形(埼玉県、東京都)、岩槻人形(埼玉県) 江戸節句人形(東京都)、駿河雛具(静岡県)、駿河雛人形(静岡県)、京人形(京都府) 博多人形(福岡県) |
その他の工芸品 |
天童将棋駒(山形県)、房州うちわ(千葉県)、江戸べっ甲(東京都)、江戸からかみ(東京都) 江戸切子(東京都)、江戸木版画(東京都)、江戸硝子(東京都)、越中福岡の菅笠(富山県) 甲州印伝(山梨県)、甲州手彫印章(山梨県)、岐阜提灯(岐阜県)、尾張七宝(愛知県) 京扇子(京都府)、京うちわ(京都府)、京表具(京都府)、播州毛鉤(兵庫県) 福山琴(広島県)、丸亀うちわ(香川県)、八女提灯(福岡県)、長崎べっ甲(長崎県) 山鹿灯籠(熊本県)、三線(沖縄県) |
工芸材料・工芸用具 | 庄川挽物木地(富山県)、金沢箔(石川県)、伊勢形紙(三重県) |
(※)行田足袋、江戸押絵、浪華本染めは未記載
その他
一般的には国が定めたものを伝統的工芸品と呼びますが、これ以外にも、都道府県や市町村によっては、独自の基準を設けて、都道府県指定の伝統工芸品を定めている場合もあります。
(例)佐賀県の県指定伝統的地場産品
・鹿島錦
・佐賀錦
・白石焼
・諸富家具・建具
・名尾手漉和紙
・鍋島緞通
・西川登竹細工
・肥前びーどろ
・浮立面
・弓野人形
参考
経済産業省「伝統的工芸品指定小委員会」
伝統工芸 青山スクエア「工芸品を知る」
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