現在、日本は人口減少社会を迎えていますが、これは今だけの話ではありません。
実は、県によっては、何十年も前から人口減少が到来しています。
戦後、人口は増えていない
日本の人口を見ると、戦後の約7千万人から約1億3千万人と大きく増えました。
しかし、過疎の村などがあるように、市町村単位では人口の減少している地域があります。それどころか、都道府県単位でも戦後、人口が増えていないところがあります。
例として、秋田県の人口を見てみましょう。
秋田県の人口
秋田県では、1950年代に人口を伸ばしましたがその後減少、1970・80年代に若干人口は増加しましたが、現在まで減少が続いています。その結果、現在の秋田県の人口は、戦前水準です。
2000年代に入り、日本は人口減少社会に入ったと言われ始めました。しかし、秋田県の人口のピークは1957年で、すでに秋田県は人口減少社会を迎えていたのです。
そしてこれは勿論、秋田県だけの現象ではありません。
(1945年は戦災・疎開などがあり特殊な値をとるため)1946年と2011年を比較しますと、1946年よりも人口が少ない都道府県は、秋田県・山形県・島根県・徳島県・高知県・佐賀県の6県もあります。
首都圏のように大きく人口を伸ばした都道府県がある反面、何十年も前から、人口減少社会を迎えている地域があるのです。
いつから人口減少が始まったか?
それでは、いつから人口減少が始まったかを考えると、大きく分けて5つのグループに分けられます。
次の表は、人口が最大であった年の翌年を人口減少開始と定義し、分類したものです。
なお、人口最大年の後、人口が減少したがいったん増加に転じ、再び減少している都道府県もありますが、あくまでも人口最大年の翌年を人口減少開始年としています。
1950年代 (13都道府県) |
岩手県(1960)、秋田県(1957)、山形県(1951)、島根県(1956)、山口県(1959)、徳島県(1951)、愛媛県(1957)、高知県(1957)、佐賀県(1956)、長崎県(1960)、熊本県(1957)、大分県(1956)、鹿児島県(1956) |
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1980年代 (3都道府県) |
青森県(1984)、和歌山県(1983)、鳥取県(1989) |
2000年前後 (20都道府県) |
北海道(1998)、宮城県(2004) 、 福島県(1998) 、 茨城県(2002) 、群馬県(2004) 、新潟県(1998) 、 富山県(1997) 、石川県(2002) 、福井県(2002) 、山梨県(2002) 、長野県(2002) 、岐阜県(2002) 、京都府(2005) 、兵庫県(2005) 、奈良県(2000)、岡山県(2005)、広島県(1999)、香川県(1997)、宮崎県(1997) |
2010年前後 (5都道府県) |
栃木県(2006) 、千葉県(2011) 、静岡県(2008) 、愛知県(2010) 、三重県(2008) 、大阪府(2011) |
非人口減少グループ (6都道府県) |
埼玉県、東京都、神奈川県、滋賀県、福岡県、沖縄県 |
(出典)統計局「人口推計」、()内は人口減少開始年
これを見ると、すでに1950年代に人口減少社会に入った都道府県が13県あることが分かります。そしてその多くが、東北、四国、九州の県です。
逆に、人口減少が見られない都道府県が6都道府県、2010年前後に人口減少となった都道府県が5県あり、その多くが首都圏・中京圏・関西圏にある都道府県となっています。
1970年代の意義
ここで、上記の表を改めて確認すると、同じ地方であっても、例外があることが分かります。
なぜなのでしょうか?
これには人口変化のパターンに秘密があります。
これらの地域では基本的に、戦後、次のような人口変化パターンをとっています。
この図のように、1950年代に人口を伸ばすが1960年代に減少、第2次ベビーブームで1970年代になると再び増加し、その後、減少に転じるというパターンです。
そして、この1970年代にいかに人口を伸ばせたかで、上記のような違いが出ています。
下図は、1970年から1980年の間の人口増加率です。
上記のように、人口減少開始年が遅い都道府県は、いずれも同じ地方の他の都道府県よりも高い人口増加率となっています。
1970年代は、第2次ベビーブームがあり、日本全体として人口が大きく伸びるとともに、地方から首都圏などへの人口流出が小さくなった時期です。
このときに、いかに人口を増やすことができたか否かで、その後の人口減少社会の時期が大きく変わってしまったのです。
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