JRと地方経済の衰退
国鉄民営化
今さら言うまでもないが、かつて、JR各社は民間企業ではなく、かつて国により運営されていた(国鉄)。
中曽根内閣による行革の中で、1987年に国鉄は民営化され、現在に至っている。
国鉄民営化は、多くの場合、評価されていることが多い。例えば、赤字であった国鉄が黒字になり、その結果、税金を投入するのではなく、税収を得ることができるようになった。また、労組が強く、サービスなどが悪かったが、改善されたという意見もある。
私もそう思っていたし、現在でもその通りだという面もあると思っている。
しかし同時に、最近、国鉄民営化は、地方経済の衰退に拍車をかけたのではないかと思っている。
JRと地方経済の衰退
①ローカル線の廃止
1つは、ローカル線の廃止である。
国鉄は大きな赤字を抱えていたが、その要因の一つは、赤字のローカル線の建設・維持にあった。そこで、国鉄がJRになると、このローカル線の多くが廃止された。言わば、リストラである。
これにより、確かに赤字はなくなったが、鉄道のない市町村が生まれるようになり、その市町村は利便性を失うことになる。そうなると、住民生活にマイナスであると共に、他から来る人にとっては、行きにくいところとなる。これは、観光や企業立地という点でもマイナスとなる。
②在来線の第三セクター化
2つは、①と関連するが、新幹線などが開業すると、在来線が廃止されることがある。
しかし、地域住民にとっては、重要な足であるので、地方自治体としては、その鉄道を維持しなければならない。そうなると、新幹線開業により、在来線を維持するため、地方自治体などが第三セクターとして、運営することになる。東北新幹線のIGRいわて銀河鉄道は、東北新幹線の盛岡-八戸間開業により、生まれた第三セクターの鉄道会社であり、最近でも北陸新幹線の開業で、在来線は第三セクター化されている。
利益を追求する民間企業としては、当然ともいえるが、ある種、赤字の地方自治体への押しつけとも言えよう。
③駅ビルの商業施設化
ある程度、人口のある駅の多くは、駅ビルが建ち、立派な商業施設となっている。
当然ながら、集客力もあるわけだが、反面、元々ある地域の商店街の衰退の一因となっていることは、間違いないと思う。
駅ビルなどの商業施設は元気があるが、古くからある繁華街・商店街が衰退しているという都市が増えているように感じる。
例えば、駅ビルのみの影響とは言えないので、因果関係は分からない部分があるとはいえ、先日、群馬県の高崎市や新潟県の越後湯沢に行ったが、非常にそのコントラストが気になった。駅ビルの商業施設には人はいるのだが、元々ある商店街などには人がいないのである。

高崎の商店街だが、誰もおらずシャッターが多い
何だか悲しくなる
2027年にリニア新幹線の開業が予定されている。
リニアといえば、日本の素晴らしい技術の結晶であり、誇らしい部分が大きい。ただ同時に、JR東海のみで建設・運営が可能なほどの利益の源泉は、そもそもはローカル線などのリストラの結果でもある。
また、地方の企業が、東京のJR駅中などで、ブースを設け、商品の販売を行っている光景が見られる。駅・場所によるが、1日当たり数万円から数十万円の場所代(テナント代)をとられている。
国鉄の民営化は正しかったと思う。そして、JRの行っていることを批判するつもりはない。合理的であるからである。
しかし同時に、それは地方経済の衰退の一因となっており、(左がかった言い回しで嫌であるが)地方からの収奪で成り立っている部分があり、何だか悲しくなってしまう。
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