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改正地域再生法
これは、平成17年に制定された法律で、小泉内閣が特区などの制度を設けるに当たり、同時に設けられたものである。
簡単に言えば、地方自治体などが、地域再生計画の認定を受ければ、補助金などの支援措置が受けられる。
改正のポイントを、政府の資料に基づいて整理すると、大きなものとしては、次のようなものがある。
- 国に対する新たな支援措置等の提案制度を創設(4条の3)
- 国に対し、支援措置の内容、法令解釈について確認(5条第11項~第14項)
- 認定手続・提出手続のワンストップ化
- 内閣総理大臣による事務の調整・勧告(10条の2)
- 農林水産業の振興のために6次産業化に係る施設等を整備する場合の農地転用許可の特例等(17条の2~17条の4)
「地域再生法の一部を改正する法律の概要」(まち・ひと・しごと創生本部HPより)
国に対する新たな支援措置等の提案制度を創設
法律に従えば、地方自治体などは「内閣総理大臣に対して、地域再生の推進のために政府が講ずべき新たな措置に関する提案をすることができる」というものである。
逆に言えば、このような条文がなければ、地方自治体などは総理大臣に対しては、提案してはいけないことになる。そんな馬鹿な話はないので、ある意味、意味のない条文である。
ただ、このように明文化されたことで、窓口創設など、実務的にはやりやすくなる面があるかもしれない。
国に対し、支援措置の内容、法令解釈について確認
これも、上記の「国に対する新たな支援措置等の提案制度を創設」と同様、このような条文がなくても、支援措置の内容や法令解釈について聞いてはいけないという話はないので、大きな意味はないものである。
ただ思うに、制度上、致し方ないとはいえ、地域再生本部以外の省庁が絡むような事項については、実務上、面倒なことが起こるかもしれない。
具体的には、地域再生本部に確認を行うが、地域再生本部としては右から左というだけで、直接、他の省庁に聞いた方が早いという事態が生じたり、先ず直接、他の省庁に聞いた場合でも、地域再生本部を絡ませなければならないなどといった事態である。
認定手続・提出手続のワンストップ化
これは、地域再生計画の認定で、中心市街地活性化基本計画などの他の計画も同時に発効したり(第17条の5~第17条の7)、都市再生整備計画などは、地域再生計画と一括提出を可能になるというものである(第6条の2)
下記の例のように、ワンストップ化がなされるような条文になっているが、実務的には他省庁との調整は必要になるだろうから、あまり意味があるようには思わない条文である。
内閣総理大臣による事務の調整・勧告
これは、認定地方公共団体が、内閣総理大臣に「関係行政機関の事務の調整を行うことを要請」できるというのものである。
わざわざ内閣総理大臣を絡ませなくても、認定地方公共団体は関係行政機関の事務の調整を行えばよい。
ただ何か問題が生じたときに、この条文が効いてくるだろうし、内閣総理大臣(地域再生本部)の調整能力で、この規定の効力に差異が出てくるだろう。
農林水産業の振興のために6次産業化に係る施設等を整備する場合の農地転用許可の特例等
これは、他の条文と異なり、実質的な特例措置を定めたものである。
認定地方公共団体である市町村が「地域農林水産業振興施設整備計画」を定めれば、農地等の転用等の許可の特例が受けられる。
この意味で、市町村が農地転用を行い、農畜産物の加工・販売施設など6次産業化施設を整備しやすくなる。
とはいえ、地域農林水産業振興施設整備計画の協議にあたっては、「都道府県知事、都道府県農業会議その他農林水産省令で定める者を協議会の構成員」(17条の2第2項)としなければならないなど、市町村は都道府県などと調整が必要なことには変わらない。
本当に、地方創生なのか?
以上を見てみると、「地方創生の要」と言われるが、法律がなくともできることも多く、新たな効力・措置といったものも乏しい。
この点で、はっきり言えば、法律上の意義や重要なポイントが乏しい法律ともいえる。
逆に、地方創生を本当に考えているのかといった部分もある。
まち・ひと・しごと創生法案の目的で「東京圏への人口の過度の集中を是正」という一文がある。
しかし、上記のように「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定が謳われている。つまり「都」が入っているのである。確かに、東京都とはいえ、島嶼部なども有していることから、まだ理解はできる。
ただ、「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、次のように「特別区」(東京23区)が含まれている。
特別区とはいえ、地方自治体であり、地方の一つとも言えよう。地方といった場合、どこまでが地方であるか、線引きするのは難しい面もある。
また、あくまでも「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定は、努力規定であるため、特別区などを含めても問題はなかろうという判断があったのかもしれない。
地方創生は、統一地方選対策だと言われたりもしている。そうだと考えれば、「東京圏への人口の過度の集中を是正」といった理念・目的とは別に、どこもかしこも「地方」として、対策を行う必要が出ても来るだろう。
ただ、選挙対策云々は置いておいても、本当に地方創生を考えているのか、疑問を抱かざるをえない。
まち・ひと・しごと創生法案自体は、複雑な法律ではなく、スタンダードな構成となっている。言い換えれば、他の法律を持ってきて、目的や基本理念などを変えれば、すぐに完成するような法律だ。
これらの法律を見た限りにおいて、この「地方創生」のいい加減さ、大雑把さを感じてしまう。
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