マルクス主義の弱体化
先月の総選挙で、共産党が大きく議席を伸ばした。
ただ、マルクス主義や共産主義に共感している人はあまり多くはないだろう。
共産党は議席を伸ばしたのは、自民党に対し、他の野党がしっかりとした理念・政策を打ち出せず、選挙対策もままならない中、与党に対するアンチテーゼとしての結果であろう。
実際は、共産主義やマルクス主義は、むしろ人気を失っているのではないかと思う。
確かに1990年代に、旧ソ連を始め、共産主義国での失敗が顕在化し、民主化がなされるなどが起こり、共産主義やマルクス主義というものは大きく力を失った。
そしてそれに連動するように、日本でも、左翼的な思想が弱体化し(それどころか批判されるようになり)、保守的な思想が強くなっていった。
ただし経済学というものを考えたとき、思うのは、マルクス主義や共産主義というものは、実は正しいのである。
近代経済学によりマルクス主義は証明されている
近代経済学とマルクス経済学は、正反対であり、対をなすものとされている。
ただ、近代経済学において、マルクスの主張の正しさは、(厳密には異なるが)ある意味、証明されている。
国家管理
マルクス主義や共産主義においては、国家により、経済が管理されるが、近代経済学では国家による経済管理が最適であることが証明されている。
例えば、近代経済学(ミクロ経済学)において、最適な資源配分は競争により実現される。ただ、厚生経済学の第2定理というものがあり、資源配分をコントロールすれば、最適な資源配分が実現できるという理論がある。当然ながら、何もせずに、資源配分を調整できるわけではなく、政府などによりコントロールが必要となる。
この他、成長理論において、基本的なモデルとして、ラムゼーの成長モデルというものがある。これは、どのように経済成長するか、最適な成長とはどのようなものであるかをモデル化したものであるが、競争により最適な成長ができるかを示しているとともに、中央政府がコントロールすることにより、最適な成長が実現できることを示している。
利潤の低下
マルクス経済学において、利潤率の傾向的低下法則というものがある。
細かな理論的な説明はおくとして、簡単に言えば、歴史的に、利潤率というものは低下していくということを言っている考えである。そして、利潤率が低下する中で、その利潤を巡り、資本家と労働者の対立が激化し、労働者による政府の実現、マルクス主義・共産主義による政府というものが導き出される。
これも、近代経済学(マクロ経済学)において、古典的な成長理論(ソローモデル)で、収束論などとも言われるが、経済が大きくなると、経済成長は小さくなることが示されている。
このような理論を用いなくても、発展途上国と先進国では、経済成長率が大きく異なることで、利潤の低下ということはよく分かると思う。
マルクス主義の失敗
とはいえ、マルクス主義や共産主義は失敗した。
なぜか?
国家管理という点については、国家は理論が想定したほど、賢くはないという点である。近代経済学の理論で用いている政府は、神のような存在で、あくまでも理論的な存在である。
人間は神ではないので、当然ながら、失敗する。
また利潤の低下についても、マルクスは技術革新というものを想定してない。シュンペーターではないが、創造的破壊・技術革新で、利益は増加し、経済は発展する。
逆に言えば、旧共産主義国で、技術革新というものを軽視した故、失敗したともいえよう。
思うに…
上記で述べたように、私は、共産主義やマルクス主義というものは失敗したし、間違いもあると思う。その意味で、共産主義やマルクス主義は誤りである・
ただ、資本主義(近代経済学)とマルクス主義という、全く異なるアプローチ・考えにおいて、共通部分があるということは、重要な点であると思う。
特に、資本主義の限界などが言われたりする中、改めて、経済思想というものの在り方を考える必要があると思う。
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