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消費税転嫁法、有効かもしれない。

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概要

 今月、消費税転嫁対策特別措置法が成立した。
 一般に言われていることは、この法律により「消費税還元セール」などの謳い文句を言えなくなるという点である。この点だけを見ると、いくらでも抜け道があり、その実効性には疑問が生じるところである。
 しかし気になっていたので、改めて法律を調べてみると、この法律の効果については、違うところにあるように思う。


ポイント

 提出法案を見ると、次のようなポイントが見受けられる。

①スーパーだけの問題ではない。
 「消費税還元セール」などというと、大型スーパーの売り出しセールを想起するが、法律ではすべての事業者に適用される。
 法律では、次のように「事業者」となっており、規模などは関係なく、事業を行っていれば、このような文言は使えなくなるようだ。

第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。
一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示
三 前二号に掲げるもののほか、消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示として内閣府令で定めるもの


②大企業だけの問題ではない。
 自分の会社は小さいから関係ないと思うかもしれないが、そうではない。
 「特定事業者」(仕入先、元請)と「特定供給事業者」(仕入元、下請)に分け、特定事業者を規制しているのだが、特定事業者には、次の2つの場合が該当する。「大規模小売事業者」は大型スーパーなどを想定しているが、それ以外は業種は関係なく、個人事業主などから仕入を行っているという形になっている。つまり中小企業であっても、個人事業主等から仕入れを行っている場合には、この法律の規制対象となってしまうという点だ。

大規模小売事業者 一般消費者が日常使用する商品の小売業を行う者であって、その規模が大きいものとして公正取引委員会規則で定めるもの
大規模小売事業者以外 法人である事業者であって、次に掲げる事業者から継続して商品又は役務の供給を受けるもの
 イ 個人である事業者
 ロ 人格のない社団等である事業者
 ハ 資本金の額又は出資の総額が三億円以下である事業者


③表示だけの問題ではない。
 法律を見ると、表示だけではなく消費税に関連して、値下げなどは行うことができなくなるという点である。また、消費税転嫁を応じてもらう代わりに、お金を支払わせるなどの抜け道も防いでいる。

第三条 特定事業者は、平成二十六年四月一日以後に特定供給事業者から受ける商品又は役務の供給に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
一 商品若しくは役務の対価の額を減じ、又は商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。
二 特定供給事業者による消費税の転嫁に応じることと引換えに、自己の指定する商品を購入させ、若しくは自己の指定する役務を利用させ、又は自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
三 商品又は役務の供給の対価に係る交渉において消費税を含まない価格を用いる旨の特定供給事業者からの申出を拒むこと。
四 前三号に掲げる行為があるとして特定供給事業者が公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。


影響

 一般的には抜け道があり、あまり意味がないとも言われている。
 細かな運用などはまだ示されておらず、今後決まっていくことになっているが、上記のように条文を見る限り、ただ単に「消費税還元セール」という文言が使えなくなるだけでなく、ある程度の影響はありそうだ。

 特に気になっているのは、3条1号の規定である。もう一度、掲載すると次のような条文である。

商品若しくは役務の対価の額を減じ、又は商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。

 簡単に言えば、例えば下請企業が「消費税がアップしたので、その分もお願いします」といったとき、元請企業が「消費税アップした分は、値引きしてよ」とは言えなくなるということである。
 これはこの法律の趣旨を考えたときに、当然の措置であるが、問題は「拒むこと」の解釈である。

 元請企業が消費税を絡めず、値引き要求をした場合に、この条文は適用されないのか、実質的には転嫁を拒んでいるので、この条文が適用されるのかという点である。前者のように、単なる値引き要求ではこの条文が適用されなければ、当然実効性は弱くなるが、後者のように、実質的には転嫁を拒んでいるといみなされ、この条文が適用されるという話になれば、消費税アップ後には、元請企業からの値下げ交渉自体も少なくなるだろう。また、この部分について、方針が示されない場合にも、法律違反を違反を恐れ、元請企業は値下げ交渉を行わなくなるだろう。

 いずれにせよ今後、ガイドラインなどが示されるそうであり、この法律が有効なものになるかどうかは、今後見えてくるだろう。
 そして、このような法律をつくらなければならないという背景には、下請法の問題も考えなければならない。


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