指定管理者制度について、解説しています。
概要
指定管理者制度は、小泉政権下の民営化路線の中で、地方自治法の改正により2003年9月に施行されたもので、公の施設(※)を民間事業者などが包括的に運営・管理できる制度です。
従来から施設の運営・管理については業務委託でも可能でしたが、この制度により、管理権限が受託者に移動し、施設の使用などについて、受託者でも可能となりました。
(※)「公の施設」とは「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」(地方自治法244条第1項)であり、簡単に言うと、自治体が設置した施設(公民館、図書館、集会所など)を指します。
現状
総務省の調査によると、全国の73,476施設で導入されています(都道府県7,123施設、指定都市7,641施設、市区町村58,712施設)。
総務省「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(平成24年11月)
指定管理者の導入は年々増えていますが、自治体によって導入に幅があり、例えば都道府県別に導入率を見ると、最も高い大阪府では96.9%ですが、最も低い島根県は13.1%となっています。
また、指定管理者制度が導入されている施設について、その受託者と施設区分の割合を見たのが下図です。
受託者としては、財団法人などの公益法人が26.4%と最も高く、次にNPOの22.4%となっています。施設区分としては、基盤施設(駐車場、大規模公園、水道施設、下水道終末処理場、ケーブルテレビ施設等)の割合が最も高くなっています。
メリット・デメリット
【メリット】
施設の管理・運営を、より受託者の裁量に委ねる制度であり、コンペなどの形で指定管理者制度を決める場合も多いことから、行政の民活という観点では利用が望まれる制度です。
また、指定管理者制度がスタートしたことで、(基本的には首都圏などに偏在しているが)指定管理者アドバイザーなども現れ、新たな業種・産業創出につながっている面もあります。
【デメリット】
民活といいながら、実は自治体の外郭団体などが受託している場合も多いのが実態です。
これは、外郭団体へ自治体職員が天下っており、出来レースとなっている場合があるからです。またそうではなくとも、自治体としては、民間事業者などが適切に公共サービスを提供するか、不安感もあるからです。言い換えると、いくら民活とはいえ、自治体としては公共施設をあまりにも好き勝手に自由に使ってもらっては困るという事情があるともに、特に何か問題が発生した場合、いくら指定管理者制度を使って裁量を認めているからといって、自治体もその責任を逃れることはできず、少なくとも監督責任を問われることになるからです。
また、指定管理者を決定すると複数年にわたって、施設管理を行わせる場合も多いです。そのため、契約期間終了後に、新しい事業者を選定する際には、新規の事業者を選定することはリスクが伴うことになるので、既存の受託者が選定されやすい面があります。その結果、その事業者の独占業務となりやすいという問題もあります。
このほか、指定管理者制度を利用したり、外部委託をすると、その業務について自治体職員の教育機会も少なくなります。そのため、特に専門性の高い業務運営が必要とされるような施設については、事業者の言いなりになったり、より既存事業者を選定する傾向が出てしまうという問題もあります。
業務委託との相違点
指定管理者制度と類似したものとして、業務委託があるが、その相違点は次のとおりです。
簡単に言うと、指定管理者制度では、指定管理者に使用許可を与えたり、その利用料を指定管理者の収入にできるなど、指定管理者の裁量権を大きくすることができますが、反面、条例・議会の議決など手続き面で面倒な制度となっています。また、指定管理者制度では複数年にわたって契約する場合が多いため、予算上、債務負担行為の手続き(年度を跨った契約に対する手続き)が必要になります。
指定管理者 | 業務委託 | |
---|---|---|
法的性格 | 管理代行 | 私法上の契約 |
管理権限 | 指定管理者 | 地方公共団体 |
管理基準等 | 条例 | 契約 |
受託者の決定等 | 議会の議決が必要 | 議会の議決は不要 |
使用許可 | 指定管理者でも可能 | 受託者はできない |
利用料 | 指定管理者の収入にできる | 受託者の収入にはできない |
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