産業連関表

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概要

 産業連関表とは、ある経済の産業間の取引を明らかにしたもので、経済効果などを分析する際に使われている統計である。

 例えば、建設業と小売業を考えると、建設業は業務を営むに当たり、建設資材などを小売業から購入する。他方、小売業は店舗などを建築する際に、建設業に依頼することになる。
 そしてこのような取引関係を示しているのが、産業連関表(取引表)である。


取引のイメージ

図:取引のイメージ

 更に、公共事業が多く行われ、建設業の需要が高まれば、より多くの建設資材が必要となり、小売業にも需要が発生する。そうすると、小売業において新たに店舗設置などを行うようなところが出てくると、逆に建設業に新たな需要が発生する。
 また、建設業の需要の高まりで、そこに働く人の給料が増え、小売業でより物を買う事態も生じるだろう。

 このような波及効果の構造を示し、経済効果などを分析することもできる。

 ノーベル経済学者のレオンチェフ(この功績で受賞)により何十年も前に生み出された経済理論・分析手法であるが、経済効果などを調査する際に実務的であるので、多く利用されている。

 そして統計自体は、国はもとより、都道府県や政令市などで調査・作成が行われている。


産業連関表

 産業連関表として、主なものとして、「取引表」「投入係数表」「逆行列表」というものがある。


取引表

 これは、産業間の取引の額や最終需要・付加価値などを表しているものである。
 構成としては、下図のような形をとっており、大きく分けて、「内生部門」部分(中間需要・中間投入とも言われたりする)、「最終需要」部分、「付加価値」部分に分けられる。


取引表のイメージ

図:取引表のイメージ

 「内生部門」部分は、まさしく産業間の取引を表しており、図の例では、製造業からサービス業に100のものが販売(投入)されたことを意味する(逆に言えば、サービス業が製造業から100のものを購入(需要)されている)。

 「最終需要」部分は、最終的にどれだけ消費・投資などが行われたかを示している。

 「付加価値」部分は、経済活動によって得られた付加価値がどのように分配されたかを示している。

 そして、内生部門と最終需要の合計、内生部門と付加価値の合計は、いずれも生産額を表しており、縦・横の値は一致する(図でいえば、サービス業の生産額は500で、縦・横同じ)。


投入係数表

 これは、取引表に基づき、それぞれの取引に対して、各産業部門の生産額で割った数値(「投入係数」という)をまとめたものである。
 意味合いとしては、ある産業部門が1単位のものを生産するのに、他の産業部門から、どれだけのものが必要かを意味している。

 上記の表でいえば、サービス業の製造業に対する投入係数は、0.2(=100÷500)であり、サービス業は1単位の生産を行うには、製造業から0.2単位のものが必要ということを表している。


投入係数表のイメージ

図:投入係数表のイメージ

 この点で、投入係数表は、それぞれの技術構造を表している表といえる。
 (この表自体も分析の対象となるが、それ以上に、次の逆行列表を作成するためには必要な表である)


逆行列表

 これは、まさしく経済効果を表したり、経済効果を計算するために中心的な役割を果たす表である。

 若干、数学的になるが説明すると、上記の取引表は、次のような数式で表すことができる。

   (バランス式) AX+F=X

 ここで、Aは投入係数行列(n×n)、Xは生産額ベクトル(n×1)、Fは最終需要額ベクトル(n×1)である。
 AXは投入係数で表した場合の内生部門の生産額を表しているので、これに最終需要額Fを足せば、生産額Xとなる。

 これを式変形すると、次のようになる。

   (モデル式) X=[I-A]^{-1}F

 この[I-A]^{-1}が、まさしく逆行列表にあたる部分である。
 (なお、$I$は単位行列で、普通の数式でいえば「1」に当たり、$[・]^-1$は逆行列であることを示す)。

 最終需要額であるFに数字を与えれば、生産額であるXの値を得ることができる。


逆行列表のイメージ

図:逆行列表のイメージ

 このような数式を前提に表が作成されているため、各産業の経済効果を見るときに、一番簡便な方法は、逆行列表の列和(縦方向の数値の合計)を見ればよい。
 列和は、ある産業部門の需要が1単位増加したとき、すべての産業で増加する生産額の合計を表しているからである。
 (ただ、経済効果を計算するにあたっては、自給率や雇用者への波及効果なども検討されるので、下記の「経済効果の算定」などのような手法で計算される)


モデルの拡張

 上記のモデルは基本的なモデルで、[I-A]^{-1}型と言われるものである。

 ただ、この他に様々なモデルが考案されており、輸出入などの影響も組み込んだモデルなどもある。

 一般的には、輸入は自国の需要に比例するとしたモデルが使われる。
 これは、国内最終需要額$F_d$と内生部門の生産額$AX$に対して、輸入が比例すると仮定し、次のようなバランス式が定義される。

   (バランス式) X=AX+F_d +E-M(AX+F_d)

 ここで、$E$は輸出額ベクトル(n×1)、$M$は輸入係数行列(n×nの対角行列)である。
 上記のバランス式と比較すると、輸出と輸入を考慮した$E-M(AX+F_d)$が追加されている。

 これを式変形すると、次のようになる。

   (モデル式) X=[I-(I-M)A]^{-1}[(I-M)F_d+E]

 そして統計上、一般的には、上記の基本モデル([I-A]^{-1}型)と、この拡張モデル([I-(I-M)A]^{-1}型)の2つの逆行列表が公表されている。
 なお、基本モデル([I-A]^{-1}型)は輸出入が考慮されていないので「閉鎖型」、この拡張モデル([I-(I-M)A]^{-1}型)は輸出入をモデルに組み込んでいるので「開放型」などと呼ばれたりもする。


経済効果の算定

 経済効果を算定するに当たり、どのような影響を考えるかで算定方法が異なるが、一般的には、下図のようなプロセスを考慮して、経済効果が計算される。


経済効果フローチャート

図:経済効果フローチャート(イメージ)

 まず、ある地域で需要が発生すると、その地域の自給率に応じて、需要が大きくなる(直接効果)。

 次に、増加した需要に対して、自給率に応じて地域内での生産が活発になり、生産額が誘発される(1次波及効果)。

 更に、上記のように直接効果や1次波及効果で、その地域で働く人の報酬が増え、消費が増加する。そうすると、その地域での自給率に応じて生産額が誘発される(2次波及効果)。
(これ以降も、波及効果は継続するが、額は小さくなっていき、計算の簡便性から、2次波及効果まで計算されるのが一般的である)

 これらの効果を合計したものが、経済効果として計算される。


参考

宮沢健一編『産業連関分析入門―経済学入門シリーズ (日経文庫)

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