貿易理論

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 地域経済を考察するにあたって、(実務的にはあまり有用性は乏しいが)理解しておいたほうがよいものとして、貿易理論がある。
 様々な理論やモデルがあるが、基本的なものとしては、次の3つである。

①リカードモデル

 最も古典的な貿易理論で、経済学者リカードが提唱したものである。
 ある2国を考えた場合、2国の財でより安価な(もしくは生産量が多い)財が貿易されるのではなく、それぞれの国で相対的に有利な財が貿易されるということを述べたものである。

 例えば、A国は労働力を1投入したとき、X財を100、Y財を150生産できるとしよう。逆に、B国は、労働力を1投入しても、X財を80、Y財を50しか生産できないとする。このとき、X財・Y財いずれについても、A国のほうが生産力があり、A国ですべて作ったほうがいいと思われる(これを「絶対優位」という)。
 しかし実際には、A国はY財を作り、B国はX財を生産したほうがよい。なぜならば、同じ労働力を投入するにしても、A国ではY財を1.5倍(=150÷100)生産でき、B国ではX財を1.6倍(=80÷50)生産できるからである。
 すなわち、それぞれの国でより効率的な労働配分を行うことで、貿易が発生することを提唱した(これを「比較優位」という)。


②ヘクシャー・オリーンモデル

 算数・数学的には洗練された理論で、リプチンスキー定理や要素均等化定理なども導出されるモデルである。
 モデルとしては数学的だが、そのエッセンスは単純であり、リカードモデルでは労働力のみを生産要素として考えていたが、このモデルでは、労働や資本といった複数の生産要素において、貿易が発生することを証明している。

 つまり、ある2国があった場合、労働力や資本量に違いがあれば、より労働集約的な財については、労働力がより豊富な国が輸出し、より資本集約的な財については、資本量がより豊富な国が輸出を行い、その結果、貿易が起こるというものである。言い換えると、リカードモデルでは労働生産性のみで比較優位を示したが、このモデルでは生産要素の賦存量で比較優位を証明したモデルとなっている。

 なお、生産要素としては、労働・資本以外にも技術というものも考えられるが、労働や資本に体化されれば(組み込まれれば)、技術といった要素についても、考察が可能である。


②新貿易理論

 クルーグマンなどによって唱えられた理論であり、上記2つのモデルとは大きく異なっている。
 上記のモデルいずれも、生産要素という面で、貿易が発生するとしていた。しかし、この理論においては、生産要素が同じでも、様々なブランドの財を生産すれば、貿易が発生するとしたものである。

 例えば、自動車を考えた場合、トヨタとGMでは同じ自動車を生産しているため、上記の2つのモデルでは貿易が発生することは説明しにくい。しかし、このモデルでは、同じ自動車でもトヨタとGMではブランドが異なるため、消費者にとっては望ましく、貿易が発生すると考えている(このように書くと単純だが、この背景には数学的モデルがある)。

 なお、この理論や経済立地に関した業績で、2008年にクルーグマンはノーベル経済学賞を受賞している。

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