概要
ダイバーシティ・マネジメント(diversity management)とは、人々の違い(多様性)を競争優位につなげようとする組織改革・企業経営です。
背景
古くより、人種・性別などにより、労働者は差別などがなされており、人権問題という点も含め、経営上の問題でした。
当初は、差別などがなされている労働者が自発的・非自発的に、経営層など支配的な人たちとの同化が行われました。分かりやすく言えば、女性に対し、男性と同じような労働を求めたり、女性自身が男性に負けじと、男性以上の働きをするなどが行われました。しかしこれは、差別などがなされている労働者にとって、ある種の負担・義務を課すこととなりました。
次に、法的にこのような差別をなくそうとする動きがありました。日本では、1985年に男女雇用機会均等法が制定されており、海外においては、アファーマティブ・アクションなども行われました。アファーマティブ・アクションとは、差別されている人たちに対し、平等に取り扱うように規制・義務を課したりするものです。例えば、一定数の女性管理者を義務付けるなどは、その最たるものです。
これは、門戸解放という点では、ある種の効果はありましたが、同時に問題もはらんでいました。1つは、いわゆる「逆差別」という問題であり、2つは、実質的には上記のように同化を求めるという形も多くありました。また、経営上の混乱や内部対立なども生じたり、登用された人としても、能力ではなく、制度な優遇により登用されたとして、ある種の「傷」を生み出すことともなりました。
そこで考え出されたのが、多様性を尊重しようという経営上の考えです。この考え方は、人権などの観点では重要です。とはいえ、人権と経営とは関連していても、そもそものベクトルが異なるため、融合は難しい部分があります。経営において、差別というのは問題ではあるが、利益を上げなければ、どうしようもありません。差別をなくしたり、人権を尊重したりしても、必ずしも利益につながるわけではありません。
そして現在、出てきているのが、ダイバーシティ・マネジメントです。
ダイバーシティ・マネジメント
上記のように、ダイバーシティ・マネジメントとは、多様性を競争優位に結びつけようとする取り組みです。
分かりやすく言えば、女性が主たる顧客とする商品の場合に、「女性の視点」というのは、非常に重要です。
一般的に、ダイバーシティ・マネジメントの優位性として、次のようなものが挙げられます。
①コスト
年々、多様な人材を受け入れられなければならない企業経営において、そのような経営の組織・土壌を用意することで、コスト優位性をもたらすことができる。
②人材獲得
ダイバーシティ・マネジメントを実施している企業は、人材獲得において、優位性を有することができる。
③マーケティング
上記の「女性の視点」の例のように、多様性はマーケティングにおいて、優位性をもたらす。
④創造性
多様性は、創造性を高める可能性を有する。
⑤問題解決
多様性は、複雑化する現在の中で、様々な視点を提供し、問題解決能力を高める可能性を有する。
⑥システムの柔軟性
経営システムを考えた場合、多様性を受け入れるには、ある種の柔軟性が必要である。このことから、ダイバーシティ・マネジメントはシステムの柔軟性をもたらす可能性を有する。
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