地域経済・地域政策について、批評・分析しています!!

道州制基本法のポイントは何なのか?


概要

 以前から気になっていたが、道州制基本法を改めて読んでみた。

 道州制基本法とは、正式名は「道州制への移行のための改革基本法案」といい、現在、審議されている法律である。前の国会で提出され継続審議となり、今国会でも引き続き継続審議となっている。

 内容と言えば、道州制への移行を進めるにあたって、基本理念やその審議方法などを定めた法律である。

外部リンク参議院HP「道州制への移行のための改革基本法案


 あくまでも道州制を議論するための機関を設置するための法律であるが、いくつかのポイントがあるようだ。


ポイント

 基本的には、この法律に基づき設置された会議などで、今後の道州制の在り方が決められることになっている。しかし、基本理念や基本方針で、大きな事項については、この法律で定められている。

 そのポイントを、国・道州・都道府県・市町村に分けて成立すると、次のとおりである。

①国
 国の事務は限定され、基本的には、道州に事務が移譲されることになっている。

【6条】
国は、次に掲げる事務については引き続き担うものとし、当該事務以外の事務(これに係る企画及び立案を含む。)については道州に移譲するものとする。
一 外交、安全保障、出入国管理、通貨その他の国際社会における国家としての存立に関わる事務
二 私法に関する法秩序の維持、公正取引の確保その他の全国的に統一して定めることが不可欠である国民の諸活動に関する事務
三 全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策の実施その他国が本来果たすべき役割に係る事務


 そして基本理念においては、次のように「国の行政組織の改廃」が謳われている。

【2条2号】
国の事務は国が本来果たすべき役割に係るものに特化し、国の府省、地方支分部局その他の国の行政組織の改廃を行うとともに、国の行政機能の強化を図ること。


 ある意味、地方分権を考えた非常に画期的な規定ではある。
 が、同時にこの規定だと、現状の中央集権を維持・強化することも可能な規定ともいえる。例えば、行政組織の改廃だが、「改」を中心に考えれば組織を変えるだけで済むし、ナショナルミニマムなどの観点を言えば、6条3号の規定を使って、事務についてもすべての事項について国が関与することになる。


 なお、これに合わせ、税源の経費配分や道州による自主的な課税を認めると共に、道州間や市町村間の財政調整の制度を設けることとされている(第7条)。
 若干気になるのは、「事務に要する経費に応じて配分」という文言が使われており、必ずしも税源移譲が予定されているとは言い難い点である。

【7条】
1 道州及び市町村がその事務を自主的かつ自立的に執行することができるように、国、道州及び市町村の税源がそれぞれの事務に要する経費に応じて配分されるようにすること、道州及び市町村がその地域の実情に応じて自主的に課税を行うことができるようにすることその他の税制の抜本的見直しを行うものとする。この場合において、併せて、効率的かつ適正に徴税することができる仕組みを構築するようにするものとする。
2 道州間における財政の調整については、道州間の協議を基本として自律的に行う制度を設けるものとする。
3 道州の区域内の市町村間における財政の調整については、道州がこれを行う制度を設けるものとする。


②道州
 市町村を包括する広域の地方公共団体として、全国の区域を分けて道又は州が設置されることになっている。そしてその区域は、「廃止される国の地方支分部局から移譲される事務及び事業を道州が適切に遂行するにふさわしい区域を基礎として」定められることとなっている(5条1項)。
 ただ、「道州の境界は、従来の都道府県の境界と異なるものとすることを妨げない」ものとされており、現在の都道府県が分断され、異なる道州になる事もありうる(5条3項)。


③都道府県
 都道府県は廃止されることとなっている(8条1項)。
 そしてこれまでの都道府県の事務は、広域的なものなどは道州に、その他は市町村が行うこととされている(8条2項)。

【8条2項】
都道府県が行っている事務のうち、広域にわたるもの及び市町村に関する連絡調整に関するものは、道州に移譲するものとし、その他の事務は、市町村に移譲するものとする。この場合において、その規模又は性質において市町村が処理することが困難なものについては、複数の市町村において共同して処理することができるようにするものとする。


 実際に道州制が導入されるにあたっては、事務の見直しが行われるだろうが、現状の都道府県の役割は次のようになっており、この規定をそのまま受け取ると、都道府県の事務はすべて道州が請け負うことになる。

【地方自治法2条5項】
都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。


④市町村
 市町村は、「従来の市町村の事務に加え、都道府県の廃止に伴い都道府県から移譲された事務を行うもの」とされている(9条)。

 ただこの法律において記述がなく曖昧なのは、政令市・中核市・特例市など既に都道府県の事務を移譲されている場合である。 


思うに…

 道州制の詳細は、この法律が通過した後の会議で決まることになっている。
 すなわち、総理大臣や国務大臣などを部員とした「道州制への移行のための改革推進本部」や、国会議員・自治体の長・有識者などを委員とした諮問機関である「道州制国民会議」で、議論されることになる。

 しかし、この法律自体がまずい法律ではないかと思っている。

 そもそも私は「道州制はやめたほうがいい!」でも書いたように、道州制には反対だ。
 ただ仮に道州制が導入されたとしても、この法律で決まるのは、「都道府県を廃止」するということだけである。

 私が霞が関の立場で考えれば、勝負はこの法律の通過後である。上記のような抜け道をいかに使い、自分の省庁の存続を図るかにかかっている。

 そうすると下手をしたら、都道府県はなくなり道州はできたが、市町村合併のように、地方分権という観点では何も変わらないということが起こりうる。

 特に総務省にとっては、むしろ何も変わらず、都道府県合併ができるのだから、喜ばしいことなのかもしれない。もっと言うならば、道州制になっても、従来の都道府県単位の機関は設置せざるを得ない。ただ従来と違うのは、都道府県単位の長は、民選ではなく、官選になるということだ。そして、道州制・市町村制がある以上、総務省自体は絶対になくならない。そうなると、都道府県単位の長に総務省の官僚が就くという可能性も出てくる。まさしく戦前の官選知事の復活だ。勿論、ここまで話が行くと、総務省の陰謀論的で、空理・空論に近くなるが、現実問題として、道州制が導入されれば、国がある種の財政配分・財政調整機能をもっていると、このようなことを地方から求めることが出てくる可能性がある。

 いずれにせよ、改めてこの法律を見て思うのが、地方分権が先だと思う。道州制=地方分権ではないのだ。







コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA




分野

地域経済地域経済 (102)
地方行政地方行政 (80)
地域金融地域金融 (22)
地方財政地方財政 (35)
その他その他 (61)
社会福祉社会福祉 (8)
地域活性化地域活性化 (72)
商店街商店街 (15)
エネルギーエネルギー (17)
農林水産業農林水産業 (34)
インフラインフラ (32)
観光観光 (70)
地域政策地域政策 (104)