漢方の産業化プロジェクト
多くの自治体で、今後の産業を育成しようとプロジェクトが組まれており、その中で多いテーマの一つが、医療である。
高齢化が進む中、今後も需要が見込まれるとともに、付加価値がある産業として、注目されているのだろう。
ただそのほとんどが、医療機器・医薬品といったものが中心で、先端医療をターゲットに据えている。
このような中、面白いのが、奈良県である。
先端医療ではなく、「漢方のメッカ推進プロジェクト」として、漢方をターゲットとしている。
平成25年度から始められたプロジェクトであるが、漢方に関する製品化や薬用作物の安定供給などに対して、支援などを行っている。
漢方のメッカ推進プロジェクト 平成26年度の事業内容(奈良県HPより抜粋)
奈良県以外でも、富山県や神奈川県でも漢方の産業を行おうとする動きがあり、この3県で、「漢方産業化推進研究会」という組織も立ち上げられている。
漢方市場の拡大
そこで漢方の市場を見たのが、下図である。
厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」において、生薬・漢方製剤・その他の生薬及び漢方処方に基づく医薬品の国内出荷額を合計したものをプロットしている。
図から分かるように、平成22年には若干落ち込んだものの、近年は右肩上がりである。
生薬・漢方の国内出荷額
また、生産面でも、下図にあるように、この出荷額の増加と共に、輸入額はあまり変わらないが、漢方の国内生産額も右肩上がりに伸びている。
生薬・漢方の生産額・輸入額
また、以上は統計であるが、漢方というものが見直され、漢方外来を新たに設置する病院が出てくるなど、今後も漢方の市場は拡大していくだろう。
2014年12月29日 北國新聞「漢方の診療科新設 金大附属病院が来月 医師4人、態勢拡充」
漢方にチャンス?
漢方市場は拡大しており、今後も伸びていくことが見込まれるため、新たな地域の産業としては、非常に面白い。
また、漢方は単に工業面だけではなく、その材料である薬用植物の栽培という面でも広がりを見せている。原料の調達先として、中国から輸入していたが、品質や供給面で不安定であり、円安という流れの中、薬用植物の栽培を行う農家が増えているようだ。
2015年1月5日 読売新聞「漢方の薬草は秋田で…中国では安定供給に不安」
この点で、工業振興というだけではなく、農業振興という点でも捉えることができ、地域に漢方を製造しているメーカーがなくても、アプローチが可能だ。
新たな地域の産業として、6次産業化の一つの方法として、漢方はチャンスであると思う。
上記のように奈良県などではすでにプロジェクトを進めているが、他の地域でも、漢方というものを産業として見直していいのでは思う。
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