奈良県で、新しい職員採用試験について、多数の応募者があった。
5人の採用枠に対して、約65倍の327人もの応募である。試験内容については、従来の知識的な論文試験ではなく、県政への熱意・発想力などを論文やプレゼンでアピールするというものだ。
新しいことをやろうとするのは素晴らしい。
しかし私はその前にやるべきことがあると思う。
熱意や柔軟な発想力をもった職員は、どこの自治体でもいるものである。奈良県であれば、(病院・教育委員会・公営企業などを除いた)一般行政部門の職員数は約3,000人。具体的な数字は分からないが、必ずそのような人材は、数十人はいるであろう。
まずはそのような職員が、熱意や柔軟な発想を発現できるような組織づくりや職場環境が重要だ。
逆に、いかに熱意や柔軟な発想をもった人が入庁しても、組織・職場環境でそのような人を受け入れる素地がなければ、普通の職員になってしまう。簡単に言えば、いくら情熱をもって仕事に取り組んでも、それを周りの人が認めてくれなかったり、いくら柔軟な発想で事業を考えても、上司などが採用してくれなければ、熱意は失われ、新しい発想をもった企画・仕事を提案しなくなるだろう。
言い方を変えるならば、この職員採用制度自体に問題があるともいえる。このような制度をやるということは、現在の職員には熱意や柔軟な発想をもった人が少ないということを前提としている。しかし、これは人の問題ではなく、むしろ組織や職場環境の問題なのだ。
人事部門というは管理部門なので、新しさより着実性などが求められるという要素が強く、新しいことをやりにくい面があったり、新しいことには消極的な面がある。
この点で、新しいことをやろうとする奈良県の姿勢は素晴らしいと思うが、まずは職場環境や組織作りを再検討したほうがいい。そうすれば、このような人材を求める必要性もなくなるだろう。
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