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地域おこしは、地域をおこせない?

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概要

 地域おこしや地域振興が叫ばれて久しい。そして、様々な地域で活動が行われている。
 しかし、地域おこしの成功事例を見ると、地域おこしでは地域の振興は図れないのではないかと考えている。


3つの町村

 いくつもの地域おこしの成功事例があるが、ここでは次の3つの町村を考える。

  • ゆず加工品で有名な高知県馬路村
  • 葉っぱビジネスの徳島県上勝町
  • 道の駅内子フレッシュパークからりがある愛媛県内子町

 いずれも、地域おこしとしては有名なところで、詳細は私が改めて説明するよりも、それぞれの事例を参考にしたほうが早いため、割愛する。

 私がここで考えたいのは、これらの町村の人口である。地域振興を考えた場合、その地域の人たちが豊かになることは重要である。ただ、地域の存続や成長を考えた場合、人口が増加しなければ、どうしようもない。特に、過疎にあるような町村では、人口問題は解決すべき大きな課題であり、人口増加をもたらせないような地域振興は成功とはいえないと考えられる。

 そこで、上記の3つの町村の人口と高齢化率(65歳以上人口の比率)を見たのが、右の3つの図である。
 これらの事例はいずれも1980年代・1990年代にスタートしているが、一貫して人口は減少し、逆に高齢化率は上昇を続けている。
 勿論、いろいろなデータをもってきて、他の過疎地域よりはマシであるといった論理は可能である。しかし現実には、人口減少は続いており、このままでいくとこれらの町村がなくなってしまうだろう。

 結局、これらの事例から分かるように、地域おこしという事業では成功したのだろうが、地域全体の活性化という点でうまくいっていないという結論になる。

馬路町の人口

馬路町の人口

内子町の人口

内子町の人口

上勝町の人口

上勝町の人口


地域おこしの2つの問題

 それではなぜ、うまくいっていないのだろうか。
 その答えとして、私は2つの点を予想している。

 1つは、事業の視点と産業の視点の違いである。これらは一見すると似ており、地域おこしを行う人たちにとって、誤謬を生じやすい。しかし、事業の視点では、あくまでもある事業者が行う活動を考えるに過ぎない。そのため、事業が成功しても、その恩恵は、経営者・従業員などその活動に加わっている人たちを中心に分配される。他方、産業の視点では、その事業者だけでなく、それと取引を行う他のいくつもの事業者も加えた点も考慮することになり、ある事業者の成功は他の事業者にも分配されることになる。言い方を変えると例えば、ジュースづくりならば、ジュースを製造・販売している者が儲かるだけでなく、その地域で、原材料やペットボトル、印刷、広告など、多様な事業者も儲かるような仕組みを考えることである。経済学的には、前方連関効果後方連関効果などとも言われるが、いずれにせよ、地域内で地域おこし事業に関連した事業者を巻き込めなければ、その成果に広がりは生まれない。

 もう1つは、商品・製品という業種選択にあると考えている。商品・製品は、1つの事業者が独占的に製造・販売するため、上記のような産業の視点を考えなければ、その成功はスピルオーバー(効果の広がり)が起きにくい。

 ここで、このような問題が起きていない例として、湯院が挙げられる。右図のように湯院のある由布の人口を見てみると、高齢化は進んでいるが、大きな人口減少は生じていない。
 言わずもながら、湯布院は有名な温泉地で、地域おこしの事例として語られることも多い。
由布市の人口

由布の人口

 上記の馬路村・上勝町・内子町と決定的に違うのは、製品・商品で地域おこしを行ったのではなく、観光地として地域振興が行われた点である。そして、製品や商品とは異なり、温泉地は独占できるような資源ではなく、排他性がない。分かりやすく言うと、他の地域から小売店や旅館などが進出する際、地域としてその進出を拒むことが難しい。また温泉地の場合は、観光客が増えると、旅館などの宿泊施設をはじめ、おみやげ屋や飲食店など、その成功が地域全体に行き渡りやすい。これらのことから、観光地として有名になり、地域全体にその成功の果実が行き渡り、また他の地域からの事業者の進出もあり、人口の維持を図ることができたのではないかと考えられる。

 以上は、いずれも仮説の要素が強いが、私自身は重要な視点であると考えている。

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